(1)またモトクロスができるようになりたいです。

【020】26歳(OL兼主婦)の女性より

<質問>

こんにちは。

ホームページ拝見させていただきました。

私は26歳のOL兼主婦です。

先日、お医者さまより「気管支喘息」と診断されました。

昨年12月中旬より風邪をこじらせ、喉の痛みや熱などはおさまったものの咳と痰が止まりませんでした。咳が長引くため勢いで胃の中の物を吐いてしまう事がしばしばありました。

それでも風邪だと思い市販の風邪薬をとっかえひっかえしながら様子を見ていました。

こんな状態が続きあまりにも息苦しいため近所の内科に行き「咳止めの頓服薬」他2〜3種類のお薬を出されました。診断内容は「風邪で喉が少し腫れている程度」というなんだか曖昧な結果でした。

町医者では駄目かな、と思い近くの総合病院に通ってみました。そちらでもレントゲンをとったり飲み薬を何度か変えてみたりしても「子供の時に喘息をしたことがない」と聞くと「じゃぁ、何だろう?」という顔をしてまたもや「風邪をこじらせた」というような診断に終わりました。

そうこうしているうちに夜中、咳が止まらず会話ができなくなり声が枯れて肩で呼吸するようになりました。

結局別の内科医に行った際に「喘鳴が聞こえる」と言われ「気管支喘息」と診断されました。

お薬は「ベコタイド50」と発作時用に「サルタノール」そして飲み薬に「ブリカニール」「テオロング」「メラボン」を出されています。

今のところ以前よりは咳き込みも少なくなしましたが、相変わらず1日中胸苦しく、口の中と喉が乾いている感じがします。明け方、冷たい空気を吸った時、会話をしているときなどは特に胸苦しくなり咳が止まらなくなります。

私としては今まで喘息は経験がまったくありませんし、喘鳴といわれても(よくヒューヒューいうといいますが…)ヒューヒューなると言うよりは息を吐くときに「ゾゾゾゾゾー」と胸元で痰がからんで抵抗を与えてそうな音が少し聞こえてくるような感じがする程度ですし「信じられないなぁ」と思っているのです。

たしかに息が苦しいです。会話するとほんの少しで声が出なくなってきます。ちょっとした空気の刺激で咳がでます。早歩きしたでけで息があがって5分も10分も咳が止まらないです。でもでも「喘息じゃない!」と思いたいのです…

このホームページの色々な方のお話を読ませていただいて、自分に似通った症状をみるととても辛く感じます。きっと皆さんはもっともっと大変な経験をされてきたのだろうな…と思います。

なにせ花粉症にもなったことがないし、ホコリをすっても全然大丈夫でしたし、唯一の趣味といえば排気ガスをあびまくりの「モトクロス」だったので「喘息」なんて自分とは無縁の世界だったのです。バイクに乗れないでいるのが何より一番辛いのです。一日でも早く元の生活体系にしていきたいのです。

でも喘息かどうか信じきれないのです。藁をもすがる思いでこのホームページにたどり着きました。

質問は、以下の点です。

(1)私は本当に喘息でしょうか?

(2)咳のしすぎで右脇腹から背中にかけて痛みが生じます。軽く触れただけでもかなり痛いので咳込むとなによりもこの部分が痛くて辛いのです。お医者様に相談したら「よく筋肉痛になるんだよね」と軽くあしらわれました。どうすれば良いですか?

(3)発作ってどんな状態の事を指すのでしょうか? サルタノールは使いすぎると心臓に負担が架かるので発作時以外はあまり使わないことをすすめられました。

(4)飲み薬は副作用が出やすいのであまり飲用しないほうが良いと友人に聞きました。今は飲み薬と吸引薬を併用して使っています。これは問題ないでしょうか?

(5)力が入らなくなったり、少しですが震えが出るのは薬のせいでしょうか?

(6)アレルギー検査やピークフロー検査をしていません。その診断もなしに薬を渡されても問題はないのですか?

