(6)彼女からの手紙。
【013】喘息の28歳女性を彼女に持つ男性から
いつもご丁寧なメールをありがとうございます。
「スペーサーのなかに息を吐く」ことについて:
彼女が医院で実際に受けた指導は「鼻からゆっくり吐く」だったそうです。ただし一緒に貰った「インスパイア・イース」の説明書には、スペーサーの中に息を吐く方法しか書かれていません。
また、お医者さんでもらった説明書(「喘息治療の患者さんへ/吸入補助器の正しい使い方」昭和大学第一内科教授、足立満監修)には、
1〜3は省略。
4.吸入器を押し、バッグの中に1回分の服用量を噴霧します。
5.ゆっくりと吸入します。
6.バッグがしぼんだら吸入終了。必ず約10秒間息を止めて下さい。
7.静かに息を吐き出し、これで1回の吸入操作が完了です。吸入後は必ず水でうがいをしてください。(もしくは袋の中にゆっくりと息を吐き出します。5〜6の操作をあと2回くり返します。これで1回の吸入操作が完了です。)
となっています。ひょっとしてこの「もしくは」以降は、息こらえが十分できない人のための次善の策として書かれたものなのかもしれないですね。
「おじまくんのおうち」で見つけたのですが、薬のメーカーとしては噴霧器とスペーサーは本来決まった組み合わせで使用することを前提としているようですね。実際は流用可能なのだと思いますが、主に家で使うのであれば洗う時にも扱いやすそうなので、今度ボルマチック・ハードを手に入れてはどうかと彼女に話しました。
吸入ステロイドの副作用については、とりあえず現時点でわかっている範囲では問題ないし、それ以上のことを思い悩んでみても仕方ないですね。薬を使うのは目的があってのことですし、たとえ副作用があったとしても必要ならその薬を使うべきだとは思っております。まして吸入ステロイドは正しく吸えば大きな効果があり、副作用はきわめて小さい画期的な薬であることも、先生のページを見て納得しております。アトピーでステロイドが問題になっていることを良く知っているのに、彼女に吸入ステロイドを勧める気になったのも、先生のページに書かれている内容は、信頼できる、経験に基づいた言葉であると感じたからこそです。
ステロイドが良く効いて発作が起きなくなったら、喘息を増悪させる因子を避ける努力も忘れてしまうかもしれません。それには気をつけようと思っています。
彼女から先生あてのメールがありますので、転送いたします。
はじめまして
わたしは小学生の頃(たぶんまだ2年生ぐらい)から、よく病院に通っていました。気管支喘息だと正式に診断を受けたのかどうかはわからないのですが、医者にそう言われたのはおぼろげながら記憶しています。
夜中に苦しくて目覚め毛布をかぶってひとり縁側で発作が静まるのを待つことがよくありました。発作が起きた翌朝はかならず病院に連れて行かれ、簡単な診察を受け吸入をし、薬(内服薬)をもらって帰ります。自分が喘息患者だという自覚もあまりなかったので、親や周囲のひと(学校の先生など)がいろいろとわたしの行動を制限しようとするのがうっとおしかったり、時には悲しかったりしました。
中学生になると病院に行くのが面倒だと感じるようになり、アレルギー性鼻炎の診断を受けてからは「もし喘息もアレルギーのせいなら病院に行ってもしょうがない」とあきらめてしまったのだとおもいます。それからは薬をもらうこと以外に病院に行く理由がなくなってしまったのです。そして薬も市販の気管支拡張剤などで間に合わせるようになり、現在に至りました。
病院に頻繁に通わなくなってから、それでも一時期(20才前後の数年間)は発作はほとんど起きない期間もあったのですが、数年前からまた出るようになり、風邪などと重なった時などは市販薬はほとんど効かず、動くことも喋ることもままならない状態になることが年に数回あります。
一昨年の今ごろ、どうしようもなくなって夜間診療で吸入などの処置を受け、翌日病院に行くことを勧められました。近所の病院に行ったところ、病院に着いた時点では呼吸困難もひどく、看護婦さんにも「つらそうねぇ」といわれるぐらいだったのですが、長い待ち時間の間に発作はすっかり静まってしまい、結局風邪のための抗生物質とテオドール(多分)を処方してもらい、「また発作が起きたら来てください。」と言われただけでした。
