098:茶髪でピアスの医者。(平成11年9月10日)
いわゆる日本人の茶髪は、当初は色々と議論がありましたが、最近は世の中に受け入れられ、以前のような議論をかもし出すことはなくなりました。最近は、黒髪がまた復活しているそうな…。
私も、そんなに頭は固い方ではありませんので、自分で茶髪にする勇気はありませんが、特に流行なので気にもとめてはいません。また、最近は、医者でも当然タイトルのような茶髪でピアスをしている男性は、結構いるのではないでしょうか?
しかし、問題は臨床実習で回ってくる医学生なのです。山形大学に限らず恐らく全国的に、医学部の教授会でこの茶髪をどう扱うかは、医学教育の分野では議論になっているようです。
つまり、国家試験をパスし一人前の医師になってしまえば、あとはその容姿については誰の力も及ぶものではありません。しかし、臨床実習に廻る医学生の身なりに関しては、大学病院を訪れる外来患者さん、あるいは入院している患者さんとはある程度は接する訳ですから、教育者が一切関与しないというわけには行きません。大学によっては、医学部長あるいは附属病院長の裁量に任されているのが現状でしょう。
私がアメリカ留学中、こんな経験をしました。
街の歩道を歩いていると、向こうから、ヒッピーみたいな身なりの若者が歩いて来たのです。日本でなら、このような状況の時、絶対に目を合わせないようにして無視していたでしょう。しかし、この若者、私とすれ違う瞬間、私の目を見て、にっこり、
「ハーイ!」
と挨拶して過ぎ去って行くではありませんか?
また、あるドラッグストアで、買い物をしていたとき、店内に太った黒人で、スキンヘッドにサングラスをかけて店内で買い物をしているギャングのような男性がいました。私も買い物をしていたのですが、その男性が近くにきたので、何となく不気味だったので別の場所へ移動しようとしたその時、
「へっくしょーん!」
と私は、大きなくしゃみをしてしまったのです。すると、その男性、
「ブレス、ユー」
と言ったのです。
注:アメリカでは、くしゃみをすると寿命が縮むという言い伝えがあって、誰かがくしゃみをすると、そうならないように神に祈る(God bless you、単にBless you、ブレス、ユー(時にブレッシューと聞こえる)=あなたに神のご加護あらんことを!)習わしがあるのです。今度、アメリカへ行ったら、わざと人前でくしゃみをしてみて下さい。きっと、誰かがブレッシューとつぶやくでしょう。
私は、二つの体験で、人は身なりで判断してはいけないと強く思いました。そして、さすが自由の国アメリカ、服装に捕らわれず中味で人を判断している国だ、日本もこうでなくちゃ、とその時はそう感じました。
しかし、私はたくさんのアメリカ人の医者を知っていますが、彼らは研究室ではラフな格好をしていても、患者さんの前では必ずネクタイをしきれいな白衣をまとっていたのを覚えています。身なりでは人を判断しないアメリカでさえ、やはり人の命を預かる医師という職種は特殊なのだなぁ、とあらためて思いました。そして、やはり医師の身なりについて何らかの形で医学生に伝えて行かねばならないと思いました。
通常の外来診療では、新患と再来とが分かれています。再来で長く接してきた患者さんなら、たとえば突然私が茶髪でピアスをしても、一瞬は引いてしまうかも知れませんが、私の人柄を知っているでしょうから、恐らくそう問題はないでしょう。しかし、新患はそうは行きません。その時は当たり前に接しても、もう次からは来なくなるかも知れません。特にご年輩の患者さんならなおさらでしょう。
そこで、医学生を教育する立場にある自分としては、もし茶髪でピアスの医学生が廻ってきたら、臨床実習に廻る前に以下のように問いかけようと今は考えています。
茶髪はもう世の中に受け入れられているから、いまさら何も言いません。
でも、もし、あなたと茶髪でない別の医学生に、今後色々と教えてもらうであろう年輩の患者さんの前に並んでもらって、
「どちらの学生に実習担当を許可してくれるでしょうか?」
と聞いたら、どういう答えが返ってくると思いますか?
