(1)私の喘息でも吸入ステロイドで根本治療ができますか?

033】32歳男性(中近東在住)の方から

<質問>

初めまして。

現在、比較的軽症の喘息もちですが、先生のホームページを拝見させていただいて、実はショックでもあったのですが、ある程度、喘息に対する心構えができましたので、よい勉強になりました。やっかいな病気をしょいこんでしまいましたが、症状がないときも炎症はあるのだと意識し、無理をせず気を付けていきたいと思います。現在、私は中近東のある国に住んでおりまして、十分な情報が入手しにくい状況でしたので大変助かりました。どうもありがとうございました。

私は、元々、小児喘息だったことや、大学生の頃食べるものもちゃんと食べずに遊び続けた結果、一度発作が出たこともあり、体調がある水準以下になれば再発するという覚悟はしておりました。ただ、小児喘息は2-3日で、大学の時は1日で症状が治まっていたのですが、今回は症状が1カ月ほど続いたこと、32才という年齢で再発したことから、正直驚いております。原因はやはり無理をしたことにあり、風邪をひき熱を出しても仕事で徹夜や走り回ることを続けた結果、全身の倦怠感が3カ月続いた後、喘息の発作が出てしまいました。

今回初めて症状が長引いていることもあり、今後、吸入ステロイド剤を利用することを検討しておりますが、どうも判らないところがありますので、お伺いさせていただいてよろしいでしょうか。それは、ZENSOKU WEBで吸入ステロイド剤が根本治療を行う薬剤のように書いてあるように思えたのですが、私もそこまで期待してよいのでしょうか。比較的軽度の段階において、吸入ステロイド剤を使用すれば根本的に治癒することはあるのでしょうか。それとも単なる副作用がほとんどない強力な抗炎症剤であり、症状緩和策なのでしょうか。

現在、テオドール100を朝に一錠、夜に1錠を基本として、少し調子が悪くなったら1日4錠を上限にして使用しています。1日2錠では中学生レベルの量だと聞いていますが、仕事もかなり早く切り上げ、家に帰ってごろごろする生活をしておりますので、普通は2錠で特に問題ありません。

メールを書きながら自分で気がつきましたが、今私は今後どういう治療の方向に進むべきなのかわからなくて困っているのです。軽度の今からステロイドを活用すべきなのか、この程度の投薬ですんでいるのなら様子を見て投薬をやめ、運動などの健康増進に進むべきなのか。喘息は普通にしていては治らないという認識がある中では、投薬の中止に不安感が伴っております。

勝手なことばかり、書き連ねて申し訳ありません。

<応答>

初めまして。

中近東にお住まいなのですね。私のホームページが、海外の日本人のお役に立てているのは、非常に光栄です。

小児喘息の既往があるようなので、今回の症状はやはり喘息の悪化のようですね。ただし、一度レントゲン検査、肺機能検査、採血検査などを受けた方が良いと思います。喘息以外の病気を除外する必要があるからです。

以下のコメントは、現在のあなたの症状が喘息であると仮定しての場合です。

>>ZENSOKU WEBで吸入ステロイド剤が根本治療を行う薬剤のように書いてあるように思えたのですが、私もそこまで期待してよいのでしょうか。比較的軽度の段階において、吸入ステロイド剤を使用すれば根本的に治癒することはあるのでしょうか。それとも単なる副作用がほとんどない強力な抗炎症剤であり、症状緩和策なのでしょうか。

→私のホームページでも述べていますが、「根本治療」と「完治」はまったく別です。吸入ステロイドを「根本治療」としているのは、気管支拡張剤による「対症療法」と区別している意味があります。吸入ステロイドは言ってみれば、喘息という病気の本態(気道炎症)に作用する薬剤であると言えるでしょう。しかし、吸入ステロイドを長く吸っていれば、喘息は治るか(完治するか)と聞かれればそれはノーです。完全に気道炎症が取れたのち、もし抗原と完全に遮断された環境(例えば、無菌室のような)に生きて行くことができれば、恐らく喘息は再発しないでしょう。しかし、人間は外界との接触の中で生きて行くわけですから、これは不可能なことです。従って、吸入ステロイドでほぼ完全に気道の炎症が取れても、吸入を中止すれば、またいつかは気道炎症は再燃し発作を起こしてしまうのが現実なのです。

