(1)エアコンに当たると発作を起こすのですが…。

030】28歳男性(コンピュータソフト会社経営)の方より

<質問>

突然のメール 失礼致します。

ホームページを拝見しお聞きしたいことがありメール致しました。

・年齢・性別・職業・身長:28歳・男性・コンピュータソフト会社経営・182cm

・小児喘息の有無:ありません。

・初めて喘息と診断された時期:97年5月頃

・およその治療経過

97年4月末、風邪を引き39度近い発熱と激しい喉の痛みがありました。(私は普段滅多に風邪をひいたことがありません)

97年5月末、また同様の風邪をひきました。この時、寝ていると息苦しいという症状がでて、(喘鳴はありましたが、咳は出ませんでした。)病院に行ったところ、 「喘息の気があります。」と言われました。

その後、近くの病院に通院したのですが、その時に頂いた薬は、テオドールでした。先生のお話では、「この時期、同様の症状で来院する患者が増えているが、 2、3ヶ月すると収まるので、薬を飲んで様子を見ましょう」とのことでした。

この間に、血液検査を行ったのですが、ハウスダスト、ダニ等の検査では何も問題ありませんでした。しかし、好酸球が増えているので、何らかのアレルギー症状をおこしているとのことでした。(今までアレルギーはありませんでした)

6月、7月はたびたび発作のようなものを繰り返していましたが、8月に入り症状は落ち着いてきました。今では殆ど症状らしいものはありません。

・喫煙の有無あるいは喫煙歴:95年までの数年間程ありますが、その間も月に1箱未満でした。それ以降はありません。

・ペットなどの特殊な環境の有無:猫が1匹おります。

・吸入ステロイド使用の有無:ありません。

・使用しているスペーサーの種類:ありません。

・ピークフローメーター記録の有無及びその機種:ありません。

 

さて、質問ですが、

1997年8月以来、「喘鳴」もなく特に喘息と診断された当時のような発作らしものはないのですが、疲れたときに、多少息苦しさを感じます。普段は自分の呼吸など意識しないのですが、この時は、呼吸が気になり息苦しいのです。痰もでます。私は小学生時分から蓄膿症を患っておりますので、普段も痰がでるのですが、この時は普段と違い透明で切れにくい痰がでます。それが、喉の奥にまとわりつくような感じで、それが息苦しさを生む原因ではないかと思えます。他に、みぞおちの当たりが押されるような不快さと、背中(肩甲骨から腰にかけての)の痛みもあります。

これは、去年から続く、喘息の症状の一貫なのでしょうか。あるいは、他の病気なのでしょうか。であれば、どのような病気が考えられますでしょうか。それとも、去年の「喘息」という診断そのものが間違いなのでしょうか。

去年の6月頃、TVで「古いエアコンに生えたカビが原因で肺炎をおこす」というような内容の番組を拝見し、私の部屋にもちょうどそのようなエアコンがあり、それを使い始めた頃でしたので、その辺も気になっております。

息苦しさは自律神経系の異常でも起きるというようなことも聞いたことがありまして、それではないかと思うようなこともあります。

また、電話で医療相談をして頂けるところで聞いたところ、「精神的なものではないですか?」といわれましたが、確かに息苦しいと感じますし、普段は喘息のことは気にしてないのですが、いかがなものでしょうか。

以上、お忙しい中大変恐縮ですがご回答頂ければ幸いです。

<応答>

初めまして。

>>この間に、血液検査を行ったのですが、ハウスダスト、ダニ等の検査では何も問題ありませんでした。しかし、好酸球が増えているので、何らかのアレルギー症状をおこしているとのことでした。(今までアレルギーはありませんでした。)

→この他に、肺活量検査、レントゲン検査は行いましたか?

>>喫煙の有無あるいは喫煙歴:95年までの数年間程ありますが、その間も月に1箱未満でした。それ以降はありません。

→この程度の喫煙では、慢性気管支炎になるのはまだ“不十分”ですね。

>>ペットなどの特殊な環境の有無:猫が1匹おります。

→もちろん家の中でですよね。飼いはじめて何年くらいになりますか? また症状発現あるいは増悪時期と関係ありませんか? また、猫のアレルギー検査はしましたか?