それでも特に失望はしなかったのです。そんなもんだと思っていたからです。管支喘息を良くすることができるとは、ごく最近まで知らなかったのです。長いこと気管支喘息とつきあってきて、この病気がどんなものなのか知ったのごく最近のことです。
きっかけは今年の10月頃に、ずっと気管支の調子が悪い日が続き、ちょうど仕事も忙しい時期で残業が続いて疲れていたせいもあったのか、またしてもひどい発作が起き何日も会社を休まなくてはならなかった事でした。長引いたのは病院に行かなかったせいもあるのですが、どうしても行く気になれなかったのです。けれども、何日も会社を休んだこと(そしてその間彼に会いにも行けなくなったこと)が、わたしに「なんとかせねば」という気を起こさせました。
よく考えてみるとわたしは自分の病気のことをほとんど何も知らないので、なんとか調べて今後の対策を考えなくては、ということを彼に話しました。しかし「なんとかせねば」と言いつつ、喉元すぎればなんとやらでノンビリしているわたしに業を煮やしたのか、彼はインターネットの喘息関連のホームページをあちこち調べ、ピークフローメーターという道具のこと、最近の喘息治療には吸入ステロイドが使われていることなど、おびただしい情報をわたしにもたらしてくれました。今でも喘息に関する知識は、患者のわたしより彼のほうがよく知っていると思います。
ほとんど好奇心で手に入れたピークフローメーターで実際測ってみて驚いたのは、まったく楽に呼吸ができている状態なのに、たったの240までしか針が上がらなかったことです。さすがに少々危機感を感じました。ぜんそくは年を経るごとにだんだんに症状が重くなる、と本で読んだからです。今でさえ240しかないのに、これ以上悪化したらどうなるのでしょう…。
そんなある日、しまっておいた衣類を出したところ突然発作が起きました。市販薬を飲んで3時間程でおさまったのですが、その時試しにピークフローを測ってみたところまったく針が上がりませんでした。そのことを彼に言うと「なにがなんでも病院に行きなさい。行ってステロイドを処方してもらいなさい」と強く言われました。わたしは病院に行くのをためらっていましたが、彼がわたしのピークフローを知ってしまった以上、会うたびに「病院に行け」と言い続けることは確実なので、仕方なく、まるで自首でもするような気持ちで病院に行く決心をしたのでした。
それが先週のことです。彼に教えてもらったクリニックは見たところごく普通の内科の医院なのですがホームページも開設しているくらいなので、喘息の治療には熱心な医院のようです。
ステロイド吸入薬(ベコタイド100)とサルタノールとテオドール200を処方していただき、ステロイドは1回3吸入を1日2回、テオドールは就寝前に1錠服用しています。この1週間発作は起きていないのでサルタノールは一度も服用していません。
ピークフロー値は、それまでは300吹けることはたまにしかなかったのに、ステロイドを吸うようになってからは300を切ることがほとんどなくなりました。今のところ370がベスト記録で、平均は330くらいです。まだ劇的というほどの実感はありませんが、良くなっていくにつれてなにかしら感じることもあるかと思っています。
先生には、間接的にではありますが、いろいろとアドバイスをいただいてとても感謝しています。先生のホームページにお邪魔して直接お礼を言えないのが残念です。
もっと手短に、かつ中身の詰まったメールを書くつもりが、こんなに長くなってしまいました。お時間をとらせて申し訳ありません。
おいおい治療の経過などを報告させていただくこともあると思います。
<追加応答4>
メールありがとうございました。
>>もしくは袋の中にゆっくりと息を吐き出します。
袋の中に吐くというのは、恐らく1回ではうまく吸えなかった方にもう一度吸わせるための苦肉の策かもしれませんね。ただ、1度吸ったものを再度吐き出した時どの程度の薬剤が残存しているか、きちんとしたデータがあるかどうか疑問です。もう一つは、「1回ではもったいない」という気持ちがあると、どこか人間は慌てて吸ってしまいがちで、それは吸入ステロイドの効果発現の点では不利です。
