(1)私のピークフローの値はどこがベストなのでしょうか?
【037】43歳男性の方から
<質問>
初めまして。
私の喘息は最近は調子もよく、現在服用している経口のプレドニン(月に30錠前後)を無くす努力をしています。
ところで最近疑問に思うことがあるので、ピークフローの値はどこがベストなのかと考えることが、多いのです。
いろんな文献で、体重と身長から、平均的な数字はあると書いたものがありました。しかしながら私の場合、尺で計ったように420〜440の間なのです。これ以上ピークフローは上がりません。入院治療中でも500〜550がピークだと思います。
まだ自分の気管支の炎症はまだあると思います。今後ピークフローをもっと向上するような治療が必要なのでしょうか? 日常生活にはなにも問題はありませんから、このまま吸入ステロイド治療を続けようと思っていますが、点滴などの治療で炎症の状態を安定した方がよいのでしょうか?
あと喘息は治らない病気とありますが、ある医療機関で、喘息は絶対に治るとある本があります。その一説に人間には、ステロイドを自分コントロールする部分あるその部分が著しく低下しているので、その治療こそ喘息を根治することだとありました。
結局は、吸入ステロイドにしても、喘息の治療にはステロイドしかなのかと思います。それなら、なぜ人の治癒力を高めるような薬が開発されないのかと思います。
まことに勝手な質問ですみません。
<応答>
こんにちは。
>>私の喘息は最近は調子もよく、現在服用している経口のプレドニン(月に30錠前後)を無くす努力をしています。
→本当に安定しているようですね。症状は何もないのですね? ピークフロー値の自己ベストが、550としますと現在の400前後という値は70から80%付近を維持しているということになりますね。
>>ピークフローの値はどこがベストなのかと考えることが、多いのです。いろんな文献で、体重と身長から、平均的な数字はあると書いたものがありました。しかしながら私の場合、尺で計ったように420〜440の間なのです。これ以上ピークフローは上がりません。入院治療中でも500〜550がピークだと思います。
→このような疑問を抱くことは非常に重要です。少なくとも過去に550吹けたわけですから、それが真のベスト値かどうかはわかりません(私はもっと上があると思います)が、少なくともあなたの気管支の潜在的能力としては最低でもそのくらいあるということだけは確かですね。
>>まだ気管支の炎症はまだあると思います。今後ピークフローをもっと向上するような、治療が必要なのでしょうか? 日常生活には、なにも問題はありませんから、このまま吸入ステロイド治療を続けるようと思っていますが、点滴などの治療で炎症の状態を安定した方がよいのでしょうか?
→550吹けたことのある方が、400前後しか吹けないとしたら、程度は軽くてもそれはやはり気管支に炎症が残っている(あるいは慢性的に痰が絡んでこびりついている)ということに他なりません。
「日常生活には何も問題はない」とのことですが、これは単に「発作がない」ということではありませんか? 少し動いたりすると息が切れるので、無意識に制限していることはありませんか? もし、本当に何も症状がないなら、無理に500以上に上げることはしなくてもよいと思います。
ただし、長い間喘息を患ってきた方は、低酸素や呼吸困難に対して鈍感になっていることがあり、自分では苦しいとは思わなくても、気管支にかなり炎症が残っていることはよくありますので、あなたの自覚症状を素直には信じることができないという事情があることは事実ですが…(決して疑っているわけではありませんので悪しからず)。この点は、実際に600くらい吹けるようになってみないとわからないことです。必ず600以上吹けるようになるかも現時点ではわからないことですが…。
また、日常生活に問題がないとしても、プレドニンを含め現在内服している薬剤をどうしても減らしたいという願望があるなら、私は現在のレベルでは少し危険を伴うかな?という気がしますので、もう少し高いレベルで安定した方がいいでしょう。しかし、現在のレベルでも吸入ステロイドをしっかり行い、ピークフロー値の変動に十分留意しながらなら、ある程度は減量は可能のような気がします。減量によって、症状に変化がなくても、明らかにピークフロー値が減少するようならすぐに元に内服薬を戻すこともできるでしょう。ただ、イエローゾーン内にあると、「薬を減らした」という心理的な不安から発作を起こすこともありますので、十分注意しなければなりませんね。気道炎症がない理想状態に達するとこのような現象は起こりません。
この薬剤の増減に関しては、最終的には主治医とよく相談してから決めて下さいね。
また、今、ピークフロー値を上げる努力をするかどうかも難しい問題です。まず、主治医が十分な内服ステロイドを処方してくれるかどうかです。また、仮に処方してくれたとしても、単にステロイド内服を増量すれば、どんな方でもピークフロー値が100くらい上がるかといえば、それは単純には言い切れないからです。その際、最も大きな問題は日常生活上の安静です。ステロイド増量を1〜2週間は試みる価値はあるとは思いますが、私の経験では、普通の日常生活やストレスの多い仕事をしながらでは、中途半端な結果に終わってしまうことが多いようです。このホームページの「寄稿集(02)」の方や「症例紹介(3)」の方のように、十分な一定期間の“安静”(単に仕事をしないというだけではなく、入院に匹敵するような何もしない安静でなくてはいけません)が保てないと難しいのです。
もし、経口ステロイド増量が難しい場合でも、一定期間安静が保持できるなら、その間に吸入ステロイドを増量するのも一つの方法です。これでも結構ピークフロー値は上昇するものです。こちらならできると思いますので、夏休みなどにトライしてみては如何ですか?
