岩手医科大学附属病院
中央臨床検査部

【矢巾本院】

 
◆生化学査室(主任:上田大輔)


生化学部門は、おなじみのコレステロールから肝機能、腎機能、糖尿病に関わる項目などを検査しています。その他、血液ガス分析、血中薬物濃度などの検査も行っています。これらの検査は、各病態の診断や治療効果の有無、病態の経過を知る上で欠かせない検査となっており、受診される患者さんは必ず検査されている大事な検査となります。
専門技師が少ないなか、結果を迅速かつ正確に報告することを目標として、日々の機器のメンテナンスや精度管理の徹底を大前提とし業務に取り組んでいます。
また、学会・研修会などで培った知識や技術を日々の業務やNST、糖尿病教室などで発揮することでチーム医療に大いに貢献しています。
 

 

 
◆尿一般検査室(主任:川村理恵子)


一般検査は尿検査(定性・沈査・HCG定性)、糞便検査(虫卵・虫体・脂肪染色)、髄液検査、穿刺液検査、インフルエンザ検査を行っています。主な材料の尿や便の検査は痛みを伴わない、非侵襲的な検査でスクリーニングとして有用です。
病院移転後、全自動尿分取装置を新規導入したことにより、業務の効率化につながっています。
尿沈渣や髄液検査の細胞数算定では顕微鏡で細胞の判定を行うため、専門的知識と熟練が必要です。迅速かつ質の高い検査結果の報告ができるよう、学会、研修会等に積極的に参加し、自己研鑽に努めています。また、病棟多職種ミーティングに参加し、患者さんの背景や臨床側が何を求めているかを把握した上で検査に臨むよう心掛けています。
 

 
◆血液検査室(副技師長:千葉拓也)


血液部門は、血液一般検査、凝固・線溶検査、形態学的検査、FCM(フローサイトメトリー)、血糖検査、血中薬物濃度、血液ガス分析、浸透圧検査を担当しています。業務全体を把握できるように一定の期間毎にローテーションしています。効率的な業務をするために定期的にスタッフミーティングを開催し、機器のメンテナンス状況や精度管理、学術情報など情報共有の場を設けています。
2017年6月からは骨髄標本の細胞分類、報告書の作成を開始しました。スタッフが作成した報告書は血液検査専門医によってチェックされ最終報告となります。報告書作成には知識と経験が必要ですが、医師と標本についてディスカッションすることは非常にやりがいを感じる瞬間です。
常に新しい知識を取り入れ、臨床からのニーズに対応していくため、学会、研修会に積極的に参加し自己研鑽に努めています。
 

 
◆免疫検査室(主任:小原丈裕)


免疫血清検査は、4機種の自動分析装置を用いて行っています。主な検査項目は、感染症、腫瘍マーカー、内分泌、自己抗体など多岐にわたります。免疫血清検査は様々な非特異反応に注意が必要であり、検査スタッフは学会や研修会に参加し専門的な知識やスキルの維持・向上に努めています。

 
◆遺伝子検査室(主任:小原丈裕)


病院移転に伴い、検体検査室内に遺伝子検査室が開設されました。移転前に免疫化学検査室で実施していたHCV-RNA定量や、細菌検査室で実施していた抗酸菌核酸同定、結核菌核酸同定およびMAC(Mycobacterium avium complex)核酸同定を遺伝子検査室にて実施しています。今後は臨床のニーズに合わせ、新規検査項目を随時導入していく予定です。
 

 

 
◆輸血検査室(主任:高舘潤子)


輸血検査室は、6名の臨床検査技師(日本輸血・細胞治療学会認定輸血検査技師3名含む)で業務を行って います。主な業務内容は、安全な輸血療法に必要な各種検査(血液型検査、不規則抗体検査、交差適合試験など)、適合する血液製剤の確保、および血液製剤の保管と管理を行っています。血液製剤の分割、院内調製(洗浄赤血球・洗浄血小板・合成血)も行っています。また、患者さんや造血幹細胞移植ドナーの血液から必要な細胞成分を取り出すアフェレーシスを各診療科と協力して行っています。血球分離装置により造血幹細胞移植に必要な末梢血造血幹細胞やリンパ球を分離し、採取した細胞の調整、品質管理、および保管を行っています。
アフェレーシスでは、医師と臨床検査技師(日本輸血・細胞治療学会認定細胞治療認定管理師2名含む)、および看護師が協力し、安全な実施を心がけています。安全な輸血療法と血液製剤の適正な使用を推進するために、各種ガイドラインにもとづく輸血関連マニュアルの整備と院内の輸血療法委員会の運営を行うとともに、輸血医療は一種の移植医療であるという考えのもと、多様化する臨床のニーズに適切に応えることができるよう、日々の業務に努めています。

 

全自動輸血検査装置 Erytra
 

 
◆細菌検査室(副技師長:山田友紀、主任:畠山裕司)

