(1)小学校3年生の息子の喘息について。

031】喘息児を持つ43歳の男性より

<質問>

始めまして、喘息児の父です。

息子の現状についてですが、小学校の3年生です。

3年ほど前から、風邪で診察を受けると喘息気味だと診断されることがありました。本来ならこの時期に本格的な治療を受けさせるべきだったのでしょうね。今年4月、咳(ゼイゼイ)がひどいので診察を受けたところ、喘息と診断を受けました。

主治医の言葉:

「検査の結果、ハウスダストに陽性。?(検査項目不明)の値が、異常に高い。これでは苦しいはず。今度再検査を行い、今後の方針を立てる。」

三種類の薬が出ています。(1月分)

(1)シロップ 1日3回毎食後

ペリアクチンシロップ(0.04%) 1.666 ml
アストミンシロップ(0.25%) 1.666 ml
ムコダインシロップ(5%) 1.666 ml
ブリカニールシロップ(0.05%) 2.333 ml

(2)テオドールドライシロップ(20%) 0.75 g 1日2回 朝夕食後

(3)ザジテンドライシロップ(0.1%) 0.6 g 1日2回 朝夕食後

あまり、処方したくない薬が含まれているのでずいぶん悩んだそうです。シロップは咳が止まれば中断して良いとのことなので現在、朝夕の2回にしています。

現状:1度、喘鳴がひどく、離れていてもはっきり聞き取れることがありました。朝は、動作が鈍いことが、多いようですが、午後は活発に遊びまわっています。

主治医はの専門は喘息ではありません。

ここで幾つか質問をさせて下さい。

(1)小児喘息と成人喘息に違いはありますか?

(2)小児喘息に吸入ステロイドの適用は可能ですか? また軽症の喘息でも適用可能でしょうか?

(3)病状の把握にピークフローメーターは必要だと思いますが、一般には入手は難しいでしょうか?

(4)水泳教室へ通っていますが、続けさせても良いでしょうか?

色々とお忙しいでしょうが、宜しくお願いします。

<応答>

メールありがとうございます。

>>本来ならこの時期に本格的な治療を受けさせるべきだったのでしょうね。今年4月、咳(ゼイゼイ)がひどいので診察を受けたところ、喘息と診断を受けました。

→私たち医療従事者は、色々な患者さんを診ていますから、色々なパターンを経験しています。「この分だとひどくなるかもしれませんから、今のうちからきちんと治療しましょう」と言っても、なかなか真剣に受け止めてくれない場合も多いですし、ましてや医者の方から、そう言われたのでなければ、子供の場合初期の頃からきちんと治療をするということは、なかなか難しいかもしれませんね。

>>主治医の言葉:「検査の結果、ハウスダストに陽性。?(検査項目不明)の値が、異常に高い。これでは苦しいはず。今度再検査を行い、今後の方針を立てる。」

アレルギー陽性の程度と発作の苦しさは必ずしも比例しないとは思いますが、でも、「これでは苦しいはず。」という一言にはほっとするものを感じます。よく喘息のことをわかっている先生ではないでしょうか?

>>あまり、処方したくない薬が含まれているのでずいぶん悩んだそうです。

→確かに種類は多いですが、どれもごく一般的で、どれが「処方したくない薬」なのかよくわかりません。しかし、先生が、処方したい、処方したくないに関わらず、最も大切なのは、持続的(永久的)に発作を取ってあげることのはずです。出し惜しみはいけません。

>>現状:1度、喘鳴がひどく、離れていてもはっきり聞き取れることがありました。朝は、動作が鈍いことが、多いようですが、午後は活発に遊びまわっています。

→朝方から午前中にかけて調子が悪いのは喘息の特徴です。午後は、ホルモンの関係もあって、調子が良くなりますが、それで身体を動かし過ぎてしまい、夜から朝方にかけてまた発作を起こすことはしばしばですね。

>>(1)小児喘息と成人喘息に違いはありますか?

→これは一概には申し上げられません。難しい問題です。

発症原因も、小児の場合は、アトピー(アレルギー)型が多いとされています。成人喘息でも、小児喘息を引きずって来た方と違って、大人になって初めて発症された方では、感染型(明らかなアレルギー素因が見あたらず、風邪を拗らせては喘息発作を引き起こすタイプ)が多いようです。

成人の喘息では、気管支炎症が病気の本態である(従って吸入ステロイドが良く効く)との見解が一般的であるのに対し、小児喘息では、必ずしもそれが本態であるかどうかまだ不明な点が多いというのが、通説になっているようです。しかし、私は、中等から重症の喘息では、吸入ステロイドが明らかに有効ですので、喘息の本態はやはり気管支の炎症であるという考えを持っております。従って、小児喘息も成人喘息も基本的には同じであると考えています。

小児喘息は大人になれば治る、とよく言われていますが、それは単に発作がないと言うだけで、小児喘息経験者によく話しを聞いてみますと、程度の差こそあれ、何らかの形で喘息を引きずっているのが、現実のようです。

>>(2)小児喘息に吸入ステロイドの適用は可能ですか? また、軽症の喘息でも適用可能でしょうか?

これは、私のホームページの至る所で触れている問題です。私(を含めて多くの内科医、一部の小児科医)は、可能であると考えております。軽症でもというより、軽症のうちにこそ吸入ステロイドは使用すべきであると思います。しかし、これは、小児科の先生にはなかなか受け入れてもらえません。私が、このホームページを立ち上げた大きな理由がそこにあります。

色々な先生の話しを聞かれて、親が最終的には判断を下すべきであると思います。

>>(3)病状の把握にピークフローメーターは必要だと思いますが、一般には入手は難しいでしょうか?

小学3年生ならもう十分適応がありますね。入手はさほど困難ではありません。病院の購買部や最近では調剤薬局などに相談してみれば、入手は簡単です。どうしても入手できない場合は、医療器材メーカーをお教えしますので、遠慮なくおっしゃって下さい。

>>(4)水泳教室へ通っていますが、続けさせても良いでしょうか?

私は、症状だけのメールからは、この種の質問の即答は避けるようにしております。症状だけから病気を判断すると、しばしば間違い(過小評価)が起きやすいからです。ピークフロー値やその変動をお聞かせ頂ければ、さらにコメントできるかもしれません。

しかし、一般的なことを述べさせてもらえれば、発作が頻発しているうちは運動は避けるべきであると思います。喘息の方は、普通にしているだけで、十分からだが鍛えられているのに、さらに水泳で身体を鍛える必要はないというのが私の考えです。喘息児が、体力がないと思われるのは、単に気管支が細くなっている(これは治療によって良くなる)からであって、筋肉が貧弱なためではありません。どんなに健康な人間でも、気管支が細くなれば、運動で息が切れてしまい、体力がなく見えてしまうものです。まず喘息を良くする、そして次に身体を鍛える、これが私の考えです。

最後に、現在の小児科の先生は、お子さまが生まれた時からお世話になった先生であることは、認めますが、やはり一度喘息専門の先生に診ていただくべきであると思います。ただし、喘息専門医なら吸入ステロイドを使ってくれるかはまた別問題ですが、少なくとも発作が頻発している状態なら、吸入ステロイドを処方してくれるのではないでしょうか?

以上、あまり参考にならなかったかもしれませんが、この辺で失礼いたします。

では。