(8)吸入ステロイドは毎日使っていても効果が保たれるのは何故ですか?
【013】喘息の28歳女性を彼女に持つ男性から
<質問>
アトピー性皮膚炎の場合のステロイド軟膏は、常用すると効かなくなってより強いものでないと痒みがとまらなくなると聞きました。では吸入ステロイドでは、なぜ同じものを毎日使っていても効果が保たれるのでしょうか?
アトピー性皮膚炎では外からのステロイドで副腎の機能が抑えられてしまうことが原因になっているのではないですか? また「痒み」に対して「効かない」としても「炎症」にはいつまでも「効く」のでしょうか?
<応答>
非常に的を射た質問です。しかし、残念ながらこの質問に対して私はお答えすることができません。私の勉強不足というよりも未だに科学的に解明されていないことなのです。
ただ、アトピー性皮膚炎で長期間ステロイドを使用することで次第に効かなくなることと副腎皮質抑制は別問題であるとは言えます。ステロイドの全身投与と違ってステロイド軟膏(局所投与)による副腎皮質抑制はあっても程度は少ないと思いますし、仮に副腎皮質抑制が起きてもステロイドを中止すればある一定期間の後回復してきます。恐らくアトピー性皮膚炎自体がステロイドに対して耐性になってくることが原因なのかもしれません。
しかし喘息に関しては、実際問題として、吸入ステロイドを十年以上継続している方でも、効果が保たれていることは事実ですし、そのような方が悪化したからと言っても、それは吸入ステロイドに耐性になったのではなく、全身性ステロイドを一定期間使用して気道炎症を除去してやると、吸入ステロイドはまた気道炎症を長期にわたり抑制してくれます。
吸入ステロイドが喘息に対して何故耐性を起こさないか?これは謎です。
実は、医学分野にはこのように理由はわからないが良く効くという薬が結構あるのです。呼吸器分野では他にエリスロマシンという薬(抗生物質)がかつての難病であったびまん性汎細気管支炎という病気の特効薬としての地位を確立しています。その機序については諸説紛々としておりますが、実際のところまだ良く解明されていないのです。
アトピー性皮膚炎も詳しい病態の解明と並行して、ベクロメタゾンのように相性の良い薬剤が誕生するとか偶然見つかることがあればいいと思います。(またしても答えになっていません。申し訳ありません)