087:フルタイド発売から2カ月−その雑感(続)。(平成11年1月25日)

フルタイドを処方開始してから、続々と1カ月経過した患者さんが来院しています。

●ベコタイドからフルタイドへ(私の移行原則)

私は、基本的にこれまでベクロメタゾンを使用してきた方は、原則としてすべてフルタイドへ移行するようにしています。この際、処方量はその患者さんが通院可能な期間により異なります。つまり処方制限の枠の中で患者さんが何週に一度通院できるかだけがその判断の基準になります。つまり、気持ちとしてはどの患者さんにもフルタイド1日800マイクログラム(それでも足りないと感じている症例はかなりあるが…)の恩恵を享受していただきたいからです。しかし、フルタイドで都合が悪い場合は事情を良く聞いて、継続しない方がよいと判断した場合は、ベコタイドへ戻すようにしています。そして、どのような患者さんがフルタイドへ移行できないのかを模索しております。

●処方パターン

従って、私は以下のように小児を除いて、すべてフルタイド200マイクロ製剤しか処方しておりません。処方制限がなくなったら、100マイクロ製剤も使用するようになることでしょう。いくつかのパターンを紹介いたします。

(1)1日800マイクロ(朝・夜2回)(200マイクロ・7シート/週)→週1回通院
  ・高用量のベクロメタゾン(1,600マイクロ以上)でもコントロール不良の方
  ・経口ステロイドの常用者
  ・多忙で安静が保持できない方(忙しいので毎週通院するのは大変で一見矛盾するようだが、毎週朝一番に処方箋を書いておき、好きな時間帯に薬だけ取りに来るように工夫している)

(2)1日400マイクロ(朝・夜2回)(200マイクロ・7→シート/2週)→2週に1回通院
  ・ベクロメタゾン(800〜1,600マイクロ以上)で安定している方
    →劇的な変化はないが、より簡単な操作で現状維持ができる

(3)1日200マイクロ(夜1回)(200マイクロ・7→シート/4週)→4週に1回通院
  ・ベクロメタゾン(400マイクロ前後)で安定している方
  ・月1度の通院をしている慢性閉塞性呼吸器疾患患者(慢性肺気腫、慢性気管支炎)

(4)1日100マイクロ(朝・夜2回)(50マイクロ・7シート/2週)→2週に1回通院
  ・小児喘息
    →これで安定したら、100マイクロ(夜1回)へ切り替え、1度に100マイクロ・7シートを処方し、4週に1回通院してもらう予定。

ただし、これはあくまで私の独自の換算方法ですので、保険審査でクリアできるかは別問題です。あらかじめお断りしておきます。

●その後の経過報告

概ね評判は良好です。副作用もほとんどありません。しかし、ここでは問題となった症例のみを挙げて行きます。

(1)前回「085:フルタイド発売から1カ月半−その雑感。(平成11年1月8日)」で(4)として紹介した、フルタイドにしてから気持ちが悪く吐き気がすることが多くなり、生理が月に3回も来たという49歳の女性。閉経期が近いのでたまたまなのかもしれませんが、念のためベコタイドに戻して様子を見ていました。その後やはり吐き気は大分おさまったようで、生理も回数は減ったそうです。ある程度女性ホルモンへの影響もあるのかもしれません。もう少し症例を積み重ねなくてはなりません。

(2)「寄稿集(12)・56歳女性」は、フルタイドだと量が少ないようで物足りないと感想一言。確かにこれまではベコタイドを時間をかけてじっくり吸ってきましたから、簡単なフルタイドでは物足りないと感じるかもしれません。彼女もメドロールを常用しているので、1日800マイクロで維持したかったのですが、どうしても毎週通院は無理とのことで、1日400マイクロとしていました。それでも2週に1度通院しなくてはならないので、それが面倒であったことも事実です。先述の(1)の方から、待合い時間に「吐き気がするからベコタイドに戻してもらったんだ」という情報をキャッチ。診察時に「私も吐き気がするからベコタイドに戻して下さい」との要望あり。言い訳けですが、彼女の吐き気は、1カ月間吸っても何ともなかったのが、来院の2日前に胃腸風邪を引いてたまたま起こった風邪の吐き気なのです。操作は面倒でも月1回の通院で済むベコタイドがどうしても良いというので、ベコタイドへ戻しました。

(3)「寄稿集(03)・50歳女性」の方。アルデシン50で維持していた患者さんです。この方も、安定しているので、フルタイド400マイクロ(2週に1度の通院)へ変更しました。ところが、吸入して2週間ぐらいから、胸のあたりがもそもそし出し、500をキープしていたPF値が490と低下。もちろん800マイクロへアップすればいいのですが、400マイクロですら通院が大変なので断念。アルデシン50へ戻しました。ちなみにこの方、以前私が「回数が少ない便利なベコタイド100へ変更しませんか? 中味は同じですよ」と持ちかけたところ、ぶるぶると首を横に振ったことがありました。苦しいとき自分を助けてくれた薬剤にはやはり信頼感があるものですね。

(4)フルタイドに変えたらとたんに眠気に襲われたという55歳女性。これも因果関係を追求するためにベコタイドへ戻しました。

(5)フルタイド1日800マイクロで喉が痛むと訴える51歳男性。ベコタイドの時から咽頭痛は訴えておりました。元々、肥満傾向があり喉付近が脂肪で細くなっており、しかも扁桃肥大ときては、フルタイドはどうしても喉にあたってしまいます。しかし、この方はメドロール10mgの常用者でしかも多忙。多少喉が痛くても、喘息死してはならぬと私も妥協しませんでした。ファンギーゾンという抗真菌剤の入ったうがいを処方しました。これでも駄目ならベコタイドへ戻すしかないようです。

(6)その他、よく聞かれる質問に「効果が強い」と「副作用が強い」を混同している方が多いようでした。気持ちは良く分かりますが、フルタイドはベコタイドより効果が強くて副作用が少ないのだと説明するのですが、やはり怪訝な顔をされることが多いようです。

以上、多少の副作用はありますが、やはり処方制限が最大のネックであることには変わりありません。