細菌検査室は、臨床検査技師7名が配属され認定臨床微生物検査技師制度協議会の研修施設(第201607号)として認定されています。検査室内は陰圧で直接外部に空気が流れ出ない構造となっていますが、さらにバイオセーフティーレベル3の陰圧室も設置されており、ここでは特に危険な微生物を安全に検査することができます。
迅速な感染症診療および院内感染対策にあたるため365日体制を導入して、休日を問わず検査を実施しています。また、チーム医療の一環として、ICT(Infection Control Team:感染対策チーム)、AST(Antimicrobial Stewardship Team:抗菌薬適正使用支援チーム)に参画しています。医師、看護師、薬剤師、臨床検査技師の各職種でそれぞれの専門的知識を活かして活動しよりよい医療の提供に努めています。
細菌検査は、患者さんの臨床材料(血液、尿、喀痰、膿など)から感染症の原因微生物を検出してそれに有効な抗菌薬は何かを調べる検査をしています。
その検査は以下の手順で行われています。


 

塗抹検査
検査材料をスライドガラスに薄く塗り広げ、染色をして顕微鏡で観察することを塗抹検査といいます。細菌の染色にはグラム染色、結核菌などの染色には蛍光染色やチール・ネルゼン染色を行っています。

培養検査
細菌を肉眼で見える集落(コロニー)に育てるために、血液寒天培地などの寒天平板培地に検査材料を塗布し、それぞれの細菌に最適な条件下のもとで増殖させることを培養検査といいます。血液は液体培地が入った専用ボトルに入れて血液培養自動分析装置(BCバクテックTM FX システム)で培養しています。

同定検査
寒天平板培地に発育した細菌の中で、感染症の原因菌や病原性のある細菌を検索して質量分析装置(MALDIバイオタイパー)で菌の名前を調べています。

薬剤感受性検査
寒天平板培地に発育した細菌の中で、感染症の原因菌や病原性のある細菌に対して、どの抗菌薬が治療に使用できるのかを微生物同定感受性分析装置(MicroScan WalkAway DxM1096)や全自動迅速同定・感受性測定装置(RAISUS S4)で調べています。薬剤感受性検査によって、世間で問題となっている抗菌薬が効かない耐性菌(多剤耐性緑膿菌、MRSAなど)がわかります。

迅速検査
検査材料中の細菌やウイルス、細菌が産生する毒素を免疫学的検査法により短時間で検出する検査です。当院細菌検査室では、A群β溶連菌抗原、尿中レジオネラ抗原、尿中肺炎球菌抗原、肺炎球菌細胞壁抗原、マイコプラズマ抗原、ロタウイルス抗原、アデノウイルス抗原、ノロウイルス抗原、RSウイルス抗原、水痘・帯状疱疹ウイルス抗原、CD(Clostridioides difficile)抗原と毒素の検査を行っています。

抗酸菌検査
結核菌や非結核性抗酸菌などを抗酸菌と呼びます。全自動抗酸菌培養検査装置(BCバクテックMGIT960)で培養して自動遺伝子検査装置(TRCReadyR -80)で結核菌群とMAC(Mycobacterium aviumMycobacterium intracellulare:非結核性抗酸菌の一種)の遺伝子検査を行っています。

遺伝子検査
培養検査で検出できない微生物や同定検査で同定が困難な微生物、また微生物が産生する毒素に対して必要に応じて自動遺伝子解析装置(GeneXpertR システムやFilmArrayRTORCH システム)で検査を行っています。

細菌検査室の役目
近年、新型コロナウイルス感染症や薬剤耐性菌の増加が問題となっています。原因となる病原微生物を最初に認知するのは細菌検査室です。私たちは、その情報を担当医と感染制御部に迅速かつ正確に伝えて院内感染防止に貢献する大事な役目を担っています。


〜当院細菌検査室の概要(2021年9月)〜


 

血液培養自動分析装置
BCバクテックTM FX システム


質量分析装置
MALDIバイオタイパー

微生物同定感受性分析装置
MicroScan WalkAway DxM1096


全自動迅速同定・感受性測定装置
RAISUS S4

全自動抗酸菌培養検査装置
BCバクテックMGIT960

自動遺伝子検査装置
TRCReady-80


自動遺伝子検査装置
GeneXpertシステム

自動遺伝子検査装置
FilmArrayシステム


自動遺伝子検査装置
FilmArrayTORCH システム


 

◆生理機能・超音波検査センター(副技師長:嘉村幸恵、主任:橋敬太、主任:橋広大)

