(1)甲状腺の手術後喘息が悪化しました。

【043】45歳女性(主婦)の方から

<質問>

はじめまして。以前より、このホームページで勉強させていただいておりました。

私は、今年の4月に甲状腺の手術を受けました。元々、喘息の方は吸入ステロイドでピークフロー値がが440くらいは吹けておりましたが、手術を受けた影響なのか、とてもいやな咳が出るようになりました。こんな咳は未だかつて経験した事がありません。長く尾を引く切れの悪い、お腹の奥のものを細い所から絞り出すような咳です。2、3咳もしたら脂汗が出てくる気配さえします。咳の前後は必ずと言って良いほど、喘鳴と軽い息苦しさが有り、ついつい毎日のようにアイロミールを吸入していました。手術入院で、喘息がひどくなったような気がして無気力になり、退院後も必要最小限の家事しかせず、ゴロゴロとしていました。

そんなこんなであまり楽しくないGWの最中、なんと!母が交通事故で入院してしまったのです。母の入院先までは、2時間あまりかかります。事故当日はアイロミールを3時間おきに吸入するほど体調が悪かったのに、知らせを聞いて飛んでいってしまいました。不思議な事に翌日、翌々日と体調が良くなり、軽い咳とちょっとした息切れ程度があるのみになっていました。体調の良かったのはほぼ1週間、その間PF値は朝330前後、昼は380前後という数値でした。体調が良いと感じるわりにPF値が悪いような気がしていましたし、食欲もありませんでしたが、体の事を気にせずに母の所へ通う事が出来ました。

そして母の状態が落ち着き始めたころ、再びあのいやな咳が始まりました。朝方のPF値が290、240と下がりつづけ、ついに昼も300となった日の晩、咳が止まらなくなってしまいました。アイロミールを吸入しても止りません。咳は、ゴホッという最初の爆発音へ(?)が無くなりながら、ヒュウヒュウと激しくお腹(胸)の中が絞られるように出続けます。主人が見るに見かねて病院へ連れていってくれました。息が吸いにくいとか、呼吸が苦しいと言う感じはありませんでしたが、咳の為に全く話すことが出来ず、歩く事もやっとでした。

病院では当直の先生が私の様子を一目見るなり、点滴(ステロイドとネオフィリンと後で聞かされる)と酸素吸入で治療をはじめて下さいました。しかし、血中酸素は100%あったのです。にもかかわらず気管支拡張剤の吸入もする事になり、咳き込み出してからおよそ2時間後、ようやくいやな咳の連続が治まりました。

以前、過換気症候群としての治療を受けたことがありました。その時酸素100%と言われたので、今回も過換気症候群なのか(自覚症状は全く違いますが)と思ったのですが、喘息の治療が続行され、帰る前に念のためという事で2回目の吸入も受け、ユニフィルも渡されました。酸素が100%でも喘息の発作なのでしょうか? ましてステロイドの点滴をしなければならないほどの症状だったのでしょうか? とても苦しい咳を止めて頂いたので当直の先生には感謝しているのですが、少し疑問を抱いてしまいました。

後日主治医から、アレルギー性の咳ということでIPDカプセルの処方と吸入ステロイドをしっかり続けるようにとのお話がありました。

その後、ピークフロー値は470まで吹けました。しかし、これは発作止めの影響がでていると思います。このところの天候不順の為か、日中でも喘鳴や息切れが起こり吸入する事が多かったからです。しかし、あのいやな咳は、明け方を除いてほとんど出る事がなくなりました。明け方に咳が出る事は今でもたびたびありますが、長い時間続く事は全くなくなりました。また、ここ数日はアイロミールがなくても、昼夜のPF測定値が410〜450と好調です。このままPF値も体調も安定してくれると良いのですが、朝の測定値が低い事がとても気になっています。

先生のホームページに寄せられる最近の質疑や対する先生の応答を読んでおりますと、5月は調子の悪い喘息患者が多いようですね。このところの調子の悪さが、手術による影響なのではないかとずっと思っていましたが、咳の症状もアレルギー性と言われましたし、もしかすると私の体調は季節的な事が大きく影響しているのかもしれませんね?