つまりこのように問いかけることで、医学生自身に医者の身なりについて考えてもらおうと思うのです。
最後に、この問題に対し、ピークフロー値センターの皆様から、様々なご意見を頂戴しました。70台、80台の方の意見がないので少し片寄っているとは思いますが、楽しく読んで下さい。
◆私から:
センターの皆さん。モニターをさせて下さい。外来あるいは入院で当たったあなたの担当医が、茶髪でピアスの男性医師(年齢は問わないが通常は若い)だったら、あなたはその医師をどう思いますか? あるいはどういった行動を取りますか? 色々な意見があると思います。皆さんの忌憚のない意見を聞かせて下さい。
ちなみに、茶髪は、茶色だけでなく、一般的に髪を染めているの意味に取って下さい。金髪とか、赤とか、緑とかも含まれます。では、黒に染めている場合はどうかと言われると困りますが、その辺は臨機応変に考えて下さい。
◆41歳・男性:
最初は戸惑い、なんだこいつは、と不信感を抱くかも知れませんが、話してみて普通であればその後は気にしないと思います。 年齢にもよりますね。おじいさん先生がある日突然赤髪になっていたらびっくらこきます。その医師に似合っていて、清潔感があればいいんじゃないでしょうか。
◆35歳・女性:
茶髪とピアス…。金髪は受け入れられませんが、茶髪もピアスもお似合いならば受け入れられます。その先生がきちんとした話し方で、私の話に耳を傾けて下さる方ならばですね。でもお年寄りはどう思うでしょう? お医者様はいろんな方を診られるのだから、そういう配慮も必要ですよね。私が一番イヤなのは白衣がクシャクシャの先生です。性格がだらしないんだなぁ、と思ってしまいます。まさか60才のお医者様が突然茶髪にはならないと思う(笑)。患者に対する配慮と言う意味で髪の色も考えてほしいものです。(私は若くて茶髪、ピアスの先生好きですけどね。逆にすごい美人の女医さんだと構えてしまう。張り合ってるんだろうか…わたし(爆))
◆47歳・男性:
既成のしがらみ捕らわれず、新しい治療法に積極的に取り組んでくれるようで、期待します。権威的で患者を見下している医者より、絶対に良いと思います。
◆33歳・女性:
受診してみて、医師として信頼できる方だと思えれば、茶髪でもロン毛でも構いません。あと清潔感も必須ですね。息子の受診で大学病院に行った時、まさにそんな若い医師がいましたよ。しかも超美形。息子の主治医だったら、回診が楽しみになりそうですが、自分の主治医だったら血圧が上がっちゃうかもしれません。
◆41歳・女性:
まじめそうな先生なら、茶髪やピアスをつけていらっしゃっても、あまり気にしないと思います。でも、40〜50代の先生が茶髪だったり、ピアスをつけていらっしゃったら、少し「?」マークをつけてしまうかもしれません。
◆43歳・男性:
最初は何だこいつは、と思うでしょうけど目つきとか話し方に違和感がなく真摯な態度であれば私としてはOKです。その人に似合っていればですけど。でも長髪はまずいかなと思います。髪を七三にビシッと分けてシルバーフレームのメガネかなんかかけて、いかにも自分はエリートだとでもいうように、こちらを冷たく見下すような人(こんな人はいないでしょうけど)よりはずっとましだとおもいます。要は人柄の問題ですね。ただ、第一印象だけで先入観をもつ人もいるでしょうからそのあたりは難しいですね。あまり突拍子もない格好だと患者の血圧が上がったり脈が速くなって具合が悪くなってしまうかもしれないからそうなるとちょっとまずいかもしれません。
◆47歳・女性:
こんな経験をしましたのでお伝えします。
今年3月、20代の後半5年を科研費での雇われ身分で過ごした場所に18年ぶりに再訪したときの話。先生の退官前に教室を尋ね、ボスと四方山話をしました。当時ドクターコースの院生であり毎日同室であったK君は、そこの助教授。そして、当時助手であったNさんは別の教室の講師として在籍しておられました。たまたま、私が訪問した日の夕方、教授総会があり、自分の後任の教授が決まるとの事。私としては、当然K君が教授昇格ではないのですか?とお聞きした所、五分五分との事。理由は、彼は自分の意見を表に出しすぎる節がある、教授会でそういうヤツという潜入観念があるからねぇ。勿論、僕は推薦はするけど…では、Nさんは、免疫の仕事で日経新聞の1/4を飾ったことがあるのに何で(未だに)講師なんですか? 私は、昔毎日顔を見ていた人が新聞に載ったので嬉しくてたまらなかったのですよ。ああ、ほら、彼って昔から派手好きだったでしょ。あの性格って変わらないんだ。勿論、業績は評価されているけど、学内であの派手さは嫌われている。昔みたいに、教授推薦があったって、その人柄が総会で評価されるように変わったのだよと。結局は、古い体質が温存されているのでしょうが、目に付きやすい容姿とか、態度が人の評価の指標になっている事は確かです。御損になりませんか? これが私の回答です。
◆22歳・女性:
私も皆さんと同じように始めは「えっ?!」って思います。でもなんと言っても中身ですよね。第一印象があまり良くなかった人と信頼関係を築くことができればそれは本物だと思います。人と接する時第一印象がすばらしいと中身のマイナス部分を見逃してしまいそうな気がします。お医者さんは見た目が大切かもしれませんが、茶髪にピアスという先生が居ると言うことは患者さんが本当の意味で「良い先生」を探す良い機会なのではないでしょうか? ちょっと観点がずれているかもしれません。すみません。
◆36歳・男性:
自分の風体が患者に受け入れられるかどうか。ってことを考えてないようなので不安です。患者がお医者さんを信じれば水を薬だと騙して与えても効きますよね。逆も然りじゃないでしょうか。お医者さんなら自己主張より患者に与える効果を最優先に考えてもらいたいです。人間相手の商売ならなんでもそうでしょうけど…。そういう意味でプロとしていまいちなんじゃないでしょうか。自分の主治医が茶髪とピアスだったら…。話してみて特別いい先生でもないようなら病院をかえるかもしれません。なんかナメられているようで不愉快です。葬儀屋が茶髪とピアスなら間違いなく追い返します(笑)。
◆41歳・女性:
昔に(学生時代)茶髪にピアスをしていたDrが身近にいます。彼(20代)いわく、仕事している時は、チャラチャラした格好はできない。見た目だけで判断されるようです。でも、看護婦はかまわないのに何故なんでしょう。医師=何でしょう。パーマはかまはないが茶髪はダメが何故か常識の様になっています。見た目で判断すると、信用できないから…性格は付き合ってから出ないとわからない。と、考えているような…私も一歩引くかな一度は。
◆13歳喘息男児の母:
みなさんと同じ様に引いてしまいます。何を考えているのだろう、と、思ってしまいます。病院も替えてしまいます。考え方が古いのかもしれませんが、茶髪もピアスも本人のスタイルで、誰に迷惑を与えている訳でもないのですから、良いはずなのですが、どうも心が乱れているようにしか思えません。