(16)痰切りは無理してでも行うべきですか?
【002】40歳男性(配達自営業)から
<質問>
喘息の方からよく聞く話に痰出しがあります。私はこの痰出しが下手で、どんなに気張ってもそんなに出ません。カーッペッとやるよくない人を街でよく見かけます。そんなふうにちょっと気張っただけで、しかもペッと吐き捨てるほどの量の痰がよくも出るものだと、悪いやつらだなと思いつつ、いつも感心してしまいます。私はこの痰出しを無理に続けると次第に喉が痛くなってきて、声がガラガラになってきます。このため無理して痰出しすることはありません。しかし痰が絡んでいると吸入ステロイド剤をうまく吸えないので、無理してでも痰出しをやったほうがいいのかな?とときどき思います。先生はどうお考えですか?私はそこまでして行う必要のあることだとはどうも思えません。かえって喉を痛めてしまい、喘息に悪いのではないかとも考えています。
<応答>
よく街で見かけるような痰が簡単に出る人は、恐らくタバコのみの慢性気管支炎の方でしょう。痰が切れやすいか否かは、痰の成分中の粘液の量、湿度、水分含有量(脱水か否か)など様々な条件で影響を受けます。
痰が出ない場合、<1>あるのに出ない(切れにくい)のか、<2>ないから出ないのかで、痰出しをする必要性は違ってきます。<2>は理想的で、ないものはいくら頑張っても出ません。吸入ステロイドが効果を発揮してくると気管支粘膜が正常化し痰が出なくなってきます。しかし、<1>は普通は絡みとして残りますし、吸入ステロイドを効かせるなどの意味で極力出した方は良いでしょう。痰がないようでも、気管支拡張剤の吸入をした後やネブライザーで水分補給をした後にコロコロと出てくるのであれば、これは溜まっているわけですから、出した方がいいです。痰は、吸入ステロイドを阻害するほかに、細菌などの繁殖する場を与えますので、風邪を拗らせる原因にもなります。
ただし、喉がひりひりするまで出すのは、確かに発作を誘発したりすることがあるので、避けた方がいいです。薬剤や水分補給など、何らかの補助をしてやる必要があります。ただ、この痰に関しては、薬や水分補給でもそう簡単に切れるものでなくそこがやっかいなところです。ただ、基本的には、気道炎症が取れさえすれば、あとはタバコなどの刺激がなくなれば痰は出なくなります。痰を取りながら気道炎症を取る努力を並行しなければなりません。