024:喘息専門医をめぐる問題点。(平成9年9月25日)

私への質問の中には、「喘息専門の先生はどのように探したらいいのですか?」という内容が非常に多いと思います。これに対しては、はっきりお答えすることは非常に難しいのが現状です。そこには、色々な問題が含まれているからです。

専門医に関連して、学会主導の「認定医制度」というのがあります。私も、日本内科学会と日本呼吸器学会の認定医です。しかるべき資格審査を受けてかつ試験も受けて合格しました(30歳過ぎての試験は非常に辛いものがありましたが…)。しかし、この認定医というのは、保健点数上反映されるメリットは何もないのです。例えば、私が、呼吸器疾患の患者さんを診察したからといって、余計に医療費を払ったり、また余計に医療費を請求できるわけではないのです。また、悲しいことに、よく街で見かける医療機関の看板にも、法律上「○○専門医」と表示してはいけないことになっているのです。認定医の免状はほとんどが診察室の壁に額に入って飾られているのではないでしょうか? 実は、この認定医制度は、学会が権威を保持し財源を確保するための措置であるといっても過言ではないのです。ただし、いつこの資格が格上げされ、保健点数上に優遇されるかもしれないという憶測があるので、皆若いうちに取得するのかもしれません。

私はちょっとした怪我なら縫ったりすることはできますが、変な話、その程度でも「外科医」を標榜して開業することだって可能なのです。ただ、日本外科学会の認定医であるといえばそれは嘘になります。医師国家試験さえ通ってしまえば、私が標榜できないのは「歯科医」だけです。医師の中には、専門医の存在を疎んじる集団があるのは事実のような気がします。年齢的にもう専門医を取得できない医者にとっては、患者さんを奪われる恐れがあり、利益を守ろうとするのは当然かもしれません。私だって、もし70歳くらいになって、急に医療制度が変わってしまって、患者さんが来なくなるようなことがあれば、その制度には反対するかもしれません。

厚生省が正式に専門医を認めるのは、まだまだ先になることでしょうから、いわゆる「専門医」とは、イコール「学会認定医」というのが現状になります。喘息関係では、日本アレルギー学会日本呼吸器学会(旧日本胸部疾患学会)の認定医が、いわゆる「喘息専門医」と称しても良いのかな?という気はしますが、私も認定医になっている後者は、あまりにも幅が広すぎて、喘息を中心に診療していない医師もたくさんいます。かといって、前者は、あまりに数が少なすぎて、すぐに受診できるような医療施設にごろごろといる訳ではないのです。

専門医について私なりの考えを述べさせて戴ければ、「専門」と名が付くのであれば、やはり医療報酬上も何らかのメリットがなくてはならないと思います。メリットがあると専門医をめざす医師が増えてくる可能性もあります。メリットがあることは逆にそれなりの責任があるということにもなりますから、いい加減なことはできなくなります。残念ながら、現状の「認定医制度」はこのメリットもなければ責任もなく形だけの存在であると言ってもよいでしょう。

しかし、呼吸器疾患や喘息を専門に標榜していなくても、喘息を上手に治してくれる医者は結構いるものです。私なりに、信頼してかかることができる喘息専門医としてお薦めできるのは、ピークフローメーターや吸入ステロイドに対して理解があり、吸入指導をしっかりしてくれる医師であると思います。何故なら、この両者を使いこなせる医師は、喘息が気道炎症に伴う疾患であるという最近の概念変化に対応している医師である、と言えるからです。

この辺を喘息専門医の判断根拠にしてみては如何ですか?