>>これは、去年から続く、喘息の症状の一貫なのでしょうか。あるいは、他の病気なのでしょうか。であれば、どのような病気が考えられますでしょうか。それとも、去年の「喘息」という診断そのものが間違いなのでしょうか。

→たとえ発作がなくとも、喘息としても説明が付きます。しかし、その他に刺激になる環境や要因(例えば自分は吸わなくとも周囲がヘビースモーカーであるとか、自宅近辺が埃っぽいなど)はありませんか? また、蓄膿症の既往・合併があり、非喫煙者で痰が主症状となる病気に、特殊な慢性気管支炎であるびまん性汎細気管支炎気管支拡張症があります。しかし、これらはレントゲン検査で陰影が出てきますので、呼吸器専門家であれば、喘息との鑑別は比較的容易です。また、この場合、エリスロマイシンという特効薬が確立されています。蓄膿症にも効果があるとされています。

喘息の診断が誤りであったかどうかは、検査結果が分からないと何ともコメントできません。レントゲンで異常はなかったか、肺活量検査の結果はどうであったか、などの情報があれば、もう少し詳しいコメントができます。

>>去年の6月頃、TVで「古いエアコンに生えたカビが原因で肺炎をおこす」というような内容の番組を拝見し、私の部屋にもちょうどそのようなエアコンがあり、それを使い始めた頃でしたので、その辺も気になっております。

→これも、レントゲンをとれば一発でわかりますが、これまでにレントゲンで異常がなければ心配いらないでしょう。また、この病気では、痰はあまり少なく、息切れや咳がひどいのが特徴です。

>>息苦しさは自律神経系の異常でも起きるというようなことも聞いたことがありまして、それではないかと思うようなこともあります。また、電話で医療相談をして頂けるところで聞いたところ、「精神的なものではないですか」といわれましたが、確かに息苦しいと感じますし、普段は喘息のことは気にしてないのですが、いかがなものでしょうか。

→自律神経系の異常、あるいは精神的なものと診断するのは、あくまで検査結果で何も異常が出ない時の最終診断と考えて下さい。最初から決めてかかるのは賢明とは言えません。また、このような場合は、咳止めや去痰剤のみの対症療法が主体となります。

最後に、いくつか試みる手があります。まず、発作止めの吸入などを吸ったときこれらの症状が良くなるかどうかをよく観察することです。もし改善するようなら、喘息によるものの可能性があります。また、もし吸入ステロイドが手に入るようなら、1、2週間吸ってみるのも一策です。効果が得られれば、やはり喘息によるものでしょう。

では、お大事に。


<追加質問1>

ご返事ありがとうございました。

>>この他に、肺活量検査、レントゲン検査は行いましたか?

→いいえ。レントゲンは経過を見た上で、必要ならば撮りましょうとのことでしたが…。

>>もちろん家の中でですよね。飼いはじめて何年くらいになりますか? また症状発現あるいは増悪時期と関係ありませんか? また、猫のアレルギー検査はしましたか?

→はい、猫は家の中で飼っております。今いる猫は2匹めなのですが、初めて飼ったのは、7、8歳の頃だと思いますので、20年くらいにはなると思います。特に、症状発現あるいは増悪時期と関係ないように思います。猫のアレルギー検査は特に行っておりません。

>>たとえ発作がなくとも、喘息としても説明が付きます。しかし、その他に刺激になる環境や要因(例えば自分は吸わなくとも周囲がヘビースモーカーであるとか、自宅近辺が埃っぽいなど)はありませんか? また、蓄膿症の既往・合併があり、非喫煙者で痰が主症状となる病気に、特殊な慢性気管支炎であるびまん性汎細気管支炎や気管支拡張症があります。しかし、これらはレントゲン検査で陰影が出てきますので、呼吸器専門家であれば、喘息との鑑別は比較的容易です。また、この場合、エリスロマイシンという特効薬が確立されています。蓄膿症にも効果があるとされています。

→私の周りには特に、ヘビースモーカーはおりませんが、両親とも働いておりますので、家の掃除はそんなにまめにはできませんので、埃っぽい環境といわれれば、否定できません。

蓄膿症に関しては、4、5歳の頃から患っており、耳鼻科の先生のお話では、鼻水の量は多い方だとおっしゃっていました。手術の必要があるそうなのですが、20歳になるまでは…ということでした。本当はいけないのでしょうが、現在のところまで、匂いも感じますし、生活上、特に大きな問題もなかったので、気にしておりませんでした。手術すると、つぶれたような鼻になるなど、顔に傷が残るという話も聞いたことありましたし、仕事上もまとまって休みを取り難いなどの理由もありました…。

>>喘息の診断が誤りであったかどうかは、検査結果が分からないと何ともコメントできません。レントゲンで異常はなかったか、肺活量検査の結果はどうであったか、などの情報があれば、もう少し詳しいコメントができます。

→そうですか。一番症状のひどい時から1年が過ぎようとしておりますが、今、検査していただいても意味がありますか?