吸入ステロイドやスペーサーの使用上の注意に関しては、たくさんの問題があるのが現実です。これは、私の想像ですが、吸入ステロイドが日本で使われだした10年くらい前は、スペーサーの意義はあまり認識されていませんでした。メーカーもとりあえず、頭で考えて使用上の注意をひな形として作成したのではないかと思います。ですから、そこには科学的な根拠のないことも記載されています。
私も、このホームページを運営するようになって、吸入療法に関するいくつかの疑問点をメーカーにぶつけてきたのですが、メーカーからの解答はどれも根拠のないものばかりでした。このコーナーでも紹介されていますが、例えば、「吸入間隔を1分以上あけるは何故か?」や「2回噴霧して2回吸入するのは何故か?」などがよい例です。
1度ひな形を作ってしまうと、改良点などについてその都度パンフレットやビデオなどを作り直すのには、メーカーとしては莫大な資金がかかります。これは、吸入療法の普及の点ではメーカー側の絶対責任だと思うのですが、吸入指導やスペーサーなどの補助器では儲からないという医療体制に問題があるのだと思います。無形のものには金を払わないという日本人特有の考え方が根本にあるのかもしれませんね。
>>「おじまくんのおうち」で見つけたのですが、薬のメーカーとしては噴霧器とスペーサーは本来決まった組み合わせで使用することを前提としているようですね。実際は流用可能なのだと思いますが、主に家で使うのであれば洗う時にも扱いやすそうなので、今度ボルマチック・ハードを手に入れてはどうかと彼女に話しました。
吸入ステロイドとスペーサーの組み合わせは、とても大切な点です。
当初、アルデシンを販売しているシェーリング・プラウは、インスパイア・イースを無料配布してそのシェアを獲得しようとしていました。かたや、ベコタイドの日本グラクソは、当初1個1000円のボルマチィック・ハードを有料で販売していました。ですから患者さんに吸入ステロイドを勧める場合、アルデシンの方が有利であったことは確かです。
アルデシンもベコタイドも中味は同じものですから、どちらをどのスペーサーで組み合わせようと関係ないことですが、お互いに他社のものは使えないように工夫したのは確かなようです。しかし、ボルマチィック・ハードはアルデシンの容器がうまくはまらないので使いにくいのですが、インスパイア・イースは吸入器のボンベを取り外してスペーサーにはめ込んで使用するので、ベコタイドをインスパイア・イースで使用することは可能でした。
その後、グラクソも対抗して無料のボルマチィック・ソフトを配布しはじめました。しかし、私は個人的にはボルマチィック・ハードが一番いいと思います。その理由は随所に述べていますが、
<1>容積が大きいこと。
<2>吸入口が大きいこと。
→しっかり噛むとのどの奥が広がり吸入効率が高まる。<3>頑丈で洗いやすい。
<4>携帯に不便なこと。
→家でしっかり吸えばいい。<5>有料の分しっかり吸入を継続してくれる。
→只だと思うといい加減になってしまう。
などです。
>>まったく楽に呼吸ができている状態なのに、たったの240までしか針が上がらなかったことです。
彼女の手紙ありがとうございました。
中でもこの部分は非常に大切で皆さんのためになると思いました。すなわち、発作がないから何ともないと考えられるときでも、気道炎症が残存し、不完全な状態であることをピークフローメーターが教えてくれるのです。私自身、何人かの患者さんからこのことを学ばせていただいてから、他の患者さんにピークフローメーターを勧めるようになりました。
自分を軽い喘息と認識している方には是非ピークフローメーターを記録してもらいたいと思うこの頃です。
>>ピークフロー値は、それまでは300吹けることはたまにしかなかったのに、ステロイドを吸うようになってからは300を切ることがほとんどなくなりました。今のところ370がベスト記録で、平均は330くらいです。
