(25)喘息で炎症が起きている気管支とはどうなっているのですか?
【002】40歳男性(配達自営業)から
<質問>
気管支の炎症という言葉でふと気付いたことがあります。
炎症といえば普通、“熱をもっている”というイメージがあると思います。気道の炎症というのものも“熱をもっている”のでしょうか?
「発作が出たら冷たい水を飲むとよい」、「湿布などで外から喉のあたりを冷やすと発作は鎮まる」といった話を聞いたことがあります。これらのことは、気道の炎症の熱を取る効果から発作を鎮めるのでしょうか?
ちなみに私はいずれの方法を試しても発作のときには「効いた」とは感じませんでした。
ところで、気道の炎症というものを実際に肉眼で見た方というのはいるのでしょうか? 私はぜひ見てみたいと思います。“炎症”と言われても実際にどんなふうになっているのか見えないと、何とも実感が沸かないのです。見たら「こりゃ大変だ」ということになってもっと本気で治療と取り組むのではないかと思います。写真でもあるといいのですが。あれば説得力があると思います。
<応答>
普通炎症と言えば、肺炎や髄膜炎などのように高熱が現れ、まさに火事のように“炎が燃えている”という感じがするものです。
気管支の炎症も、確かに同じ様な炎症なのですが、<1>気管支という局所の炎症であること、<2>主体となる炎症細胞が、好酸球やリンパ球など一般の細菌に対する炎症の時に見られる好中球でないこと、などが全身の発熱を伴わない炎症になっている理由と考えられます。
>>気道の炎症というものを実際に肉眼で見た方というのはいるのでしょうか?
あります。気管支鏡検査で喘息の患者さんの発作のない時の気管支粘膜は、右下の図のように赤く晴れ上がっています。左は正常者の気管支粘膜です。
下図は、喘息で亡くなった方の解剖所見です。少し見えにくいのですが、所々粘稠性の痰が気管支を閉塞しています。
下の図は、太い気管支の中に痰(中央の丸い物体)が詰まっているのを顕微鏡で見たものです。気管支の周りを取り囲んでいる濃いピンクが気管支の軟骨です。
気管支を顕微鏡で見たものです。粘膜が炎症で厚くなっています。細かい紫色の点々が炎症細胞です。
下図は、これらのことを描いた漫画です。
以上は、喘息死するようなひどい方の気管支粘膜ですが、大なり小なり似たような変化が起きていると考えられています。
どうですか? 少しは恐いと思うようになりましたか? こうならないように治療を頑張って下さいね。