経口ステロイドにしても吸入ステロイドにしても、「薬を減らすために一時的に薬を増量する」−これが私の考えです。逆説的な考えですが、決して矛盾してはいないのです。その根底には、気道炎症をできるだけ除去し、副作用のない吸入ステロイドを継続的に効かすことができる状態へ持って行く、という考えがあるからです。吸入ステロイドは、気管支の炎症が取れれば取れるほど、つまり気管支が広がれば広がるほど、予防効果を発揮します。今、あなたは吸入ステロイドを一生懸命吸っているとは思いますが、気管支炎症が残存しているために、吸入ステロイドの末梢までの到達が阻止されているのです。そして、その炎症は普段の刺激の多い日常生活を送っている状態ではなかなか除去することは難しいのです。多くの方は、吸入ステロイドを継続することでその状態が悪化するのを防止しているに過ぎないのです。私は、これを「守りの治療」と呼んでいます。
もしこの点を理解できましたら、いつかトライしてみて下さい。
>>喘息は治らない病気とありますが、ある医療機関で、喘息は絶対に治るとある本があります。その一説に人間には、ステロイドを自分コントロールする部分あるその部分が著しく低下しているので、その治療こそ喘息を根治することだとありました。
→もし、宜しければ、その本の出所を教えていただけませんか?
私も以前、ある民間の研究所が、高価な「整体療法の器具」を売りつけるためにこのような情報を流している、という噂を聞いたことがあります。
確かに、気管支喘息にはステロイドがよく効きます。そして、人間の身体には、ステロイドと同じ働きをする副腎皮質ホルモン(コーチゾル)が存在しています。しかし、喘息患者ではこの内因性の副腎皮質ホルモンが不足しているという事実はないのです。実際に、副腎皮質ホルモンが不足するアジソン病という病気がありますが、この患者に喘息が多いかというとそのような事実はありません。また、喘息で、副腎皮質ホルモンが不足するからといって、それがたくさん作られるようになると、全身を巡ってしまうので、ステロイドと同じようないわゆる副作用がでてしまうのです。そのような副腎皮質ホルモンが過剰になる病気にクッシング症候群があります。生体はそのような状態にならないように副腎皮質ホルモンの量をうまくコントロールしているのです。色々な病気は、このような生体バランスが崩れて起こってきますから、不足するものを薬として補うのが最も良いわけです。吸入ステロイドのように全身副作用のない局所補充療法は理にかなっているわけです。
この民間研究所の情報は、私の加入しているニフティー・サーブでも問題になりました。十分気をつけて下さいね。
>>結局は、吸入ステロイドにしても、喘息の治療にはステロイドしかなのかと思います。それなら、なぜ人の治癒力を高めるような薬が開発されないのかと思います。
→まったくおっしゃるとおりですね。しかし、開発されないのではなく、色々試みられているのですが、うまく行かないのだと思います。また、そのような薬が発見されたとしても、世に出るまでには相当時間がかかります。
>>まことに勝手な質問ですみません。
→そんなことはありません。とてもいい点をついています。
では。
<追加メール1>
ピークフローの改善のためにの治療は必要かと言うよりも、自己判断ではまだ気管支の炎症がまだ存在していると思います。仕事のなかでやはり階段の昇り降りなど息切れなどが症状としてあります。また、痰の発生も多く、単に発作はでない“安定”にすぎないと思われます。
現在の主治医は、結構喘息の治療に積極的で、プレドニンなどの増量も、話会いで可能だと思います。またベコタイドの吸入ステロイドも2000マイクログラムなら問題ないとの判断で2週間で5本まで増量してくれるぐらいです。
もちろん治療の経過は、グラフにまとめて主治医と話し合いで決めています。現在の主治医は喘息の患者を沢山みておられ、正しい姿で指導してくれます。私が関心したのは、やはり聴診器で、気管支の状態を把握されていることです。季節性喘息で、気管支の締まりがあると、ピークフローが良くても点滴したことがあり、自己判断もあてにならないと思いました。点滴での治療は積極的で、症状しだいでは、3日連続で続けることもありました。また定期的にレントンゲンや血液検査をして喘息の炎症状態がどの程度であるかの説明もしてくれます。
吸入ステロイドも有効なものだと考えておらるみたいです。1年近くなるで、これからがもっと安定するように、もって行くのがたいへんだと思っています。