身長にもよりますが、女性の方でピークフロー値が大体300以上保てれば、まず発作を起こすことはありません。しかし、風邪をひいたり、少し無理をすると息苦しくなったりします。
お忙しい毎日でしょうから、とりあえずこのくらいの値が維持できればまずまずと考えていいと思います。しかし、必ず自分にはもっと上があると頭に入れて置いて下さい。
そのためには、仕事が忙しくないようなとき、十分身体を休め、吸入ステロイドをふんだんに吸うことです。また時には主治医とよく相談して内服ステロイドのお世話になることです。
彼女には宜しくお伝え下さい。経過報告を楽しみに待っております。
【013】喘息の28歳女性を彼女に持つ男性から
<追加メール5>
お世話になっております。彼女からの近況報告を転送いたします。
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ご無沙汰しております。
暖冬とはいえ巷では今年もインフルエンザが猛威をふるい、わたしの周りでも咳の音があちらこちらでコーラスのように鳴り響いています。咳の止まらないわたしの上司の様子を見るにつけ、世の中にはこんな状態でも仕事を休めずに働かねばならない状況があることを再認識しています。
ステロイドの吸入を始めてからは、大掃除をした日の夜に軽い息苦しさを感じた時以外、1度も発作は起きていません。ピークフロー値は350前後が多く、今までの最高値は390です。なぜか土曜日の朝にはピークフロー値が普段よりも良いのを発見しました。390も土曜日の朝でした。やはりお休みだと思うと心身ともにリラックスするからでしょうか。
主治医の先生からは、発作時のサルタノールの吸入薬のほかに「テオドールでもサルタノールでもおさまらなかった時に飲んで」とプレドニンとアロテックの錠剤を渡されていますが、まだ1度も飲んでいません。
ここ数日、すこしピークフローが下がり気味で、やっと300をこえる程度まで落ちています。とくに目立った自覚症状はないのですが、すこし風邪気味なのかもしれません。先日、診察を受けたおりに風邪薬もいただきました。でももしかすると、ここ数日のピークフロー値の低下は、風邪だけが原因ではないのかもしれません。
診察の時に「朝・夜2回×3吸入と指示されているが、朝できなかった時は夜に朝の分も吸入していいでしょうか」と思いきって先生に聞いてみたところ、「1日2回は最低限の回数だから、なるべく朝と夜2回の吸入を守るように」と言われてしまいました。なぜそんなことを聞いたのかと申しますと、よくある話かと思いますが、ステロイドを規則正しく吸入することやピークフローメーターを吹くことに多少あきてきたのです。ピークフローメーターを吹くことで自分がまだイエローゾーンであることを知ってはいても、発作が起きなくなるとどうしても真剣味がうすれてしまいます。もともとわたしはとても朝寝坊なもので、朝はついギリギリに起きてギリギリのバスに飛び乗ることになってしまうのです。それでもステロイド吸入を始めた頃はきちんと吸入していたのですが、最近は「急いで吸っても意味ないし」と自分に言い訳しつつ、夜帰ってから罪ほろぼしのように丁寧に吸入するというパターンが増えてきてしまいました。
ピークフロー値は基本的には横這い状態で、ジリジリと良くなってはいるようなのですが、すこし風邪をひいたくらいで下がっているようでは、まだまだですね。最近の手抜き吸入を反省すると同時に、吸入方法の改善(スペーサーを変えてみる等)も検討中です。
まだまだ厳しい寒さが続きますが、先生もおからだに気をつけて、ますますのご活躍をお祈りしたします。この次に経過報告をする時には、先生をがっかりさせないようなもっと良いご報告ができるといいのですが。
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ということです。
以前は市販の薬を飲んでから寝ても朝には多少ゼイゼイするのがいつもの生活だったそうですが、今のところ喘息の状態は(自覚症状的には)たいへんよく、夜もよく眠ることができるそうです。何となく感じていた胸のモヤモヤも良くなり、発作の心配をしないで昼寝できるのが嬉しいと本人は言っています。朝寝坊をしてバス停まで走っても大丈夫、だそうです。