>>TVで「古いエアコンに生えたカビが原因で肺炎をおこす」(…略…)これも、レントゲンをとれば一発ですが、これまでにレントゲンで異常がなければ心配いらないでしょう。また、この病気では、痰はあまり少なく、息切れや咳がひどいのが特徴です。

→そうすると私の症状とは少し違うようですね。ただ、先のメールにも書きましたように、エアコンを使い初めてすぐ、風邪を2度ひきまして、その後すぐ、喘息のような症状になったものですから…。

>>自律神経系の異常、あるいは精神的なものと診断するのは、あくまで検査結果で何も異常が出ない時の最終診断と考えて下さい。最初から決めてかかるのは賢明とは言えません。また、このような場合は、咳止めや去痰剤のみの対症療法が主体となります。

→現在のところ、去年もそうでしたが、精神的に疲れると、症状がでるようです。コンピュータ関係の仕事をしておりますので、悩むのが仕事のようなものです。また、症状は、去年のひどい時には、不定期になり、昼までもおこるようになりましたが、就寝時に一番、多く見られ、数10分くらいすると自然に楽になります。当時は、薬を服用しておりましたので、その影響かもしれませんが…。

実は、今日も先ほど(20:00〜21:00頃)、息苦しさを感じましたが、現在は落ち着いております。喘鳴はありませんでしたが、呼吸に抵抗を感じるよな感覚があり、肩から背中の辺りが重苦しいような感じがしました。また関係あるかわかりませんが、みぞおちの辺りも重苦しさがあり、どう考えても正常ではないような気がします。

>>最後に、いくつか試みる手があります。まず、発作止めの吸入などを吸ったときこれらの症状が良くなるかどうかをよく観察することです。もし改善するようなら、喘息によるものの可能性があります。また、もし吸入ステロイドが手に入るようなら、1、2週間吸ってみるのも一策です。効果が得られれば、やはり喘息によるものでしょう。

→去年のものはありますが、使いかけのものはやめた方がいいでしょうか? また、ステロイドもありますが、こちらは主治医からは、「使わないで済むならできるだけ使うな」と言われておりましたので(諏訪先生のお考えと違ってますが…。)封を切らずにとってあります。

去年は、テオドールなどでも、吸入すると楽になりましたが、気持ちのせいか、薬の効き目か私には判断が付きません。砂糖水でも薬と言われると、副作用を訴える人もいるという話しをきたことありまして…。

お忙しい中、お返事を戴き誠にありがとうございました。


---- 愚痴です ----

私は、ねっからの理系の人間といいますか、理屈に当てはまらないと納得しない性分でして…。自分の病気にも納得しておりません。

喘息のメカニズムは、先生のホームページや医学辞典を拝見しながら自分なりに考えておりますが、喘息の一般的な症例とも合致しない部分もたたあるようですし、喘息=アレルギーとどの本でも説明されていますが、去年まで、花粉症等を始め、食物等に関しても、何らアレルギーをおこしたことのない人間が、急にアレルギーになることはあるのでしょうか。もし、体質の変化だとしても、その後の、検査で何も発見されず、また自分でも思い当たる節がないというのは…。

ただ、いずれにしましても、去年6月くらいに、喘息で病院を訪れる患者が多く、8月には減るという主治医の説明からすると、もしや、今年もまた、と思うと少々不安です。なるべく気にしないようにしようとは思っているのですが…。

3日前くらいから、喉が痛く(蓄膿症故鼻が詰まって口を開けて寝ているのが原因と思われますが)やな感じです。

--- 大変、失礼しました ---


<追加応答1>

大体の経過わかりました。やはり、一度、呼吸機能検査レントゲン検査を行ってもらった方がいいですね。できれば、猫のアレルギーもできれば行ってもらった方がいいでしょう。何年も猫と接触して何ともなかったのに、長年の抗原(猫の毛など)に暴露することで抗原を獲得することがあります。自分の体調の変化で急にその抗体量(IgE)が増え、アレルギーを獲得することもあります。私も、数年間は動物実験でラット扱っても平気でしたが、7、8年後に急にアレルギーになってしまいました。花粉症も同じで、それまでの慢性暴露の結果、突然花粉症を発症することは有名です。私は、ゆくゆくはほとんどの日本人が花粉症や喘息になるのではないかとさえ思っています。できれば、検査結果をメモにとって後で教えて下さい。異常がないから喘息ではないとは言えませんが、ひとつの物を判断するときの参考資料になります。特に初期の喘息では、肺機能上異常がでないこともありますし、何のアレルギーがなくても、感染型喘息といって風邪を引くと発作のような症状を起こすことは、これも有名です。

誰でも、最初から典型的な喘息発作で発症するのではなく、あなたのような非典型的な状態から、次第に喘息様の病態が形成されて行くのです。もちろん、そうした初期に、自分なりに生活環境や仕事の程度をうまくコントロールできるような方は、ひどい喘息にならない場合もあります。こうした非典型的な症状で悩んでいる方は非常に多いと思います。