きっと毎日お忙しい事と思いますが、相談にのって下さい。

宜しくお願いいたします。

<応答>

遅くなりましたが、コメントさせて下さい。

>>こんな状態が続きあまりにも息苦しいため近所の内科に行き「咳止めの頓服薬」他2〜3種類のお薬を出されました。診断内容は「風邪で喉が少し腫れている程度」というなんだか曖昧な結果でした。

→最初はどこの医者へ行ってもこんなもんかもしれませんね。

>>町医者では駄目かな、と思い近くの総合病院に通ってみました。そちらでもレントゲンをとったり飲み薬を何度か変えてみたりしても「子供の時に喘息をしたことがない」と聞くと「じゃぁ、何だろう?」という顔をしてまたもや「風邪をこじらせた」というような診断に終わりました。

→レントゲンでは異常がなかったようですね。この点も喘息を鑑別する上で重要な点です。

>>そうこうしているうちに夜中、咳が止まらず会話ができなくなり声が枯れて肩で呼吸するようになりました。結局別の内科医に行った際に「喘鳴が聞こえる」と言われ「気管支喘息」と診断されました。

→よほどひどいときに病院へ行ったことが、逆に幸いでしたね。もし、喘鳴が聞こえなければ、また同じような診断であったかもしれませんね。

>>お薬は「ベコタイド50」と発作時用に「サルタノール」そして飲み薬に「ブリカニール」「テオロング」「メラボン」を出されています。

→一般的な治療薬であると思います。ブリカニールは、メプチンやブロンコリンなどと同じβ刺激薬といわれる気管支拡張剤の内服薬です。テオロングも気管支拡張薬ですが、ブリカニールとはやや別な働きで気管支を広げます。テオドール、ユニフィルなどと同じです。メラボンは、あまり聞かない薬剤ですが、ビソルボンという去痰の薬がありますので、同じ「ボン」という言葉がつきますように、同系統の薬剤でしょう。

私は、喘息と診断されたとき、「ベコタイドやサルタノールを処方してくれる医者は、喘息に精通した医者である」という考えをもっています。ただ、吸入指導を受けましたか? その点ももう一つのポイントであります。もし、受けていない場合でも、私のホームページの「特集・吸入療法」をじっくり読んで下さいね。

>>今のところ以前よりは咳き込みも少なくなしましたが、相変わらず1日中胸苦しく、口の中と喉が乾いている感じがします。明け方、冷たい空気を吸った時、会話をしているときなどは特に胸苦しくなり咳が止まらなくなります。

→効果は出ているが、もう一つというところですね。これらの症状は気道炎症が残っている症状です。根気よく吸入ステロイドを続けてみて下さい。

>>私としては今まで喘息は経験がまったくありませんし、喘鳴といわれても(よくヒューヒューいうといいますが…)ヒューヒューなると言うよりは息を吐くときに「ゾゾゾゾゾー」と胸元で痰がからんで抵抗を与えてそうな音が少し聞こえてくるような感じがする程度ですし「信じられないなぁ」と思っているのです。

→喘息で起こる症状やその感じ方は人それぞれです。発作の時やひどい咳の時はヒューヒューが聞こえますが、痰が絡んでいるだけだと、あなたのように感じられるかもしれませんね。痰が絡んでいると、吸入ステロイドの効き目がうまく現れませんので、水分補給や適宜サルタノールを使用するなど、吸入ステロイドを効かせる努力も行って下さい。

>>でもでも「喘息じゃない!」と思いたいのです…。

→お気持ちはよくわかります。でもおそらくこう思う背景には、あなたがこれまで抱いてきた喘息に対する潜在的なある種の偏見(苦しみや暗いイメージ)のようなものがあるからかもしれませんね。決して非難しているのではありませんので誤解しないで下さい。喘息のことをよく知らない人は誰しもがそうです。

