113:ぜんそく薬吸入は死亡減らす。(平成12年8月31日)
平成12年8月27日付の朝日新聞の日曜版に上記見出しの記事が載っていました。PFセンターのピーチクさんからの教えていただきました。短いので全文紹介します。
ぜんそくの治療で広く使われ、日本でもガイドラインで勧められているステロイド薬の吸入治療法は、症状を改善するだけでなく、死亡のリスクも減らしていることが大規模な疫学研究で確かめられた。カナダ・マギル大学のサミー・スイサ博士らが米医学誌のニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メディシンに論文を発表した。
対象になったのは、1975年から1991年までの間、ぜんそく薬を使っていた約3万人。1997年末までの薬の使用状況や生存などを調べた。
このうち、喘息が原因で亡くなった66人と、同程度の重症度で生存している患者を比べた。薬の吸入容器の使用本数は、喘息で死亡した患者の平均が1.18本で、生存している患者の平均である1.57本よりも少なかった。使用本数が多いほど、死亡リスクが小さかった。
スイサ博士らは「低用量のステロイド吸入は、ぜんそく死亡リスクを下げることが分かった。吸入を中断することは、患者にとって良くないことかもしれない」と指摘する。
一見当たり前のようなデータなのですが、こうした大規模な調査は難しいのものです。その意味で大変意義のあるデータだと思います。
ただし、見出しが私は気に入らない。なぜ「ぜんそく薬吸入は死亡減らす」なのでしょうか? 中味を読めば、普通は、「吸入ステロイドは喘息死を減らす」となるのが当然ではないでしょうか? このあたりにもマスコミの「ステロイド・アレルギー」があるのでしょうね。
蛇足ですが、先日このホームページのアクセスが「77,777」を達成しました。この「診療日記」の「010:ホームページ「寄稿集」を閉じるとき。(平成9年8月27日)」で私は、
読者の皆さん、長い間お世話になりました。昨日、この世でただ一人喘息でコントロール不良であった方が、吸入ステロイドとピークフローメーターのおかげですっかり良くなりました。これで、もう喘息で苦しんでいる方がこの世からなくなりました。もうこのホームページの存在意義はなくなりましたので、本日を持ってこのホームページを閉じることになりました。平成9年5月以来のアクセス数は、77,777回でした。
思えば、10年前、ある喘息児を診察したことがきっかけになって、このホームページを公開しましたが、その努力のかいあって、現在はすべての喘息患者さんに吸入ステロイドが普及し、ベロテックなどの気管支拡張剤を使用する方もほとんどなくなり、平成18年に喘息死した方はついに“0”を記録しました。
ほぼ半数の喘息患者さんは、ピークフローメーターのみで気道炎症をモニターし、吸入ステロイド3カ月に1度ずつしか吸っていません。喘息治療の正しい普及によって、呼吸器疾患関連の国民医療費は激減し、その分は癌や筋ジストロフィーなどの難病に多くがまわされるようになったことも、大きな成果であったと思います。
これも、ひとえに読者の皆様のご協力の賜であると感謝いたします。ありがとうございました。
と予言しています。くしくも3年後の今日、ようやく「吸入ステロイドは喘息死を減らす」というデータが出たと紹介している現実には、なんともがっかりしてしまいます。
最後に、
…なんて書ける日が来るのでしょうか?来ると良いですね。ちなみに私はその頃まだ医者をやっているのでしょうか??
ですが、残念ながらまだ呼吸器の医師をしていましたね。しかもまだこのホームページが残っています。嬉しいやら、悲しいやら、なんとも複雑な気持ちです(笑)。