気管支拡張剤(1年くらい前のものであれば問題ないと思います)や吸入ステロイドを試しに使ってみて下さい、と申しましたのは、これは「治療的診断」といいまして、結構行われている手段です。実際の臨床では、すべてが教科書通りにクリアカットに行くものではありません。何も検査で異常がでなくても、想定した病気の治療を行ってその症状が改善することで、その病気であることがわかる場合があります。喘息にして言えば、吸入ステロイドです。吸入ステロイドが劇的に効けば、恐らく喘息の初期病変と行って間違いないでしょう。吸入ステロイドが劇的に効く病気は喘息以外にないからです。正しい吸入方法(「特集・吸入療法」を参照して下さい)で、1、2週間行い何も変わらなければ喘息でないかもしれません。この場合、「何となく効いたような気がする」のレベルは、プラセーボ効果と言ってあまり信頼できません。文字どおり、劇的に効くかどうかです。

エアコンは古いものなのですか? 新しいものを使って風邪を引いたら喘息様になったとしたら、やはり、カビが原因ではなく風邪を原因とした感染型喘息の初期化もしれませんね。風邪から喘息になる方は本当に多いのですよ。

喘息は精神的な原因で発症することはないと私は信じておりますが、発症した喘息(軽症でも)が大体は過労などを伴う精神的な誘因で増悪することはよくあります。原因なのか誘因なのかをはっきり区別しなくてはなりませんね。

では。


(2)感染型喘息について教えて下さい。

030】28歳男性(コンピュータソフト会社経営)の方より

<追加質問2>

早速のお返事ありがとうございました。

>>大体の経過わかりました。やはり、一度、呼吸機能検査とレントゲン検査を行ってもらった方がいいですね。できれば、猫のアレルギーもできれば行ってもらった方がいいでしょうできれば、検査結果をメモにとって後で教えて下さい。

→わかりました。是非、検査を受けてみたいと思います。結果は後日、お知らせします。お蔭様で多忙な為なかなか時間が取れないので、だいぶ先になってしまうかもしれませんが…。

>>異常がないから、喘息ではないとは言えませんが、ひとつの物を判断するときの参考資料になります。

→そうなんですか。検査結果に異常がないのに完全に否定できないというのは、素人にはなんとも恐ろしい話ですね。

>>気管支拡張剤(1年くらい前のものであれば問題ないと思います)や吸入ステロイドを試しに使ってみて下さい。

→了解しました。試してみます。

>>エアコンは古いものなのですか? 新しいものを使って風邪を引いたら喘息様になったとしたら、やはり、カビが原因ではなく風邪を原因とした感染型喘息の初期化もしれませんね。風邪から喘息になる方は本当に多いのですよ。

→去年の発病時には10年以上使用した古いエアコンでした。今年は、仕事の関係で、会社に寝泊まりしておりますので、新しいエアコンです。元来、滅多に風邪を引くことがないのですが、去年の発病以来、1年ぶりで、ここ2、3日、多少ですが、喉が痛く、咳がでます。

ところで、感染型喘息というものがあるというのは、聞いたことがあるのですが、素人向けの殆どの本では、喘息=アレルギーについて詳しく書かれていても、感染型喘息については、「まれに、細菌感染による喘息もある」の一言で片づけられているようです。(私が調べた限りでは)

そこで、もし宜しければ諏訪先生のホームページにて、特集して頂けたら幸いに思います。私のように、アレルギーに無縁である(と思い込んでいる!?)人にも、喘息という病気を理解できるのではないでしょうか。

ちなみに私の素人考えでは、細菌感染により、作られたIgEが、アレルギーを誘発しているのではないかと考えています。従って、その細菌に触れない限り、ハウスダストなどや食べ物の検査では、反応しないのではないかと…。ただし、原因はどうであれ、気管支の炎症が慢性化しており、何かの誘因で、喘息症状がでるのではないかと思います。

>>喘息は精神的な原因で発症することはないと私は信じておりますが、発症した喘息(軽症でも)が精神的な誘因(大体は過労を伴う)で増悪することは良くあります。原因なのか誘因なのかをはっきり区別しなくてはなりませんね。

→そうですね。上記に素人の勝手な考えを書かせて戴きましたが、原因は細菌、発作の誘因は、疲労感ではないかと思います。(特に食事後に多いです)

また何かありましたら、メールさせていただきたいと

思いますのでよろしくお願い致します。

では、失礼します。

<追加応答2>

気管支喘息は、原因別に大きくアトピー型、感染型、混合型に分けられます。感染型喘息は、特にアレルギー検査では何も異常が出ないのに、風邪などがきっかけで起こる喘息です。アトピー型は小児に多いのに対して、感染型は成人発症喘息に多いようです。原因は、細菌ばかりでなく、風邪などのウイルスも原因として重要です。

特別に特集を組むほどのことはありませんでしたね。他にわからないことがあったらまた質問して下さい。

では。