しかし、最近は治療の進歩によって喘息の方でも、健康人と同じような生活が送れるようになっており、喘息と言い渡されたからといって何も落ち込むことはありません。喘息は今後ますます増加してきますし、現在健康な方でもいつあなたのようになるか誰も予想できません。中途半端に喘息を認めたくないと考えているより、自分は喘息なんだとはっきり受けとめて対処していった方がずっと楽でいいと思います。私のホームページでも、喘息と診断されて、かえってすっきりしたという方が結構おります(→「寄稿集(20)」の方参照)。

>>このホームページの色々な方のお話を読ませていただいて、自分に似通った症状をみるととても辛く感じます。きっと皆さんはもっともっと大変な経験をされてきたのだろうな…と思います。

→ほとんどは、吸入ステロイドの恩恵を受けられなかった喘息の方ばかりです。しかし、今は吸入ステロイドがあります。早期に適切な治療が受けられると喘息は悪化しないものです。

>>なにせ花粉症にもなったことがないし、ホコリをすっても全然大丈夫でしたし、唯一の趣味といえば排気ガスをあびまくりの「モトクロス」だったので「喘息」なんて自分とは無縁の世界だったのです。バイクに乗れないでいるのが何より一番辛いのです。一日でも早く元の生活体系にしていきたいのです。でも喘息かどうか信じきれないのです。

→小児喘息がなく、元来健康であった方が成人になって発症するのもう一つの喘息の側面なのです。このような方が喘息と診断されると相当ショックでしょうね。しかし、しっかり治療すればまたモトクロスもできるようになります。また早くそうなりたいという気持ちが治療意欲をかき立ててくれるものです。

>>(1)私は本当に喘息でしょうか?

→喘息であると私も思います。ただ、発症が昨年12月ということで、期間としては長くはありませんので、まだ希望は捨てないで下さい。「喘息様気管支炎」にしては少し長め、「真の喘息」としてもごくごく初期であると思います。このような時期に適切に治療がなされ、すっかり良くなると、吸入ステロイドがなくても生活上の注意だけで、咳や発作がなく生活することができるようになる可能性はあります。ただ、ピークフローを記録しているともっと安心できますね。

>>(2)咳のしすぎで右脇腹から背中にかけて痛みが生じます。軽く触れただけでもかなり痛いので咳込むとなによりもこの部分が痛くて辛いのです。お医者様に相談したら「よく筋肉痛になるんだよね」と軽くあしらわれました。どうすれば良いですか?

→これはよくあることです。咳が出なくなれば筋肉痛は治まりますので、とりあえず湿布などで抑えておくしかありません。咳をすることはそれだけ体力を消耗することです。ましてや喘息の発作はこの比ではありません。喘息で長い闘病生活を送った方は、その呼吸筋力たるや恐るべきものをもっているのがうなづけますね。

>>(3)発作ってどんな状態の事を指すのでしょうか? サルタノールは使いすぎると心臓に負担が架かるので発作時以外はあまり使わないことをすすめられました。

→「発作」とはいってみれば「呼吸困難」と考えていいでしょう。息が吸えなくなったり、吸えなくなった息が吐けなくなったり、そして肺に空気がたまってぱんぱんになってしまいます。ただし、ひどい咳の積状態になると、発作とほとんど変わらなくなります。できることなら、今後も経験しない方がいいですね。

サルタノールは確かに使いすぎると心臓に負担をかけますが、その他の薬剤に比べれば軽い方です。ベロテック問題をご存じですか? ベロテックはその最たるものです。私のホームページでも扱っておりますので、時間があるとき読んでみて下さい。

発作時以外は使わないにこしたことはないですが、我慢しろという意味ではありませんので誤解なく。必要なときは早めに吸った方がその後の経過がいいのです。ただ、何度もサルタノールを吸うような状態を放置することは望ましくありません。吸入ステロイドを行っているのにサルタノールの使用回数が減らないのは、必ずどこかに問題がありますので、「チェックリスト」を参考にして下さい。

>>(4)飲み薬は副作用が出やすいのであまり飲用しないほうが良いと友人に聞きました。今は飲み薬と吸引薬を併用して使っています。これは問題ないでしょうか?

