042:見てきたような漫画。(平成9年11月12日)

このコーナーで「021:吸入ステロイドには3段階の効果?」と題して吸入ステロイドの効果には段階があることを述べました。今回、その内容を漫画で描いてみました。

<1>重度の気道炎症が残る状態:

・この状態では、発作が頻発し動くのもやっとの状態である。

 

<2>吸入ステロイドを吸い始めると:

・発作で苦しい日々を送られた方が、吸入ステロイドを吸い始めると「呼吸が楽になった」と言う。しかし、気道炎症はまだまだ残っており、走ったりできない状態である。

<3>正しい方法でゆっくりした吸入ステロイドを吸い始めると:

・吸入ステロイドは気道の開いた部位に到達し、ピークフロー値はある一定値までは達する。この状態では、健常人並の運動能力が得られるようになる。しかし、このピークフロー値は、長年の呼吸困難の結果鍛えられた強い呼吸筋力によるところが多く、見かけ上の正常状態と考えられる。
・多くは、この状態で満足し通常の生活に戻ってしまう。また、「すっかり治ったと思いこみ、吸入操作がおろそかになったり、時には吸入を止めたりするようになる。
・しかし、長年喘息を患っている方は、吸入ステロイドが到達しえない気道炎症が所々残存し、この部位が、たえず外来性の刺激因子(抗原、ウイルス、冷気、ストレスなど)に対し発作の引き金となる。
・この状態で、吸入ステロイドを中止すると、正常であった部位も発作や咳によって損傷を受け気道炎症は再燃し、ピークフロー値が低下し、いつしか大きな発作を引き起こすようになる。
・従って、吸入ステロイドを続けることで、かろうじて正常粘膜を保護していると考えられるので、吸入ステロイドは中止してはいけない。

 

 

<4>全身性ステロイドと安静による理想状態:

・全身性ステロイドは、吸入ステロイドの到達しない気管支に血行性に到達し、気管支炎症を除去し気道を広げ、吸入ステロイドが奥まで到達するようになる。
・この状態では、気管支粘膜は外来性の刺激に対し抵抗するようになり、発作を起こし難くなる。また、最低限の吸入ステロイドで気道炎症再燃を防止できるようになる。
・この理想状態に到達するのは容易ではない。しかし、喘息はここまで良くすることのできる病気であることは間違いない。
・もし、この状態に到達できない場合は、自分はまだ不完全な状態であることを認識し、吸入ステロイドを怠らない、無理な日常生活を送らないなど、注意することで、ひどい発作に見舞われることから回避できる。

以上、私の診ている色々な段階の喘息患者さんの病態を分析・想像し、見てきたような漫画で描いてみました。