余談その1
甲状腺手術で退院するまでにベコタイドがなくなる事が予測されていましたが、呼吸器内科の主治医から「全国どこでもあるから入院先で出してもらうように」と言われていました。私の県ではベコタイドは1ヶ月に3本までしか出してもらえませんので(追加の際は受診しなければならない)予め余分にもらう事はできませんでした。しかし入院先の執刀医にベコタイドを出してくれるようお願いすると、肺機能検査(2月)では喘息の所見がないので(肺活量76%、1秒率73%だったと思います)、止めた方が良いと言われました。このホームページでの応答の中に「喘息の初期には肺機能検査結果に現れない事がある」と読んだ様に思いましたので、引き下がれず、これまでの吸入ステロイドの効果をお話する事によって、やっと出してもらえる事にななりました。しかし執刀医は「それでもステロイドだから1日も早く離脱するように」と言われました。その上実際に処方されたのはアルデシンで、スぺーサーがありませんでした。とりあえずないよりはと思い、ボルマチックにアルデシンをあてがって吸入していました。この病院では、入院患者には3名ずつ主治医がつきましたが、このような発言をされたのはこの執刀医の先生だけでした。手術そのものに対しては3名一致団結して取り組むのでしょうが、私の喘息については皆さん意見がバラバラだったのではないかと思います。幸いにして、私の不安な気持ちを取り除いてくれたのは麻酔医の先生のお話でした。1時間あまりもかけて丁寧に麻酔の説明をして下さり、「軽い喘息と思っていても手術中には何が起こるかわからない。何が起こっても無事手術が完了する様、万全の準備をして取り組みますから安心して下さい。」と言って下さった事でした。それにしても諏訪部先生のホームページ「喘息患者さんからの寄稿集」を拝見する事がなかったら、それぞれのお医者様の発言にもっともっと翻弄されていた事でしょう。

余談その2
入院生活をして、少しは病院やお医者様に慣れたのでしょうか? 手術を乗り越えて(と言うほどの手術ではありませんが)肝がすわったのでしょうか? 退院してから、呼吸器内科の主治医との信頼関係が良好になってきました。一度怒鳴られてから質問する事に恐れをなしていたのですが、今は全く平気になり、また主治医も以前に比べて丁寧に親身に答えて下さるようになりました。

長文になり、申し訳けありません。「喘息患者さんからの寄稿集」は、最近重症の患者さんからのメールが多いようですね。皆さんの本当に苦しまれていらっしゃる様子を読むと、わたしのように症状の軽い者までご相談申し上るのは、とても申し訳ない気がしてきます。

PS:
フルチカゾンは、花粉症の鼻の薬として、すでに国内で使用されているのですか? この春、実家の父が使っていました花粉症のお薬に、成分としてフルチカゾンと記載されていたように記憶しています。

<応答>

初めまして。

甲状腺の手術後は大変だったのですね。また、お母さまが交通事故とは、何ということでしょうか? もうすっかり回復されたのですか?

>>手術を受けた影響なのか、とてもいやな咳が出るようになりました。

→はっきりはわかりませんが、喉の不快感はやはり手術の影響なのではないでしょうか? 手術が上手とか下手とかの問題ではなく、手術そのものがということです。つまり甲状腺は喉の上にありますから、手術自体あるいは手術の傷などである程度変形を受けますから、空気の通り道が普通の人間でも細くなりやすいのではないかということです。ましてや、喘息があるとその感じは普通の方より強いでしょう。しかし、そのうちきっと良くなるでしょう。

>>そんなこんなであまり楽しくないGWの最中、なんと!母が交通事故で入院してしまったのです。母の入院先までは、2時間あまりかかります。事故当日はアイロミールを3時間おきに吸入するほど体調が悪かったのに、知らせを聞いて飛んでいってしまいました。不思議な事に翌日、翌々日と体調が良くなり、軽い咳とちょっとした息切れ程度があるのみになっていました。体調の良かったのはほぼ1週間、その間PF値は朝330前後、昼は380前後と言う数値でした。体調が良いと感じるわりにPF値が悪いような気がしていましたし、食欲もありませんでしたが、体の事を気にせずに母の所へ通う事が出来ました。そして母の状態が落ち着き始めたころ、再びあのいやな咳が始まりました。