発作の状態を思えば、症状が無いのに予防的に吸入ステロイドを吸うという作業が多少面倒でも我慢できるはずだと(実際にやる本人ではないので)思いますが、毎日きちんと続けるとなるとやはり負担なのかもしれません。以前コンタクトレンズを使っていたときに、毎晩洗うのがたいへん面倒であったことを思いだしました。
いっそ、一本あたり50マイクログラムの、タバコの形をした使い捨て吸入器でもあれば、仕事の合間に一服するようなつもりで習慣づけられるかもしれないですね。
<追加応答5>
お久しぶりです。
>>暖冬とはいえ巷では今年もインフルエンザが猛威をふるい、わたしの周りでも咳の音があちらこちらでコーラスのように鳴り響いています。咳の止まらないわたしの上司の様子を見るにつけ、世の中にはこんな状態でも仕事を休めずに働かねばならない状況があることを再認識しています。
→風邪で苦しそうでも働かなければならないのですから、発作のない喘息の方が治療のために休暇や休息をとるのはなおさら難しいですね。
>>ステロイドの吸入を始めてからは、大掃除をした日の夜に軽い息苦しさを感じた時以外、1度も発作は起きていません。ピークフロー値は350前後が多く、今までの最高値は390です。なぜか土曜日の朝にはピークフロー値が普段よりも良いのを発見しました。390も土曜日の朝でした。やはりお休みだと思うと心身ともにリラックスするからでしょうか。
→まず発作がないのですから、吸入ステロイドが効果を発揮していますね。ピークフロー値は現在400弱ですが、土曜日などリラックスしたときに値が上昇するのはまだ不安定な証しですので、まだまだ目標を高く持って下さいね。500は吹けると思います。
>>主治医の先生からは、発作時のサルタノールの吸入薬のほかに「テオドールでもサルタノールでもおさまらなかった時に飲んで」とプレドニンとアロテックの錠剤を渡されていますが、まだ1度も飲んでいません。
→プレドニンが手元にあるのは非常に心強いですね。吸入ステロイドを続けていても、日常生活に無理があると、ピークフロー値は低下してくることがありますので、そんなときは吸入ステロイドの効果が得られにくくなりますから、ためらわずにプレドニンを内服した方がいいでしょう。
>>ここ数日、すこしピークフローが下がり気味で、やっと300をこえる程度まで落ちています。とくに目立った自覚症状はないのですが、すこし風邪気味なのかもしれません。先日、診察を受けたおりに風邪薬もいただきました。でももしかすると、ここ数日のピークフロー値の低下は、風邪だけが原因ではないのかもしれません。
→自覚症状がなくともピークフロー値が低下しているときは要注意です。また、それこそがピークフロー値を記録する意味です。ピークフロー値がせっかく下がって危険信号を発しているのに何もせず発作が起きてしまうのでは、せっかく毎日記録する意味がありません。何かしら原因があるはずですから検索して下さいね。
>>診察の時に「朝・夜2回×3吸入と指示されているが、朝できなかった時は夜に朝の分も吸入していいでしょうか」と思いきって先生に聞いてみたところ、「1日2回は最低限の回数だから、なるべく朝と夜2回の吸入を守るように」と言われてしまいました。なぜそんなことを聞いたのかと申しますと、よくある話かと思いますが、ステロイドを規則正しく吸入することやピークフローメーターを吹くことに、多少あきてきたのです。ピークフローメーターを吹くことで自分がまだイエローゾーンであることを知ってはいても、発作が起きなくなるとどうしても真剣味がうすれてしまいます。
