061:非喫煙者が得をする生命保険登場(平成10年5月27日)

喫煙は、肺癌はもとより他の呼吸器疾患の原因及び増悪因子として最も重要であるばかりか、動脈硬化、虚血性心疾患、糖尿病など多くの成人病の危険因子であることは周知の事実であると思います。

ということは、当然喫煙者の方が国民健康保険のお金を多く使っているわけですし、また生命保険の面でも喫煙者と非喫煙者に格差がないのはおかしいと常々考えていました。とくに、呼吸器系の薬剤を山盛り飲んでおられる方が、タバコの臭いをぷんぷんさせて診察室には入ってくるとその感は募るばかりです。

アメリカでは、すでに非喫煙者が得をする生命保健は存在していたようですが、ついに日本にも登場したようです。「日経メディカル」の98年5月号からの記事の一部を紹介いたします。


この3月、非喫煙者は従来より保険料が割安になる生命保険が日本で初めて登場した。非喫煙者であることは、唾液や尿検査で調べる。日本版金融ビッグバンに突入し、他社との差別化を図る観点からも、生活習慣に由来する死亡リスクの差に着目した生命保険商品は、今後ますます広がるものとみられる。

非喫煙者は保険料を割り引くと銘打った生命保険を売り出したのは、アリコジャパン(「クラブノンスモーカー」)と、第百生命(「すいません」)の2社。両者では以前から、自社の生命保険加入者の喫煙歴と死亡との関連についてデータを集め、商品化を進めてきた。

どちらも、従来の保険料と比べ、保険料は最大で約28%安くなる。消費者からの反響は上々で、「すいません」は発売後約1ヵ月で4,700件の契約を達成した。これは「当社としては大ヒット」(第百生命商品開発部課長の日下倫氏)だ。

長年にわたって喫煙指導を手がけてきた東京衛生病院健康教育部長の藤本エドワード氏は、「非喫煙者に対して目に見えるベネフィットがあり、禁煙のよい動機づけになる」と、この新しい生命保険を歓迎する。


ここで、当然疑問になるのは、喫煙者と非喫煙者をどうやって見分けるかです。つまり、保険加入時に、「私はタバコを吸いません」という自己申告が通用するのか、あるいはその時は吸ってなくても、加入後に吸ってしまえば詐欺あるいは契約違反に当たらないのか、という疑問です。この点に関しては、以下のように述べられています。


「クラブノンスモーカー」と「すいません」は、保険料に非喫煙者割り引きを導入した点では同じだが、細かくみていくと異なる点がある。

例えば、非喫煙者の定義は、「クラブノンスモーカー」が「過去2年以内に喫煙歴がない」ことを要求しているのに対し、「すいません」は、「過去1年以内」でよい。現在非喫煙であることを証明する検査方法も異なる。「クラブノンスモーカー」は尿検査、「すいません」は唾液による検査だ。

ただし両社とも、ニコチンの代謝産物であるコチニン量を調べているという点では同じ。「短期間禁煙したぐらいではごまかせない程度」(アリコジャパン商品開発課長の稲沢武敏氏)に感度は高い。ちなみに、本人は非喫煙者でも配偶者などが禁煙者である受動喫煙の場合もコチニンは検出されるが、その量は「はるかに違う」(同氏)ため区別できる。

契約の継続に関しては、「すいません」が新たに審査を必要とするのに対し、「クラブノンスモーカー」は自動更新できる。これは「多くの場合、喫煙開始年齢は20歳前後なので、それ以上の年齢の場合、非喫煙者が喫煙者に転じる確率は低い」(アリコジャパン)という考えからだ。


なるほど、「吸っているのに吸っていない」と申告しても無駄だと言うことになりますね。これは、私の外来患者にも応用できそうですね。