→これは恐らく、お母さまの事故ということで極度の神経緊張状態が続いたからではないでしょうか? 交感神経が緊張すると、喘息が抑えられることは有名です。ただし、気道炎症は取れませんから、緊張が解けるとまた具合が悪くなります。

>>病院では当直の先生が私の様子を一目見るなり、点滴(ステロイドとネオフィリンと後で聞かされる)と酸素吸入で治療をはじめて下さいました。しかし、血中酸素は100%あったのです。にもかかわらず気管支拡張剤の吸入もする事になり、咳き込み出してからおよそ2時間後、ようやくいやな咳の連続が治まりました。以前、過換気症候群としての治療を受けたことがありました。その時酸素100%と言われたので、今回も過換気症候群なのか(自覚症状は全く違いますが)と思ったのですが、喘息の治療が続行され、帰る前に念のためという事で2回目の吸入も受け、ユニフィルも渡されました。酸素が100%でも喘息の発作なのでしょうか? ましてステロイドの点滴をしなければならないほどの症状だったのでしょうか? とても苦しい咳を止めて頂いたので当直の先生には感謝しているのですが、少し疑問を抱いてしまいました。

→喘息では、発作がひどくよほど苦しくなれば別ですが、動脈の酸素がさほど下がらなくても、息苦しいと感じることはあります。そもそも呼吸困難感とは、酸素が不足することではなくて、気管支が細くなり呼吸ができず息苦しいと感じる感覚の異常のことなのです。酸素の低下は、肺胞という“袋”の異常で起こります。気管支喘息は気管支という空気の通り道(“管(くだ)”)が細くなるのが問題で、もともと肺胞機能は正常なのです。喘息発作の時、酸素を投与しただけでは呼吸困難感は取れません。酸素濃度はもともとそんなに下がらないからです。喘息発作で呼吸困難が取れるのは、発作止めで気管支が広がり楽に呼吸ができるようになり、苦しいという感覚が取れるからなのです。

ただし、喘息発作でもやはり酸素100%ということはあまりありません。多少は下がるはずですから、過換気症候群であった可能性もありますね。過換気症候群では血液の酸素はしばしば十分量以上になります。

喘息と同じ治療で、咳が治まったのは、あなたの頭のどこかに「これは喘息である」という先入観(パニック症候群の一種)があって、先生が“喘息の治療をしてくれた”という安心感が得られたので、精神的に落ちつき過換気症候群が良くなったという可能性もあります。喘息発作なら点滴で2時間もしてから治まるというのは少し長すぎるような気もしますね。

ただし、あくまでこれは想像です。実際にあなたを診察したり、検査結果を見たわけではないので、そのまま鵜呑みにしないで下さいね。

>>その後、ピークフロー値は470まで吹けました。しかし、これは発作止めの影響がでていると思います。このところの天候不順の為か、日中でも喘鳴や息切れが起こり吸入する事が多かったからです。

→確かにおっしゃるとおりです。しかし、470吹けたということは、あなたは最低でもそのくらいは吹ける能力があるということは確かですね。私の経験では、気管支拡張剤で470吹ける方は、気道の炎症がすっかり取れるともっと吹ける方がほとんどです。すなわち550とか600も夢ではないということです。今は不安定ですが、希望を持って下さいね。

>>先生のホームページに寄せられる最近の質疑や対する先生の応答を読んでおりますと、5月は調子の悪い喘息患者が多いようですね。このところの調子の悪さが、手術による影響なのではないかとずっと思っていましたが、咳の症状もアレルギー性と言われましたし、もしかすると私の体調は季節的な事が大きく影響しているのかもしれませんね?

→これは確かですね。しかし、ただひとつ言えることは、季節の影響を受けるうちは、気管支の炎症が不完全に残っているということです。すっかり気管支の炎症が取れる(ピークフローが600近く吹けるようになる)と、このようなことはなくなります。過去に不安定で不安な時期であっても自信が持てるようになるものです。

>>入院先の執刀医にベコタイドを出してくれるようお願いすると、肺機能検査(2月)では喘息の所見がないので(肺活量76%、1秒率73%だったと思います)、止めた方が良いと言われました。このホームページでの応答の中に「喘息の初期には肺機能検査結果に現れない事がある」と読んだ様に思いましたので、引き下がれず、これまでの吸入ステロイドの効果をお話する事によって、やっと出してもらえる事にななりました。