→人間なら誰しもそう考えるでしょう。交通事故が多いのは運転免許を取ったばかりよりも、運転に慣れてきた頃だと言います。吸入ステロイドで症状がなくなって来た方の最初の落とし穴はここにあります。つまり、発作がなく自分は治ったと思ってしまうことです。しばらくは吸入ステロイドを止めても何ともないのですが、風邪を引いたりしますと、また発作を起こしてしまいます。その際は、吸入ステロイドの錯覚で動けるようになっているので、無理して動いてしまうため以前よりひどい発作になってしまいます。若葉マークの頃の事故は慎重運転ですから軽い接触くらいで済みますが、慣れてきた頃に起こる事故はスピードが出すぎているので、命に関わるような大事故になることもしばしばです。脅すようで申し訳ありませんが、くれぐれも気をつけて下さいね。吸入ステロイドもピークフローメーターも発作のないときにこそ行うものです。
>>もともとわたしはとても朝寝坊なもので、朝はついギリギリに起きてギリギリのバスに飛び乗ることになってしまうのです。それでもステロイド吸入を始めた頃はきちんと吸入していたのですが、最近は「急いで吸っても意味ないし」と自分に言い訳しつつ、夜帰ってから罪ほろぼしのように丁寧に吸入するというパターンが増えてきてしまいました。
→症状が落ち着いてきてからなら、夜だけのしっかりした吸入でも良いと思いますが、不安定な状態なうちはなるべく定期的に吸入された方がよいですね。
>>ピークフロー値は基本的には横這い状態で、ジリジリと良くなってはいるようなのですが、すこし風邪をひいたくらいで下がっているようでは、まだまだですね。最近の手抜き吸入を反省すると同時に、吸入方法の改善(スペーサーを変えてみる等)も検討中です。
→その通りですね。ボルマチック・ハードは有料ですが、効果ありますよ。
>>まだまだ厳しい寒さが続きますが、先生もおからだに気をつけて、ますますのご活躍をお祈りしたします。この次に経過報告をする時には、先生をがっかりさせないようなもっと良いご報告ができるといいのですが…。
→はい。いい結果を期待しています。頑張って下さいね。
>>以前は市販の薬を飲んでから寝ても朝には多少ゼイゼイするのがいつもの生活だったそうですが、今のところ喘息の状態は(自覚症状的には)たいへんよく、夜もよく眠ることができるそうです。 何となく感じていた胸のモヤモヤも良くなり、発作の心配をしないで昼寝できるのが嬉しいと本人は言っています。朝寝坊をしてバス停まで走っても大丈夫、だそうです。
→良かったですね。ただし、今の状態は、私の唱える吸入ステロイドの3段階の効果(→「診療日記:021」参照)のまだ第1段です。もっともっと上がありますので、励ましてあげて下さいね。
>>発作の状態を思えば、症状が無いのに予防的に吸入ステロイドを吸うという作業が多少面倒でも我慢できるはずだと(実際にやる本人ではないので)思いますが、毎日きちんと続けるとなるとやはり負担なのかもしれません。以前コンタクトレンズを使っていたときに、毎晩洗うのがたいへん面倒であったことを思いだしました。
→実際、発作で死にそうな思いをしたとか、それまでに痛い目に遭わないとなかなか継続するのは難しいですね。早く日常生活の一部になると良いですね。
>>いっそ、一本あたり50マイクログラムの、タバコの形をした使い捨て吸入器でもあれば、仕事の合間に一服するようなつもりで習慣づけられるかもしれないですね。
→良い考えですね。今後の参考にさせて下さい。
では。
【013】喘息の28歳女性を彼女に持つ男性から
<追加メール6>
ごぶさたしておします。
いまのところ彼女のピークフローは横這い状態のようですが、喘息は良い状態を維持できています。ただ最近とくに忙しくなっており、少々無理をしているようです。本人も、以前ならいまごろはダウンしているだろうと言っていますが吸入ステロイドのおかげで「無理ができてしまう」のは困ったところですね。
<追加メール6>
まったくそのとおりですね。吸入ステロイドを吸っていてもピークフローが上がらない原因にやはり生活や仕事上の無理があるのです。良くなっているときこそ「あえて無理をしない」姿勢が必要なのですが、喘息の方は気質的に自分を省みない頑張り屋さんが多いので、簡単には行きません。一度大きな失敗をするとそのことがわかる方がほとんどです。そうすると本当に喘息の克服へ向けて身体をいたわるようになるのですが、それで脅すわけには行かないところに、喘息治療の難しさがあります。
彼女に宜しくお伝え下さい。