今現在テーオドールなどの気管支拡張剤は処方していません。β刺激剤での吸入でアロテックは使ってはいます。これは、主治医の考えで、気管支拡張剤は、使わなくて済むならそれの方が良いと言っていました。
ハッキリしているのは、根本治療はステロイドしかないと言っておられ、その考えが強いようです。私自身もテオドールのような気管支拡張剤は、どうも体にあっていないようようで、ピークフローもそれほど向上も見られません。以前ピークフローが、550近くあったときに倒れこんだことがあります。
こときは、私の喘息にとって最大の危機だったと思いました。どーもテオドールが原因で、悪心から、精神障害みたなことになったと思っております。その時から、テオドールはやめました。
前回の先生からの回答で、喘息にはやはり安静が必要だと思いました。1年前に転宅したのも、仕事と通勤のとの悪循環を切りたかったです。1時間半の通勤時間とほぼ毎日の近くのクリニックで、点滴、それで家に帰るのが、ほぼ9時前後で、翌日5:30には、出勤と、喘息状態も最悪でしたから、夜も寝られませんでした。
こちらに変わってからは、通勤15分(自転車)で、病院に行って帰っても、8:00に帰ってこれます。翌日も7:20分に出勤できますから、生活が変わりました。
転地よるもので良くなったでなく、生活環境が変わった判断しています。
<追加応答1>
メールありがとうございます。
あなたの主治医は、恐らく喘息治療では有名な先生なのでしょうね。基本的な考え方、治療方針など、私個人としてもすべて賛同できます。私と同じ様な治療を展開されている先生であると思いました。
>>ピークフローの改善のためにの治療は必要かと言うよりも、自己判断ではまだ気管支の炎症がまだ存在していると思います。仕事のなかでやはり階段の昇り降りなど息切れなどが症状としてあります。また、痰の発生も多く、単に発作はでない“安定”にすぎないと思われます。
→であれば、積極的に気道炎症を取るべきでしょうね。
>>現在の主治医は、結構喘息の治療に積極的で、プレドニンなどの増量も、話会いで可能だと思います。またベコタイドの吸入ステロイドも2,000マイクログラムなら問題ないとの判断で2週間で5本まで増量してくれるぐらいです。
→いいですね。ちなみに私は、1日3,200から4,000マイクログラムという経験があります。しかし、最近では保健の制限があってできません。従って、一時的に経口ステロイドの力を借りなくてはならなくなったわけです。
>>私が関心したのは、やはり聴診器で、気管支の状態を把握されていることです。季節性喘息で、気管支の締まりがあると、ピークフローが良くても、点滴したことがあり、自己判断もあてにならないと思いました。点滴での治療は積極的で、症状しだいでは、3日連続で続けることもありました。
→まったく同感です。私も同じ様な治療をしています。
>>今現在テーオドールなどの気管支拡張剤は処方していません。β刺激剤での吸入でアロテックは使ってはいます。これは、主治医の考えで、気管支拡張剤は、使わなくて済むならそれの方が良いと言っていました。
→これもまったく同感です。このような考えの先生がおられることは私にとっては救いです。
>>ハッキリしているのは、根本治療はステロイドしかないと言っておられ、その考えが強いようです。私自身もテオドールのような気管支拡張剤は、どうも体にあっていないようようで、ピークフローもそれほど向上も見られません。
→テオドールでピークフロー値が改善するとすれば発作を頻繁に起こしている状態の悪いときだけです。テオドールだけでは、気道炎症は除去できません。従ってピークフロー値も上昇しません。
>>以前ピークフローが、550近くあったときに倒れこんだことがあります。このときは、私の喘息にとって最大の危機だったと思いました。どーもテオドールが原因で、悪心から、精神障害みたなことになったと思っております。その時から、テオドールはやめました。
→ピークフロー値550で倒れたのは、喘息発作でしたか? そうでなければいいのですが、もしそうだとすると、あなたのピークフロー値は700以上でないと駄目ですね。
>>前回の先生からの回答で、喘息にはやはり安静が必要だと思いました。…(略)…転地よるもので良くなったでなく、生活環境が変わった判断しています。
→まったくそのとおりであると私も思います。
基本的に、あなたの場合、すでに十分な喘息の知識をおもちですね。後は、如何に実行できるかだけにかかっていると思います。
ピークフロー値700目指して、頑張って下さいね。
では。