(1)実家で生活するようになったら喘息が悪化。病院へ行くべきでしょうか?

【006】28歳男性(会社員)から

<質問>
このホームページはとても勉強になりました。また、主治医に聞こうと思っていても、なかなかそういう時間がとれない現在の治療現場ではとても頼もしく思って拝見しています。

初めてお便りします。私は28歳会社員です。

喘息と診断されたのが17歳の時で、以降23歳までベロテックと内服薬で治療していました。事情があり24歳の時、海外に半年程過ごしまして一旦治療が中断しました。それ以降、ベロテックだけでコントロールしていました。

海外在住中は、ほぼ毎日明け方ベロテックを使用していたのですが、帰国後(25才)、徐々にベロテックの使用が減り(月7回)、引っ越しをしてマンションにはいった頃から(26歳)、以降3年半の間のつい最近まで、ベロテックを使用するのも年に数回までここ一年に至っては無使用でした。

しかし事情があり実家の方へ帰宅し、そこで生活するようになってから始めの2週間は、発作が出なかったもののそれ以降、明け方1回から始まり次第に就寝前深夜明け方と一日に数回までベロテックを使用するようになってきました。ただまだ主治医というか通っていた病院には行っておりません。

行く時期なのでしょうか?というのも結局ベロテックだけを処方してもらいに1日費やすだけのような気がするのですが…。私の場合、親族で医療関係者が居るのでベロテックだけなら手にはいります。

現況ですが、特に実家がマンション生活当時より掃除ができていないとは思いません。ペットなどの害となる物も特にありません。晩酌にビール1リットル位、たばこ1日20本。特に量の変化はありません。

ベロテックの使用とツムラの漢方薬を朝晩飲んでいる状態です。

アルデシンというのがあるのですが、服用の仕方がわからないので使っていません。(ネットで見ると随分と効果があるみたいですね)

発作によって注射や救急車に乗ったことは今まで一度もありません。昼間は苦しくなってきたかなと思うとベロテックを使用する事はあります。夜間では胸を押されるような苦しさで起きたとき、咳でむせかえって起きた時にベロテックを使用しています。

甚だ勝手ですが何かアドバイスをお願いいたします。

<応答>
実家に引っ越すようになって、喘息症状がひどくなってきたというのは、変な話ですね。しかし、引っ越しを機会に喘息が悪くなることはよくあります。例えそれが新築であっても、新しい木の臭いなどで発作が誘発されることもあります。機密性が完全なのもあまり良くないようですね。あなたのご実家は古い建物ですか?また周囲に花や雑木林、あるいは誇りっぽい環境(工場や往来の追い道路など)などありますか?

思い当たる原因があれば、それは除けるものなら極力除くべきでしょう。ただ原因の検索と喘息を良くすることとは別問題です。アルデシンをお持ちなのは幸いでしたね。

呼吸器専門の病院は1度は受診されることをおすすめします。私のホームページの関連リンクで紹介しております「Zensoku Web」で最近、呼吸器専門医の探し方が載っておりましたので是非参考にして下さい。

「せっかく受診してもベロテックを処方してもらうのに時間を浪費するようなもの」とお考えになるお気持ちは良くわかります。ただ、喘息は時に生命に関わるほどの発作が起きることがあり、これは必ずしも重症な方にのみ起きるのではないことが最近の調査結果でわかってきております。もしもの時に、夜間や時間外に診てもらえる病院を持っておくことは必要であると思います。我々も、発作を起こして来院した場合、以前受診した方かそうでないかは非常に貴重な資料になります。それまでの治療内容や発作時の処置などカルテを見ればすぐわかりますので、話を聞く時間が省け、迅速な処置ができます。その場に担当医がいなくても、カルテを見れば大体はわかるようになっています。

病院を訪れたとき、良い医師に巡り会えるかは残念ながら現在のところ運一つです。どのような医師でも一定レベルの治療が行えるようにと「喘息治療ガイドライン」というのが作成されていますが、残念ながら、まだ十分浸透しているとは言えません。またもし、この治療ガイドラインにそった治療がなされるとすると、あなたの場合は吸入ステロイドは適応がないと判断されるかもしれません。

私は一般の専門の先生とは少し異なる考えを抱いておりまして、喘息の慢性治療は吸入ステロイド(ベコタイドやアルデシンなど)だけでよい、そして時期は早ければ早いほど良い、という考えです。あなたの場合、漢方やその他の内服薬で、ある程度は発作は楽になるとは思いますが、私の経験では、喘息の原因がなくならない限り(しかもあなたの場合は原因が分からないので除きようがありません)、年という単位で喘息は悪化して行くからです。そして、内服薬でもたびたび発作を起こすようになり、ひどくなってから吸入ステロイドを使う傾向があります。そういう患者さんを私はたくさん診てきました。もし吸入ステロイドに重篤な副作用があって、最後の手段として使用するなら、話は分かりますが、このホームページでさんざん述べておりますように、正しい操作でなされた吸入ステロイドはまったく副作用がないのです。しかも、喘息発作の原因となっている“気道の炎症”をほぼ完全にとってくれるのは、数ある喘息治療薬の中で吸入ステロイドただ一つといってもよいのです。おまけに薬価が安いのです。なぜ、このような夢のような薬が広く使われないかの原因の一つに、内服薬至上主義などの日本的な風習や政治・経済上の要因もあるのです。

私も、軽い喘息があり、咳で苦しめられたことがありました。私は吸入ステロイドのみを2週間ほど吸い大変良くなりました。その後は吸っていませんが、また悪化するようならまた一定期間吸入するつもりです。

質問の結論ですが、喘息の検査と今後の発作対策のために1度大きな病院を受けるべきでしょう。担当医が吸入ステロイドをすすめて下さる先生でしたら、その先生は喘息のことを良く知っている先生と判断して良いと思います。もし、その病院から吸入ステロイドの適応がないといわれましても、幸い親戚の方に医療従事者がいるので、希望であれば吸入ステロイドを開始することができます。

吸入方法は、簡単に触れますが、アルデシンでしたら1日8吸入(朝・夜4吸入ずつで良い)で開始してみて下さい。方法の3原則は、<1>スペーサーと呼ばれる吸入補助器(ボルマチックやインスパイアイースなど無料で製薬会社が提供してくれます。親戚の方に取り寄せてもらえばよいでしょう)を使い、<2>ゆっくりと吸入し、<3>十分息をこらえる、この3原則だけ守って下されば、必ず良い効果を発揮するものと確信しております。吸入後のうがいは副作用の防止のために必ず行って下さい。

詳しい方法は、私のホームページの「付録集」に載っています。また、関連リンクとして紹介している薬剤師が運営する「小島君のお家」にも実際的なことが載っていますので、さっそく、はじめてみては如何ですか?効果は必ず出るはずですが、出なければいくつかチェックしなければならないことがありますので、またメール下さい。


(2)その後一度も発作がありません。

【006】28歳男性(会社員)から

<追加メール1>

お久しぶりです。

その後ですが、昨年10月 アルデシンで 治まって以来ベロテックも一度も使っておりません。完治したかのようです。また、何年もこのままだと助かるのですが…。 

これからもがんばって下さい。