(8)低気圧や台風で発作が起きるのは何故ですか?

【002】40歳男性(配達自営業)から

<質問>
低気圧が来るとなぜ発作が出やすくなるのか教えてください。また、ストレスから喘息になったり喘息が悪化したり発作が出やすくなったりするようですが、それはなぜなのですか。自律神経と何か関係があるのでしょうか。

<応答>
低気圧や台風でなぜ喘息が悪化するかですが、私は詳しくはわかりません。いくつか仮説があると思いますが、どれほど科学的根拠があるかわかりません。ただ、ある程度の説明は可能です。

人間は生きて行く上で、「圧力」とは切っても切れない関係があります。代表的なものが血圧です。気道に炎症があるとそこには毛細血管が発達し血管成分が外にしみ出てきます。その力は通常、気圧という外圧に抗した血圧の力でしみ出てくるのですが、空気は気管の中まで入ってきますので、低気圧(台風)が接近すると、気道の外圧が下がるため、毛細血管がより努張し成分が多くしみ出て来やすくなり、気道炎症が悪化するのではないでしょうか?気道炎症の程度が一定の場合、ある一定以上に気圧が低下すれば、同じような気道炎症悪化ひいては発作が起こっても不思議ではありません。人為的に低気圧条件下で人体実験ができる施設がありますので、実験結果を報告しているものがあるかもしれません。今後、文献など目に付きましたらまたお知らせします。

これと関連して以前何かの学会で、寒冷や運動で良く喘息発作が起きるものですから、患者さんを大きな冷蔵庫に入れたり、自転車をこがせて発作を誘発する実験報告を聞いたことがありますが、喘息が気道炎症によって起こることがわかった現在では、このような実験にどれほど意味があるかは疑問です。私には、「皮膚を擦りむいてジクジクしているのに、なぜ冷たい水をかけたら痛むのでしょうか?」というようなテーマをまじめに研究しているように思えてなりません。運動誘発喘息なども、現在でもまことしやかに研究されていますが、これも「皮膚を擦りむいてジクジクしているのに、そこを手でこすったり動かしたりすると何故痛むのでしょうか?」を研究しているのに似ていると思います。

ストレスに関してですが、緊張していると発作が起きにくいと言われますが、それは一理はあるのです。動物にとって、緊張状態では、自律神経のうち交感神経が緊張し、“天然ベロテック”であるカテコーラミンが放出されるからです。「気がゆるんでいるから喘息になるんだ」と言われるのは、その意味で多少は当たっているのです。しかし、それは発作と非発作を繰り返す喘息初期なら当てはまるかもしれませんが、喘息が気道炎症に由来することがわかるようになってから、根も葉もないことです。カテコーラミンには抗炎症作用はないかあっても副腎皮質ホルモンには遠く及ばないからです。

少し俗っぽい話で恐縮ですが、よくセックスの時、発作が起きないと言われますね。それはセックスをしようと思う気力があるのはまだ気道炎症の程度が軽いからであって、しかも緊張状態にありますから発作は起きないことが多いのかもしれません。しかし、気道炎症が高度になってくるとセックスによる運動誘発喘息が起きますから、発作は起きます。おそらく、そのようなときわざわざセックスをしようとは思わないのではないでしょうか?

少し、話はずれてしまいましたが、これと関連して、むかし副交感神経が興奮するために喘息発作が起こると考えられていた頃、迷走神経(副交感神経の1種)切断術というのが行われた時期がありましたが、効果はありませんでした。これも、気道炎症の概念がありませんでしたから、当たり前ですね。

私が思いますにストレスは、精神的緊張(交感神経緊張)という意味では、気管支拡張には良いかもしれませんが、過労や気道への刺激などが炎症悪化の意味で良くないのではないのでしょうか?

いずれにしても、「気道の炎症」の概念はこれまでの色々な定説を覆し、かつ不明であった数々の点を説明してくれるような気がします。これまでの喘息の通念にはどれも半分は当たっているが、それがすべてではないことが多いと思いませんか? これらもすべてこの概念変化が解決してくれるような気がします。環境改善や運動療法もこの部類にはいるのではないでしょうか?いずれも、ある程度は良くなるがそれだけでは決して喘息は克服できないのだと思います。

※この度の応答に関しては、非科学的で推測の域を出ない内容もありますので、そのつもりで読んでいただきたいと思います。科学的なデータなどをご存じの方がありましたら、是非お教え下さい。内容を更新いたします。