>>現在、テオドール100を朝に1錠、夜に1錠を基本として、少し調子が悪くなったら1日4錠を上限にして使用しています。1日2錠では中学生レベルの量だと聞いていますが、仕事もかなり早く切り上げ、家に帰ってごろごろする生活をしておりますので、普通は2錠で特に問題ありません。

→これは、日本にいらしたときの医師からの指示でしたか? あるいは、そちらの医師からの指示でしたか? はたまた、小児喘息の頃からの治療の延長でそちらで薬剤を購入されたのでしょうか? 1日4錠(400mg)は成人常用量ですから、問題はないと思いますが、テオドールは、効果が得られる血中濃度と副作用の出る血中濃度はきわめて近いので、やはり医師の指示で投与された方が宜しいと思います。

>>メールを書きながら自分で気がつきましたが、今私は今後どういう治療の方向に進むべきなのかわからなくて困っているのです。軽度の今からステロイドを活用すべきなのか、この程度の投薬ですんでいるのなら様子を見て投薬をやめ、運動などの健康増進に進むべきなのか。喘息は普通にしていては治らないという認識がある中では、投薬の中止に不安感が伴っております。

→この点は、意見の分かれるところですが、私は軽症だからこそ吸入ステロイドを使うべきだと考えています。日本のガイドラインでも、そのような動きになってきています。軽症のうちはテオドールや発作止め吸入の屯用で様子を見、ひどくなってから吸入ステロイドを使うという意見もありますが、私の経験では、こうした対症療法の場合ほとんどの方が、結局は無理をして重症化してしまうようです。それなら、早いうち(気道炎症が軽いうち)に芽を摘んでしまった方がいいのではないかと思います。私もそうでした。咳だけの軽いうちに吸入ステロイドをある一定期間吸いましたら、その後は、抗原(ラット)回避だけで、一切発作はおきなくなりました。症状の軽いうちに内服ステロイドのような長期使用で副作用の出る薬剤なら話は別ですが、吸入ステロイドは正しく吸えば長く吸っても副作用のない薬です。軽症のうちから吸って悪い理由はどこにもありません。重症化したときのために吸入ステロイドをとっておくのは、自分の状態が悪化するのを黙って見ているようなものです。

では、お大事に。


<追加メール1>

どうもお返事ありがとうございます。

>>小児喘息の既往があるようなので、今回の症状はやはり喘息の悪化のようですね。ただし、一度レントゲン検査、肺機能検査、採血検査などを受けた方が良いと思います。

この3月に所用があり日本に戻りました際に、次回いつ帰国する機会があるか判らないことから、念のためにご指示頂いたような検査を一通り受けて参りました。そしてこの時に、喘息ということで、テオドール、ホクナリン、サルタノールを頂いて参りました。ですが、この時は、多くの薬を貰いながらも、10年以上も前の経験から、数日で治るだろうと高を括っておりました。

その時の先生は、1日量(テオドール100x2錠x2回、ホクナリンx1錠x2回、サルタノールは随時)を指示した上で様子を見て投薬量を減らしていってもかまわないとおっしゃられました。これらの薬剤の中ではテオドールが一番副作用が少ない薬だとおっしゃられていたと理解しています。このためホクナリンはしばらくして使用を中止しました。現在は、こちらで無水テオフィリンを購入して服用しております。

ここ数日、テォフィリンを一日100 mgまで減らしていますが、これ以上減らすと必ず、せき、たんが出て息苦しくなってしまいます。着実に投薬量が減っているとは思うものの、いつまでも治らないことに、しばしば不安を感じております。ちなみに、一度一回に無水テオフィリンを200 mgのんだところ、テオドールでは経験していない吐き気を感じたことから、血中濃度の上がり方がより激しいのかと推測しています。

