(7)アトピー性皮膚炎で使用するステロイドは肝臓で分解できないのですか?

【013】喘息の28歳女性を彼女に持つ男性から

<質問>
吸入ステロイドは吸収されても肝臓で分解されてしまうといいます。ではなぜアトピー性皮膚炎のステロイドも同じようにできないのでしょうか? きっとアトピーのステロイドも分解されるのだか量が多すぎて無理なのではないでしょうか? あるいは患者が薬を塗り続けるので分解が追い付かないのではないでしょうか?

アトピーと喘息では、患部が全身の皮膚と気管支という違いがあり、ステロイドも、患者が勝手に吸収率の大きく違う部位に使ったり、使い残りなどを乱用しやすい軟膏と、吸い込むしか使い道のない定量噴霧という違いがあり、また喘息は発作時以外には「自覚症状がない」のに努力してステロイドを使い続けなくてはいけないのに、アトピーが常に「強い自覚症状」がありステロイドで見た目を良くするという依存が起きやすいという違いもあるのでしょうか?

<応答>
アトピー性皮膚炎と喘息の違いに関する非常によい質問です。ただ、私は皮膚科の方は専門外なので、憶測でしかお答えできないことをお許し下さい。

まず、アトピー性皮膚炎で使用するステロイド軟膏は、吸入ステロイドのベクロメタゾンとは異なり、リンデロンなど全身性作用(副腎皮質抑制作用など)のあるものですから、肝臓ですぐ分解されることはないと思います。また、全身に大量に塗る場合は例外として、局所的な湿疹などで使用する場合はほとんど全身作用は問題にならないと思います。

アトピー性皮膚炎にもベクロメタゾンのような強力にして全身性作用のないようなステロイドが導入あるいは開発されればいいとは思いますが、おそらくあなたがおっしゃるように喘息とアトピー性皮膚炎の病態の違いがあるのではないかと思います。

アトピー性皮膚炎は今でもアレルギー性疾患として認識されているのだとは思いますが、喘息の場合、発症過程には確かにアレルギー機序が関与していると考えられていますが、その慢性化にはアレルギーでなく気道炎症が関与していると考え方が変わったことが、ベクロメタゾンなどの導入をもたらしたと言えるでしょう。アトピー性皮膚炎にこのような炎症の概念が当てはまるかどうかは私はわかりませんが、その意味でアトピー性皮膚炎と喘息は違う状況にあると言えます。

また、確かに両者の治療のタイミングに違いがあると思います。アトピー性皮膚炎は痒みという自覚症状が起きたときの治療がメインであるようですが、これは以前喘息も発作という自覚症状で対処していた頃とよく似ています。発作のない間欠期にこそ炎症を鎮める努力をしなければならないのだという考え方の導入で喘息治療は大きく進歩しました。

今後アトピー性皮膚炎も病態解明が進めば、ステロイドに限らずいい薬剤が登場するかもしれませんね。(的確な答えでなくて申し訳ありません。さらに情報があればお伝えしたいと思います)