→よく言えましたね。なかなか言えることではないですよね。でも、やはりあなたは正しかったと思います。担当の先生は呼吸器専門医ではないので、仕方ないことだとは思いますが、1秒率73%は正常域ですが低目であることは確かです。こういう方は、値が正常でも気管支拡張剤を吸うと80%以上にまで改善することがしばしばです。すなわち、吸入ステロイドが効く気管支炎症が残っているということです。ですから、「吸入ステロイドは止めた方がいい」とは言えませんね。

>>執刀医は「それでもステロイドだから1日も早く離脱するように」と言われました。

→これも仕方のないことですね。吸入ステロイドも内服ステロイドも同じであるという認識でしょうから…。

>>この病院では、入院患者には3名ずつ主治医がつきましたが、このような発言をされたのはこの執刀医の先生だけでした。手術そのものに対しては3名一致団結して取り組むのでしょうが、私の喘息については皆さん意見がバラバラだったのではないかと思います。

→同じようなことが、実際の医療現場で起こっています。

>>幸いにして、私の不安な気持ちを取り除いてくれたのは麻酔医の先生のお話でした。1時間あまりも掛けて丁寧に麻酔の説明をして下さり、「軽い喘息と思っていても手術中には何が起こるかわからない。何が起こっても無事手術が完了する様、万全の準備をして取り組みますから安心して下さい。」と言って下さった事でした。

→この麻酔の先生は、経験豊富ですね。まったくその通りです。喘息では、手術前、術中、術後に何が起こるかわからないものです。100%安全ということは言えませんが、少しでも発作の危険性を低くして手術に臨むことが鉄則です。

>>入院生活をして、少しは病院やお医者様に慣れたのでしょうか? 手術を乗り越えて(と言うほどの手術ではありませんが)肝がすわったのでしょうか? 退院してから、呼吸器内科の主治医との信頼関係が良好になってきました。一度怒鳴られてから質問する事に恐れをなしていたのですが、今は全く平気になり、また主治医も以前に比べて丁寧に親身に答えて下さるようになりました。

→これは面白い現象ですね。医者も、患者さんの知識が十分であると察知すると、下手なことは言えないと身構えるものです。これでようやく対等になれたわけです。これこそ、今後の医療の理想的な姿であると思います。

>>長文になり、申し訳けありません。「喘息患者さんからの寄稿集」は、最近重症の患者さんからのメールが多いようですね。皆さんの本当に苦しまれていらっしゃる様子を読むと、わたしのように症状の軽い者までご相談申し上るのは、とても申し訳ない気がしてきます。

→とんでもありません。喘息は軽症のうちに如何に治療するかにかかっています。極端な言い方ですが、重症になるとやることはひとつ(病院を受診し入院するか、点滴を受けるか)しかないのです。私の大きな役目は、如何に喘息を重症化させないかにあるのだと思います。

>>フルチカゾンは、花粉症の鼻の薬として、すでに国内で使用されているのですか? この春、実家の父が使っていました花粉症のお薬に、成分としてフルチカゾンと記載されていたように記憶しています。

→鼻炎の方が先に発売になったようですね。私も詳しくは知りませんでした。今度確認してみます。少なくとも喘息用はまだ市場にでていません。

では、こんなところで。


(2)喘息? 過換気症候群?

【043】45歳女性(主婦)の方から

<追加メール1>

いつも詳しいご返事を頂きありがとうございます。

お蔭様で母はもうすっかり良くなりました。鎖骨を骨折して手術になりましたが、私の3倍くらいは元気だと思います。ほっといたしております。さて、早速ですがご返事に対しての質問をさせて下さい。長文になります。ごめんなさい。

>>はっきりはわかりませんが、喉の不快感はやはり手術の影響なのではないでしょうか?