>>この点は、意見の分かれるところですが、私は軽症だからこそ吸入ステロイドを使うべきだと考えています。日本のガイドラインでも、そのような動きになってきています。

先生にメールをお送りしてから、先生のホームページを何度か読み返し、やはり吸入ステロイド剤を試してみようと、先日ベコタイド50を処方していただきました。とは言え、強力な薬剤には未知の悪影響があるかも知れないという不安は払拭できないのが正直なところです。このため、取りあえず2週間に期間を限定して使用してみようかと考えております。そこでお伺いしたいのですが、説明書きでは一日あたり2吸入x4回とありますが、軽症の場合でもこの量は必要でしょうか。例えば、スペーサーなしの非効率な吸入で一日4吸入は少なすぎるでしょうか。なお、スペーサーとピークフローメーターはまだ購入しておりませんが、今後探すつもりです。ちなみに日本では大体幾らくらいで購入できるものでしょうか。

では、失礼いたします。

<追加応答1>

メール届きました。いくつかコメントさせて下さい。

>>テオドールが一番副作用が少ない薬だとおっしゃられていたと理解しています。

確かに、何の副作用も出ない方には安全な薬ですね。しかし、最初に試す場合は、どのような副作用が出るかわからないため、使いにくい薬であることは確かです。動悸・心戦や胃腸障害が有名です。他の薬剤との併用によって、血中濃度が影響を受けやすい欠点もあります。

>>取りあえず2週間に期間を限定して使用してみようかと考えております。

これは良い考えですね。私のホームページの「特集・吸入療法」に出ていた方法ですね。ただし、無効な吸入操作では、たとえ2週間で効果が出ないからと見切りをつけるのは早すぎます。正しい吸入をしっかり理解して下さいね。

>>そこでお伺いしたいのですが、説明書きでは1日あたり2吸入x4回とありますが、軽症の場合でもこの量は必要でしょうか。例えば、スペーサーなしの非効率な吸入で1日4吸入は少なすぎるでしょうか。

この量は標準的な量です。スペーサー無しでは、オープン・マウス法と言って少し手技が難しいですが、合計1日8吸入であれば、少ないと言うことはないでしょう。スペーサーが入手できるまでは、まずオープン・マウス法で試してみて、それで効果が出ればいいですが、出ない場合は早めにスペーサーを入手して吸入方法を変更してみるのが宜しいでしょう。

>>スペーサーとピークフローメーターはまだ購入しておりませんが、今後探すつもりです。ちなみに日本では大体幾らくらいで購入できるものでしょうか。

スペーサーは、ボルマチック・ハード(1個1000円)を除いては、ほとんど病院で無料で入手できます。ピークフロー値は、4000円前後と考えてようでしょう。

吸入ステロイドが良い効果を発揮することを期待しております。

では。


(2)短期プレドニン増量と吸入ステロイドの増加とではどちらが良いですか?
   IgE抗体が増え続けると吸入ステロイド量も増え続けませんか?

033】32歳男性(中近東在住)の方から

<追加質問2>

随分ごぶさたしておりますが、いかがお過ごしでしょうか。

あの当時、私は喘息について相談する先生がおらず、大変不安を感じておりました。アラブ人の先生はきちんと説明してくれずどんどん薬だけを出してきますし、日本人医師も一人いらっしゃるのですが、喘息治療は詳しくないとおっしゃられ(正直にそう言って頂いて有り難く思っておりますが)、ご相談しても要領を得ないという状況でした。不安にかられインターネットで情報を探す中で先生のサイトを発見し、サイトの内容を何度も読み直して、ご相談のメールを出させて頂きました。その内容と言えばどちらかと言うと、自分に踏ん切りをつけるために質問させて頂いたという感じでしたが、振り返ってみて、先生のサイトで情報を得ることができて本当に良かったなと大変感謝しております。

と申しますのは、前回アドバイスを頂き、早速ピークフローメーター(フェラリス社製)を購入して測定してみたところ、朝400、午後450というかなり低い数字がでて愕然としたことにあります。私自身は軽度の喘息と認識しており、なんだかんだ言っても、長期にわたることなくなんとかなるだろうと信じ込んでいましたが、先生のサイトにかかれている皆さんの経験を見てみれば、100%健康な状態(炎症の無い状態)からはほど遠いということを直視しなければならなくなったのです。先生のサイトを見ずにピークフローメーターの存在を知らなかったら、もっと体調が悪くなるまでほったらかしにしていたのではないかと思うのです。その意味で救われたなと正直感じております。

