(2)インタールについてはどうお考えですか?
【003】34歳男性(会社員)から
<質問>
私は、吸入ステロイドの他にインタールも使用しています。インタールについてはどうお考えですか?
<応答>
インタールは、歴史が古く副作用なく安心して使える“抗炎症薬”です。主に小児科領域でよく使われている薬剤です。但し、気管支の炎症を鎮める“抗炎症作用”は何よりもベクロメタゾンが最強です。この関係についてに私の意見を述べますと、もしベクロメタゾンがない時代だったら、インタールは不可欠な薬剤であったと思いますが、現在はベクロメタゾンの吸入ステロイドが普及しており、喘息に関してはインタールは不要であると思います。(ただし、アトピー性皮膚炎やアレルギー性鼻炎など他の全身性アレルギー疾患を合併していれば別です)あまりいい例えではありませんが、雨が降って大地は湿っているのにいちいち水をくんできて作物に与えるようなものです。
この寄稿集でも述べていることですが、インタールは確かに“発作回数を減らす”効果はありますが、“完全に気道炎症を取る”ほどの効果はないと考えています。なぜなら、インタールのみでも発作回数が大分減って楽になったという方が、さらに吸入ステロイドをするようになると走っても息が切れないとか、夜の咳がでない、風邪を引いても発作がおきなくなった、など著しい効果が得られる場合が多々あるからです。これは、気道炎症がほぼ完全に取れてきている証拠です。小児科の先生は吸入ステロイドの副作用(小児に対しても副作用はほとんどないと私は考えています)を恐れるあまり、効果の弱いインタールをよく使う傾向にあります。しかし、発作がないとは言っても、走ると息が切れるなどの症状があるのですから、不完全な状態であることには変わりないのです。小児科の先生に、もっと吸入ステロイドを使って欲しいというのが私の訴えのひとつです。
あなたは、他にもオノンやアレギサールなどを内服していらっしゃるようですが、吸入ステロイドが効いてくるようになると、インタールと同じ理由で減量ないし中止も可能であると考えられます。テオドールも1日800mgですから相当な量です。ただし、私は現在のあなたの状態が良く分かりませんので、急に薬剤を減量するのはお勧めできません。ただし、現在の薬剤量は一般的に見ましても多い方であると考えられますので、今後吸入ステロイドをしっかりしてコントロールが良くなれば、ゆくゆくは減量して行くのがよろしいかと思います。そのためにはピークフローメーターをお勧めします。もうつけているのであれば悪しからず…。
これは私の推測ですが、当初吸入ステロイドをはじめた頃、その意義をよく理解していなかったり吸入方法などが適切でなかったりなどの理由で(もちろん主治医にほとんどの責任があるのですが)、十分な効果が得られず、薬剤がひとつまたひとつと増えていったのではないでしょうか? しかし、吸入ステロイドは私の知る限り最も効果の強い抗喘息薬であると考えています。抗炎症作用はケナコルトよりもデカドロンよりも強く、標準的なプレドニンよりも何百倍~何千倍も強力なのです。でも決してびっくりしないで下さい。そんなに強い薬剤なのに、ほとんど全身作用がないのです。全身作用がなければステロイドは決して恐くありません。良いことばかりです。この意味でまさにベクロメタゾンの吸入ステロイドは夢のような薬剤なのです。
私は、こんな強力なステロイドをして治せない喘息などほとんどないと考えています。要は、吸入方法が正しくなかったり、いくら吸っていても忙しくて気道の安静を保てなかったりと、様々な“妨害因子”があるために吸入ステロイドが効かない状況にあるだけなのだと思います。どうか、その効果を信じて正しい方法で吸入ステロイドを続けてみて下さい。お話をお聞きしましたところ、もうすでに効果がでてきているようです。このまま行けばもっともっと良くなると思いますが、過労や咳・痰は吸入ステロイドの“妨害因子”であります。もし、今後また少し悪くなるようなことがあっても、それは吸入ステロイドの効果がなくなったのではなく、それらの“妨害因子”が邪魔をしているわけですから、吸入ステロイドを続けながらそれらを除く努力をしてみて下さい。