→両者の併用は問題ありません。特に咳がひどい時期では吸入がむせたりして難しいことがあるので、そういうときは内服薬の方が効果が出ます。しかし、次第に吸入ステロイドが効果を発揮し出すと、内服薬は要らなくなることもあります。

>>(5)力が入らなくなったり、少しですが震えが出るのは薬のせいでしょうか?

→喘息治療が始まってから出現した症状なら恐らく間違いないでしょう。テオロング、ブリカニール、サルタノールなど、どれも原因と考えられます。一刻も吸入ステロイドが効く状態にすることが唯一の解決策です。

>>(6)アレルギー検査やピークフロー検査をしていません。その診断もなしに薬を渡されても問題はないのですか?

→喘息の診断には症状や経過がもっとも大切です。これらの検査は喘息の原因を調べたり、喘息であることを確かめるために行いますので、検査をする前に治療を始めても問題はありません。ただ、吸入ステロイドの効果が出て気管支の炎症がとれてくると、まったく呼吸機能検査をしても異常が出なくなることがありますので、早めにやってもらった方はいいでしょうね。ちなみにピークフローメーターは個人購入できますので、かかりつけの薬局などに相談してみても良いでしょう。

最後に、ぜひ「特集・喘息の常識・非常識」の初級コース問題にトライしてみて下さい。クリアすると、先に進めます。恐らくあなたが疑問に感じていることが、問題の形で出ています。正解するよりも、間違った方が勉強になります。

それでは、治療と知識の吸収を頑張って下さい。


(2)漢方はどうでしょうか?

【020】26歳(OL兼主婦)の女性より

<追加メール1>

色々と考えるところありましたが、前向きに「喘息治療」にとりかかって行こうと思っています。

今は咳もすっかり落ち着き胸苦しさも大夫とれてきました。

こういう状態ですと以前はすぐ薬も病院通いもやめてしまうところですが、先生のアドバイスのもと根気よく治療していくようにしていきます。

今考えているのは吸入薬と併用しながら漢方薬を使用してみようかと…。

友人に喘息になったことのある人がいてその友人は漢方薬を使用したところ、喘息が良くなったと聞きました。また喘息ではないですが、15年以上悩まされた「蓄膿症」が漢方薬の使用ですっかり治ってしまったとのことでした。

もちろん体質やそれまでの治療方法で個人差が出るかとは思いますが、やってみる価値はあるかな、と考えています。

喘息FAQのホームページでも漢方薬のことを触れていましたが、完全に良くなる保証はないようですし、まったく効かない場合も考えられますが、現在の治療薬と併用の形であれば様子を見るには問題ないですよね? どう思われますか?

言い忘れてましたが吸入薬の指導は病院でビデオにて指導して頂きました。

また近況報告をさせて頂きます。

<追加応答1>

漢方については、この「質問と応答」のコーナーの他の方(消化器内科の先生)の質問でも、私の考えを述べさせていただいております。

基本的に、漢方を併用されることにはまったく問題はないと思いますが、ただ注意するべきことは、下記の3点です。

<1>漢方薬の中には、気管支を広げるテオドールなどの天然のキサンチン成分やステロイドに似た成分が含まれていることがあります。通常の喘息薬の成分と重複することがあるかもしれませんので、担当の先生とよく相談してみて下さい。

<2>吸入ステロイドの効果が不十分だから漢方を使ってみるかとお考えなら、その前にもっと吸入ステロイドを効かせることに全力を注がれるべきです。吸入操作のチェック、吸入回数の増加などです。一定期間の経口ステロイドなども主治医と相談して使ってみるのもよいでしょう。

<3>漢方を飲んでみて良いようだと感じたとすればそれで結構です。その際、ピークフローメーターなどの客観的な指標があれば、その効果をしっかり把握できるでしょう。漢方薬に限らず他の民間療法などもプラセーボ(疑似薬)効果といって、気分的に良くなっているだけということがよくあります。ピークフロー値を有意に増加させる治療法をこそ続けるべきでしょう。

このことさえ頭に入っていれば、いいと思う治療は何でも取り入れてみて下さい。