それ以降、テオフィリン(錠剤)は吐き気が出たのでやめ、病院で貰ったコンビベント(吸入剤:サルブタノールと抗コリン剤の合剤)を一日6パフとベコタイド50一日8パフに移行しました。コンビベントの方は、PFと息ぐるしさを見ながら順次減らしてきましたが、ベコタイド50の方は今に至るまで8パフを継続しております。その結果、最近は一回だけ600がでた他は、調子の良いときで朝も午後も550位となり、悪いと朝450の午後550という状況で少し足踏みかなと感じております。現在ではコンビベントはPFが450前後に落ちた場合に1ないし2パフという使用の目安を設け、概ね一日1-2パフのみとなっております。

せき、たんはまずまったく出なくなりましたが、まだ朝のPFが低いときが多いこと、たまに何かの折りに450位まで下がることがあること、すぐ疲れてしまうことからまだ炎症が残っていると理解しています。なかなか簡単には楽になりませんが、幸いにして、こういう国にいると日本の目が届かないと言うこともあり、随分休養重視の生活が送れており助かっております。しかしながら、後一年程度で任期が終わり帰国する予定であり、この現状ではとても日本で普通に仕事できる体力はなく、将来に対する危機感を募らせております。

そこで、実はこれから一週間だけ経口ステロイドを利用して炎症の水準をより低いところに抑え込み、後はベコタイドのみで維持していくということはどうかと考えております。無論、その際にはアラブ人医師と相談して(説得して)、彼の意見も聞くつもりでおりますが、先生のお考えもお伺いできればと思います。もし行うとすれば経口薬と点滴ではどちらがよいと考えられますか? やはり副作用もあるのでこの程度ではやめた方がよいと考えられますか? 吸入ステロイドの増量の方がよいと考えられますか? 私は短期間で十分効果のある投薬を通じて閾値を越えることで、安定した状態、仕事のできる体、若干の無理ならできる体になりたいと願っております。

また話は変わりますが、減感作療法を行われている日本人の先生の著作の中で、「喘息患者がダニ・ホコリをアレルゲンとしている場合常にアレルゲンと接しているので、IgE抗体は常に増加しつづける。だからステロイド等の対処療法では遅かれ早かれいつか悪化して再発する。長期的に完治するには減感作療法しかない」という主旨のことを書かれていました(「減感作療法でぜんそくは治る」久我山病院アレルギー科部長、長屋宏。講談社)。このIgE抗体が増え続けるというのは本当でしょうか? この説でいくと長期的にはどんどん吸入ステロイドの量を増やしていく必要が生じることになるのですが…。なお、この先生も減感作療法とステロイド療法を必ず並行して行われている様です。

以上、長くなりましたがご参考意見をお伺い頂ければと思いますので、何卒よろしく御願い申し上げます。

<追加応答2>

ご無沙汰しております。

私のアドバイスが少しでもお役に立てたようで何よりです。

>>ベコタイド50の方は今に至るまで8パフを継続しております。その結果、最近は一回だけ600がでた他は調子の良いときで朝も午後も550位となり、悪いと朝450の午後550という状況で少し足踏みかなと感じております。現在ではコンビベントはPFが450前後に落ちた場合に1ないし2パフという使用の目安を設け、概ね一日1-2パフのみとなっております。

→まずまずですね。ところで、そちらでは、フルチカゾンブデソニドが入手できるのではないでしょうか? もし可能ならぜひそちらをお勧めします。

>>せき、たんはまずまったく出なくなりましたが、まだ朝のPFが低いときが多いこと、たまに何かの折りに450位まで下がることがあること、すぐ疲れてしまうことからまだ炎症が残っていると理解しています。なかなか簡単には楽になりませんが、幸いにして、こういう国にいると日本の目が届かないと言うこともあり、随分休養重視の生活が送れており助かっております。しかしながら、後一年程度で任期が終わり帰国する予定であり、この現状ではとても日本で普通に仕事できる体力はなく、将来に対する危機感を募らせております。

→“まだ炎症が残っている”ことが自覚できるようになれば、もう喘息克服は近いと言っても過言ではありません。せっかくの海外生活ですから、時間があるときは大いに身体を休めて、気管支の炎症を取れるだけ取って帰国すべきだと思います。日本にいると、ひどくなった喘息を治すのは大変ですが、良くなった喘息を維持していくのは比較的優しいかもしれません。それまでに自己管理法を修得しておくべきですね。