生理機能・超音波検査センターには、臨床検査技師19名と受付事務員2名が配置されています。主な検査項目としては、心電図、運動負荷心電図、ホルター心電図、呼吸機能検査、四肢血圧脈波検査(ABI、CAVI)、サーモグラフィー、超音波検査(心エコー、頸動脈エコー、下肢動静脈エコー、腹部エコー、泌尿器エコー)、脳波検査、誘発電位検査、誘発筋電図検査など様々な分野の生理機能検査を行っています。また診療科や手術室へ出向して検査を行う、術中モニタリング検査、産科胎児スクリーニングエコーや肝臓内科エコーガイド下肝細胞癌ラジオ波焼灼療法などの検査にも携わっています。
病院移転を機に、当院で施行している各種超音波検査を集約し、超音波装置を有効的に活用する目的で『超音波検査センター』が設けられました。現在超音波装置は10台あり、循環器内科、肝臓内科、脳神経内科などから多くの医師が来室し、一緒に検査を行っています。この超音波センターの設立により臨床医とのディスカッションがより活発になり、各診療科と緊密な関係形成ができています。
更に、認定心電図専門士、認定心電検査技師、超音波検査士(循環器・消化器)、認定心エコー専門技師、認定脳神経超音波検査士、二級検査士(循環生理学、神経生理学)、日本臨床神経生理学会専門技術師などの各種学会認定資格を取得し専門的知識を高めています。また臨床のホットな話題や新しい知識を得るため学会や研修会へ積極的に参加・発表することで、質の高い検査ができるよう努めています。個々のスキルを活かし、新たな検査の導入や診療支援など、各診療科のニーズに合わせて柔軟に対応し、チーム一丸となって日々の検査業務に従事しています。
 

 
 

 
◆病理検査室(副技師長:安保淳一、主任:山田範幸)(準備中)

 

 
◆中央採血室(主任:高橋美季子)

中央採血室は、外来エリア2階に位置し、光庭のまわりを待合としております。患者様には、広く、明るい開放感のある場所でお待ちいただいております。スタッフは、臨床検査技師2名(検体検査業務・治験業務を兼務)、看護師5名、事務員2名、受付スタッフ2名(日替わりでニチイが担当)で構成されております。
採血室では、平日は午前8時から優先採血を行っております。8時30分からは整理券番号『1』からと『801』からを交互にお呼びして、1日を通して化学療法の患者様が優先で採血が行っております。化学療法の患者様は採血結果が出てからの診察と化学療法となり、特に病院での待ち時間が長くなる傾向があるということから、少しでも時間短縮になれば良いと思っております。
システムの面では、RFID(Radio Frequency ldentification:近距離無線通信を用いた自動認識技術)を取り入れたラベルピンクラベル)を採用し採血管の照合を瞬時に行っております。採血室では、このシステムを使用すると、患者様のトレーを呼び出し用読み取り機に載せるだけで、患者様の呼び出し(採血台への誘導)と、必要な採血管の照合ができます。
中央採血室では採血業務の他に、翌日の病棟採血用採血管の準備、外注の採血管と伝票の管理も行っております。正確な検査データを迅速に臨床へ報告するためには、採血管の管理と採取が不可欠です。さらに、患者様をお待たせする時間を短くするように努めております。
 


 

【内丸メディカルセンター】

◆検体検査室(副技師長:菊池良枝、主任:斎藤篤、主任:下川波歩、主任:千枝貴幸)

内丸MC検体検査室は、日々来院される外来患者様のため、生化学、感染症、腫瘍マーカー、内分泌、自己抗体、血中薬物濃度、血糖、血液ガス分析などの生化学・免疫検査や、血液一般検査、凝固・線溶検査、尿検査、髄液・穿刺液検査、形態学的検査、PCR検査、便検査など多岐にわたり幅広い検査を行っています。取り扱う検体数は1日に約1000件を超えますが、患者様の診療前検査のため、検査結果を迅速かつ正確に報告することを目標に、機器の精度管理などを徹底し12名の臨床検査技師で業務に取り組んでいます。
スタッフは中央臨床検査部の基本理念を念頭に置き、日々の仕事に真摯に向き合い、明るくコミュニケーションの取れる職場を目標としています。また、スキルアップ維持のため積極的に学会や研修会などにも参加し、相互協力によって患者サービスや臨床支援を行っています。
 



【内丸メディカルセンター】

◆生理機能・超音波検査センター(主任:千葉麻美、主任:平賀悠里江)

内丸メディカルセンターの『生理機能・超音波検査センター』には、 受付 2 名と臨床検査技師 12名が所属しています。 主な検査項目は、心電図、運動負荷心電図、ホルター心電図、呼吸機能検査、四肢血圧脈波検査(ABI、CAVI)、超音波検査(心臓、腹部、泌尿器、血管)、脳波検査など様々な分野の生理機能検査を行っています。さらに内丸メディカルセンターに特化した生理検査と言えば、平衡機能検査、尿素呼気試験です。
紹介状なしで受診可能な内丸メディカルセンターの良さは、『即検査―即診察』という体制です。当日の検査依頼も積極的に対応しています。附属病院と連携を取りながら、附属病院と同精度な検査結果を迅速に提供しています。患者様だけではなく、医師や看護師、他職種が『入りやすい検査室』を心掛け、外来部門と協力しながら地域医療を支えています。各分野の医師とのディスカッションを大切にしながら日々の業務を行っております。
また学会研修会への参加や超音波検査士(循環器・消化器・泌尿器)、認定脳神経超音波検査士などの専門資格の取得など、技師の知識・技術の向上に励んでいます。
助け合い、切磋琢磨できる生理機能検査部門として臨床のニーズに柔軟に対応できるよう努めています。