025:櫻井よしこさんへの手紙。(平成9年9月25日)

本日、私の医事新報に投稿した「ある喘息児の涙」に対してある開業の先生からお手紙を頂きました。その中に、櫻井よしこさんへ送った手紙が同封されており、かなり厳しい内容がありました。「特集・ベロテック問題」での私の意見とも一致するところもあり、一部のみご紹介させていただきます。


拝啓

残暑酷しき折、櫻井様におかれては益々御健勝の事、衷より御慶び申し上げます。

本日、拙文を差し上げたのは、本年6月号並びに9月号の“文芸春秋”誌に掲載の喘息の櫻井様の玉稿について医学的な立場から拙見を述べさせて戴くためです。

櫻井様の同誌の御論文について、医家・患者・一般読者とりまぜ数多くの反響があったものと推察致します。おそらくそれは、それ等、どれ一つ取り上げてもいづれも理にかない、切実なものばかりと思いますが、小生、これから述べさせて戴く事は、現在、学会のエスタブリッシュメントとは又異なるもので、もし櫻井様、眼光紙背に徹すればおそらくは愕然ともさせられるのではないかと愚考致します。

…(中略)…

結論から申し上げますと、櫻井様がウイルス学・免疫学・分子生物学・遺伝子学等知悉して、ベロテック等フェノテロール製剤の問題点を剔抉されれば、又、説得力もあるかとは思いますが、それ等を欠くとすれば、単に表面をなどった、素人談義として専門家から軽く鼻であしらわれてしまう、その様な危険性があります。

更には、一旦、その様な問題のある論議を“文芸春秋”誌の様な有力な定期刊行物の上でしてしまい、その論文の欠陥・脆弱性を徹底的に叩かれてしまいますと、櫻井様が次にテーマを変え、何か問題点を指摘しても、“ああ、又かい?”と似而非評論家・似而非文化人扱いされかねません。その様な危険性に手を染めるのは著名キャスターであった前歴を毀損しないものか、そんな事も考えてしまいます。

以上等、老婆心ながら拙見を述べさせて戴きました。

櫻井様の今後の益々の御活躍を御祈り申し上げます。

敬具