(28)吸入ステロイドで喘息が耐性になることはありますか?
【002】40歳男性(配達自営業)から
<質問>
吸入ステロイドを始めるとほとんどの患者さんは劇的に良くなりますね。これは症状が軽いためよく効く、または初めて使う薬なのでよく効く、ということがあると思うのですが、その点はいかがなものなのでしょうか? もしそうだとすると、長く使っていると効かなくなってくるということがあるのではないでしょうか? 1日に何回にも分けてちょこちょこと小出しに吸入しても、症状の軽いうちならいいかもしれませんが、重くなってくると薬剤の量が不十分になってくるようはそのせいかなと思いました。いかがなものでしょうか?
<応答>
吸入ステロイドを含め、ステロイドに耐性になる喘息があることは事実です。最近は、そのメカニズムも明らかにされて来つつあります。
内服ステロイドに関しては、吸入ステロイドのなかった時代にこのようなことは確かにありました。ステロイドの量が増え、種類も強いものへと変更され、次第に離脱ができなくなっていった患者さんが結構おりました。そのような方は、感染症などが問題となって命を落としたり、骨がもろくなって骨折し寝たきりになってしまったり、さんざんな時代がありました。
このような状況下にある方は別として、吸入ステロイドでそのようなことがあるかと聞かれればそれは私はないと考えております。もし、ある喘息の方の気管支がほぼ完全に開いている状態で、吸入ステロイドが十分気管支粘膜に到達しているのに、それでも喘息はだんだん重症化して行くことがあるなら、私の考えはいつでも撤回します。
確かに、吸入ステロイドをきちんと吸っていても喘息のコントロールがうまく行かず、吸入ステロイドを増量しなくては維持できない方はおります。しかし、それが吸入ステロイドが効き難くなっているのかというとそれは別で、単に気管支粘膜に到達しなくなっているだけだと考えています。その証拠は、そのような方が、入院で点滴したり、一定期間のステロイド内服をしたりすると、また元の吸入ステロイド量で何年も維持できるようになるからです。もし、本当に吸入ステロイドに耐性になっているならこのようなことはあり得ないはずです。
多くの方は、吸入ステロイドが気管支粘膜に到達できない状況から脱することができないために、高用量の吸入ステロイドで維持して行かなくてはならないのだと思います。この場合、量を増やす意味は、私は回数を増やすことで、少しでも多くの吸入ステロイドの薬剤が気管支粘膜に到達するチャンスが多くなるだけであって、多量の薬剤でないと抑制できない炎症に変化してしまったのではないと考えています。
あなたの場合もステロイドや安静をうまく加味するなどの方法で、吸入ステロイドをより効率的に作用させることができるようになれば、吸入ステロイドの回数はいつでも減らせると思います。吸入ステロイドが到達し得ない気管支の炎症がまだ残っているだけなのだと思っています。
あなたの喘息が吸入ステロイドの耐性になりつつあるとの判断は早いと思います。これは、単なる慰めで言っているのではありません。まだまだ希望を持って下さいね。