(9)喘息の状態をつかむのに必要なのはどのときのピークフロー値なのですか?
【002】40歳男性(配達自営業)から
<質問>
ピークフロー値について質問があります。
私は今日、ピークフローメーターを持ち歩いてほぼ1時間刻みで計ってみました。すると朝の起きがけには480しかなかったのが30分もしないうちに550くらいになり、1時間も経つと600になっていました。その後、昼過ぎまではほぼ600でした。それが夕方近くなるとどんどん落ちてきて500に近くなり、帰宅して計ると520になっていました。
この傾向は、つまり朝に低くて急に上がり、夕方に近づくにつれてまた下がるというのは一般的な傾向なのですか。そして、その傾向はともかく、喘息の状態をつかむのに必要なのはどのときの値なのですか。
私は以前、いま通院している病院の医師から「発作が出ているときでもピークフロー値は記録しなさい」と言われたことがあります。このため、苦しいときでもピークフローメーターを吹いてピークフロー値を計らなければならないのだと思っていました。しかし先生の文章を読むようになって、苦しいときに計っても仕方ないということを知りました。ということは、苦しくないと自覚できるときに吹いた値だけが重要なのだと思います。それはよくわかりました。
ただ、その“苦しくない”というのはどういう状態を指すのか、真剣に考えていたらわからなくなりました。喘鳴などもないまったく調子のよいときのことなのでしょうか。例えば今朝の私の場合は喘鳴はありませんでしたが、喉が狭まった感じで少し息苦しく感じる状態でした。この程度であれば“苦しくない”と判断してよいのですか。ただ、そうだとすると、いつも発作を起こしている喘息患者さんの場合、ほとんど1日中、喘鳴があると思います。以前の私もそうでした。そういう場合、いつピークフローメーターを吹くべきなのでしょうか。
考えすぎだと自分でも思いましたが、何となくすっきりしないので質問してみました。時間のできたときにでも教えてください。よろしくお願いします。
<応答>
1日のうちのいつのピークフロー値で自分の喘息の状態を把握するかという内容ですが、これは非常によい質問です。
まず、いつ吹いたらいいかですが、理想的には、午前3時頃と午後2時頃なのだそうです。これは、喘息患者さんのピークフロー値の変動が最も大きい2点で、この2点さえわかれば、日内変動を把握できるといいます。これは、コーチゾルという副腎皮質ホルモン量の日内変動に一致するのだそうです。「モーニング・ディップ」という言葉がありますように、喘息では朝に最もピークフロー値が下がります。喘息管理の目標は、日内変動を少なくすることですから、このギャプがなくなれば最も良いコントロールとされるのです。しかし、実際には2点とも記録するのは無理なので、朝と夕で代用しています。
また、通常は朝が最も低くなるのですが、人によっては夕方の方が低くでる場合がありますが、ほとんどは過労からくるようです。ちなみに朝方低いのは、コーチゾルのせいもあるかもしれませんが、呼吸筋がまだ目覚めていないことも関係しているのかもしれません。朝起きてしばらくは、全身に力が入りませよね。
ピークフロー値が信頼できるのは、一日の生活リズムが一定の場合に限るといってよいでしょう。一定時間に測定するとしても、極端に早起きしたりしたら値は少し高めにでるかもしれません。何時に起きるかでその値は大きく変わってくると思います。
発作時にもピークフローを吹けと言われたとすれば、気道炎症のモニターの意味が浸透していなかったからかもしれません。あるいは研究や調査目的でどの程度まで低下するか調べたかったのかもしれません(憶測ですが…)。少なくともあなたが行っているのは、発作予防のためですから、発作時に吹く意味はまったくありません。
また、喘鳴のある時は吹かない方が良いと思いますが、喉が狭まった感じで少し息苦しく感じる状態であれば吹いてみてもいいかもしれません。しかし、いずれも参考値にとどめておくのが無難でしょう。ピークフローモニターが威力を発揮するのは喘息症状がないときですから、いずれも程度は軽くても喘息の症状があるわけですから、発作予防の意味でのモニタリングという点では意味のないことかもしれませんね。少しでも症状があるならば、コントロールは完全ではないとの認識でいた方がいいと思います。症状があって調子の悪いときは、きっと良くなると前向きに考えることはメリットですが、逆に調子の良いときは、気を引き締める意味でも悪く悪く見積もった方が大けがをしないと思います。小児喘息でも「発作がないから安定している」という間違った前向きの認識が、発作あるいは治療不足の原因になっているように思います。
よく、いい値を出そうとしてベロテックなどを吸った後の値を記録する人がいますが、これではまったく意味がありません。従って、いつも発作を起こしているような方やいつもベロテックなどを吸っているような方はピークフローモニターの意味はまったくないことになります。何らかの措置を取らなければなりません。
蛇足ですが、いい値を出そうとして何度も吹いているうちに疲れてきて値が低下したり、もっともっとと最後まで絞り出すように吹いているうちに苦しくなったりする方を見かけますが、どれも無駄なことです。3回程度吹いても値が上昇しないなら喘息の状態が悪いわけですから早くあきらめて何らかの対処をすべきです。また、最初の一吹きが最も高い値がでますので、いくら絞り出してもそれ以上の値はでないのです。