(1)人前で吸入するのがいやでした。
【041】19歳女性(大学生)から
<質問>
先生、こんにちわ。はじめまして。
先日、インターネットで先生のホームページをよみ、偶然50の倍数でアクセスしましたので寄稿集を頂きました。
私は大学1年生、19歳、女です。
2歳ではじめて発作が起こったと聞いています。その後、中2の夏まで、インタール、メプチンエアー、スピロペント、テオドールで治療していました。子供の頃は、主治医の先生も親もまわりの大人たちみんなが「大人になれば治る。思春期が勝負時」などと言っていました。体を鍛えるために運動しなさい、と言われて朝ジョギングやなわとびをして発作が出て、メプチンを吸ったりスピロペントを飲んだり、それでもダメなときは点滴をしに行ったり、などという生活をしていました。乾布摩擦をしたり、腹式呼吸の練習をしたり「これを続けていれば大人になれば治る」と言われ「インタールはすごくいいクスリだから」といわれて風邪で発作がおきたりしながら、同じような毎日をすごしていました。心の中では「大人になったら治るんだから」と思ったり「でも大人っていつなんだろう?」と思ったり。いま、考えるとなんだかけなげで、自分でも笑えますね。
私は年に5、6回、夜間に点滴をうけにいくような発作がありましたが、入院はしたことがありません。喘息で悲しい思いをしたのは、鬼ごっこで鬼になっても苦しくて誰もつかまえることができずその場がしらけてしまうこと(?、笑)や修学旅行の枕なげで発作がおきたことでしょうか。あ!あと、私が子供の頃は「喘息なのは母親のせい」みたいなことがいわれていて、普段はとても仲良しな母と(父型の)祖母とが発作の度に言い争っているのをみるのがすごくつらかったです。
月2回の喘息外来では くすりのこと(主に副作用について)、発作の原因のこと、腹式呼吸、発作止めの吸入器は心臓に悪いことなどの話を聞きました。母は特に吸入器のことをかなり心配していました。ぜんそくの友達の中でも、心臓が止まってしまうと思い込んで苦しくなっても、苦しくなっても、我慢して我慢して、超苦しくなってやっと、吸入して、入退院を繰り返すひとがいます。素人の生半可な知識による思い込みというのは恐ろしいと思います(母も友人も、私も、多くの他の患者さんたちも…)。
中2の夏に主治医が転勤になりました。当時は「ふーん、先生が変わるのかー」といって、まるでクラス替えか何かのような感じだったんですけど、今、考えるととてもラッキーなことでした。
新しい先生は、インタール、ベコタイド、サルタノール、フルブロン、タウナスなどをいろいろ組み合わせて治療してくださいました。フルブロンやタウナスではむせて発作がおきたりすることもあり、「効果てきめん」といううわさのベコタイド、サルタノールの吸入療法+テオドール、スピロペントで治療することになりました。
高校入試の勉強で忙しくもありましたが、サルタノール1吸入で気管をひろげたあとにボルマチックでベコタイド5吸入を1日2回きっちり、かかさずしていました。本当に効果てきめんといった感じで中3の夏まで発作どころか喘鳴さえも出ませんでした。
新しい先生はかつてテオドールで大変な目にあった患者がいたらしく、それを強調するので、私も洗脳されて(笑)調子もよかったのでテオドールをやめました。
ベコタイドが効いたのでしょうか、入試を終え高校入学までテオドールは風邪をひいたときのみ飲んでいました。この1年半はかなり調子がよかったです。高校に入学して、自分の独断と偏見で治ったと思い込み、そして寮に入ったということもあり、人前でベコタイドを吸入するのが嫌で、勝手にベコタイドをやめてしまいました。半年くらい たまにゼロゼロしたり苦しくなったこともありましたが病院にいくほど苦しくはなりませんでした。
秋口に風邪か発作か区別がつかない感じではじまり、寮の友人や先輩には喘息だということを隠していたのでみんな突然の発作に驚いている様子でした。私も病気を隠していたこと、ベコタイドをサボったことでまた逆戻りしたことがショックでした。これも2日間の点滴でよくなりました。寮では喘息ということがばれても(おかしな表現ですが)なぜだか人前でベコタイドを吸う事ができず、またテオドール、サルタノール、スピロペント、具合が悪くなったら病院という繰り返しでした(一応、ベコタイドは処方してもらってました)。
当時、カラオケで友達の吸うたばこの煙で発作がおきたりしていましたが、半分「もう、サルタノール吸ってダメなら病院行けばいいや」などと考えており、いま、思うと、1度ベコタイドですっかりよくなった経験があるのに もったいないような、悲しいような気がします。1年間、浪人しても似たような生活を送っていました。
大学入学とともに一人暮らしをはじめました。先日、一人でいるとき初の、発作がおきてパニックになりかけ病院にいきました。1人のときに発作が起きるのはこわいものですね。いまになって家族や寮の友人のありがたさが身にしみてわかります。
そして、先生のホームページをみつけたわけです。じっくり読んでみて、はじめて喘息のこと、クスリのことを少し理解しました。私は1度、かなりよくなった経験があるのですから、もう1度やってみたいと思います。このすばらしい寄稿集が全ての喘息患者、家族、医療関係者、健康な人々の手に届いてほしいと願わずにはいられません。
そして、喘息患者にとって悲しいことは発作そのものはもちろん、正しい治療をうけることのできる環境にいる患者が少ないことなのではないでしょうか。私のように軽症でも恐れずにベコタイドなど使ってみることこそ多くの苦しんでいる人がよくなる光だと思います。これからベコタイド再開です。
私は結婚もしたいし子供もうみたいです。
やっぱりそれまでに良くしていたいですから。
それでは。さようなら。
これからもホームページみさせていただきます。
<応答>
初めまして。
今回は、貴重なメールありがとうございました。「寄稿集」で紹介している方々と共通している内容がたくさんあり、大変興味深く読ませていただきました。
>>寮に入ったということもあり人前でベコタイドするのが嫌で、勝手にベコタイドをやめてしまいました。
→このお気持ちはよくわかります。私も、すこしヒューヒューしたときに、サルタノールを吸おうとしたのですが、誰もいないのに、わざわざ部屋の隅っこへ行ってシューッとやります。シューッとやっているとき、誰かがいきなり部屋に入って、その姿を見られるのが何となく嫌でそうしたのだと思います。自分でも、なぜなんだろう?と考えたのですが、やはり人間には自分の弱いところを見せたくないという動物的本能が残っているのではないか?という結論に達したのです。動物社会で言えば、他に弱みを見せることは、すなわち死を意味することになるわけですから、どこかに肉体的弱みは他に見せてはいけないという動物的本能がまだ残っているのかなあ、なんて考えました。でも、人間社会は動物とは違うわけですからそうであってはいけませんよね。
>>私は結婚もしたいし子供もうみたいです。やっぱりそれまでによくしていたいですから。
→そうですね。是非、頑張って下さい。そして、まだ先ですが、安全に妊娠を乗り切るには、ピークフローメーターという心強い味方がおりますので、ぜひ導入してみて下さいね。
では。