>>実はこれから一週間だけ経口ステロイドを利用して炎症の水準をより低いところに抑え込み、後はベコタイドのみで維持していくということはどうかと考えております。無論、その際にはアラブ人医師と相談して(説得して)、彼の意見も聞くつもりでおりますが、先生のお考えもお伺いできればと思います。

→ぜひやってみて下さい。自己ベストを知ることも重要ですし、自己ベストが少しでもあがればその状態を維持することはより優しくなります。吸入ステロイドが奥まで到達するようになりますし、また少し悪化してもピークフロー値をモニターしていれば、未然にそれ以上の悪化を防止できるからです。

>>もし行うとすれば経口薬と点滴ではどちらがよいと考えられますか?

→できれば点滴が良いと思います。しかし、入院でできればいいのですが、そうでないとその都度病院へ通わなくてはいけませんから、それが負担になることがあります。その意味では、経口薬の方が通院の手間なく投与できるので簡単ですね。一長一短ですから、自分に会う方法でトライしてみて下さい。

>>やはり副作用もあるのでこの程度ではやめた方がよいと考えられますか?

→いえ、ぜひ行ってみて下さい。副作用は、10日前後であれば、急性の胃腸障害などがなければ心配いりません。ただし、できるだけ安静にして下さいね。

>>吸入ステロイドの増量の方がよいと考えられますか?

→これでも良いのですが、ステロイドを全身投与できるならそちらの方が絶対良いです。普通は、それが叶わない方に吸入ステロイドの増量を推薦しておりますので…。

>>減感作療法を行われている日本人の先生の著作の中で、「喘息患者がダニ・ホコリをアレルゲンとしている場合常にアレルゲンと接しているので、IgE抗体は常に増加しつづける。だからステロイド等の対処療法では遅かれ早かれいつか悪化して再発する。長期的に完治するには減感作療法しかない」という主旨のことを書かれていました(「減感作療法でぜんそくは治る」久我山病院アレルギー科部長、長屋宏。講談社。このIgE抗体が増え続けるというのは本当でしょうか?

日本人全体としてIgE抗体が増えて行くという傾向はあると思いますが、個人のレベルで増え続けるかどうかは疑問ですね。このIgE抗体に関しては色々な誤解が多く、IgE抗体がまったく高くなくてもひどい喘息の方もおりますし、また、IgE抗体が高くて喘息になったと思われる方でも、吸入ステロイドなどですっかり良くなってから再検査しても、まったくIgE抗体量は変わらないことがしばしばです。IgE抗体は、その方がアレルギー素因があることは示してくれていますが、喘息の増悪とは無関係です。逆に、これが喘息増悪の指標になるならこれはすごい発見です。

少なくとも減感作療法に関しては、学会などで確立された評価はありません。良くなった方ばかりが紹介されて、不幸な方は全然表に出てこないのが実状です。しかも、良くなったという方でも、発作がしばらくないだけで、気管支の炎症は取れていないことがよくあり、風邪を引いて発作を起こすという悲惨なことがあります。また、ステロイドが悪玉にされたために、クローズアップされた療法のひとつといっても過言ではないでしょう。

抗原暴露を減らす努力は継続的に必要です。また、それ以外の非特異的刺激を避けることも必要です。しかし、気管支の炎症がほぼ完全に取れますと、多少の抗原に暴露されても喘息は悪化しないものですし、仮に悪化しても早めに手を打てば少なくとも発作は予防できます。残念ですが、いずれにしても楽して喘息を克服する方法はないようですね。

このホームページのリンクから「熊虎の足跡」へ飛んでみて下さい。その中の「ピークフロー値レベルアップ作戦」の中で減感作療法で症状が悪化している状況が示されています。

>>この説でいくと長期的にはどんどん吸入ステロイドの量を増やしていく必要が生じることになるのですが…。

→吸入ステロイドがない時期は、全身性ステロイドではこのようなことがありました。しかし、吸入ステロイドが出始めてからは、このようなことはありません。仮に一時的に増加しても良くなればまた元に戻すことができます。むしろしっかり良くすることで薬はより減らすことができます。まず、丈夫な気管支にすることですね。

では、良い結果がでますことをお祈りしています。