→確かに喉の不快感は強く残っています。甲状腺のあったあたりに幅広のテープを張られているような感じです。普段は何ともないでのですが、まさに喘息が起こる時のように天候が悪くなるとそうした強い不快感が起こり、果ては食べ物がつかえるようにもなってきます。もっとも5月の終わりごろになってやっと表面の腫れがひいてきたという段階ですから時期的には仕方がない事かも知れません。また、一部が肥厚性瘢痕になっています。体質的なものと聞いています。この肥厚性瘢痕は皮膚の表面だけに出来るのでしょうか?もし、内部の傷にも発生するとしたら想像以上の変形があるのでしょうね。しかし、咳はどうも喉から出ているように思えません。お腹の中の筋肉が痙攣して咳となるような感じです。

>>これは恐らく、お母さまの事故ということで極度の神経緊張状態が続いたからではないでしょうか? 交感神経が緊張すると、喘息が抑えられることは有名です。ただし、気道炎症は取れませんから、緊張が解けるとまた具合が悪くなります。

→あまりにも都合の良いタイミングで、具合が良くなったり悪くなったりするので喘息ではなく精神的なものかと疑いました。有名な話だったのですね。ところで緊張の度合いや長さにもよるのでしょうが、緊張が解けた時はそれ以前と変わらない状態になるのでしょうか? それとも悪化している事が多いのでしょうか?

>>そもそも呼吸困難感とは、酸素が不足することではなくて、気管支が細くなり息苦しいと感じる感覚の異常のことなのです。酸素の低下は、肺胞という“袋”の異常で起こります。気管支喘息は気管支という空気の通り道(“管(くだ)”)が細くなるのが問題で、もともと肺胞機能は正常なのです。

→喘息ではなぜ呼吸困難になるのか、「知識」のコーナーで少しは理解したつもりでしたが、呼吸困難とは何なのかわかっていませんでした。ご指摘のように、呼吸困難は酸素が不足する事を指すのであって、自覚症状だけの呼吸困難はないと思っていました。単純に自覚症状を指すのですね。

>>ただし、喘息発作でも酸素100%ということはあまりありません。多少は下がるはずですから、過換気症候群であった可能性もありますね。過換気症候群では血液の酸素はしばしば十分量以上になります。

→私も過換気症候群を連想してしまったのですが、今回は咳だけなのです。前に起こした時は、もっと空気がほしいという感じで呼吸がものすごく早くなってしまいました。咳だけの過換気症候群もあるのですか?

>>喘息と同じ治療で、咳が治まったのは、あなたの頭のどこかに「これは喘息である」という先入観(パニック症候群の一種)があって、先生が“喘息の治療をしてくれた”という安心感が得られたので、精神的に落ちつき過換気症候群が良くなったという可能性もあります。喘息発作なら点滴で2時間もしてから治まるというのは少し長すぎるような気もしますね。

→まず訂正します。点滴で2時間後に治まったのではなく、咳が始まってから治まるまでに2時間ほど掛かったのです。最初はかなり短い間隔で断続的に何回か咳が出て、まもなく連続になり、なかなか止る様子がなかったのでアイロミールを吸入しました(今まではそれで止っていたのです)。数分間は止っていたと思うのですが、程なくして再び咳が始まり、それでもそのうち吸入薬が効いてくるんじゃないかと我慢していました。結局診察室に入るまでに1時間近く経っていたと思います。

しかし諏訪部先生のおっしゃるような可能性も決して否定できません。深層心理はそうであったかもしれませんね。ですが私の中に「喘息ではないのに喘息の治療をされているのではないか?」と言う疑いが過ぎって、一瞬混乱したことも確かです。これは診て下さった先生に対して不謹慎な考えですが、よくよく後になって考えると、「点滴の針を刺してしまってから、酸素が100%あり喘息ではない事がわかった。しかし投薬を開始してしまったので途中で止めるわけにはいかず、喘息として治療する事にした」そんな事もひょっとしたら有るかもしれないと思ったのです(そうではないと良いのですが…。症状が治まると発作時の対応の仕方など丁寧に教えて下さるような優しい先生でした)。ともかくも病院に行く事によって症状が治まったのだから、結果的に良かったのではないか、今更くどくど考える必要などないと単純に思いたいのですが、

・・過換気症候群なら、薬の副作用で辛い思いをする事がなかったのではないか? 不整脈(20年くらい前から時々)が数日にわたって頻繁に起こった。吐き気がするほどの動悸が起こった。全身の痒みが数日続いた。

・・過換気症候群なら家族に迷惑を掛けて夜間外来に行かなくても、家庭で治す事出来たのではないか? そう考えると、今後自分の状態が喘息なのか、過換気症候群なのか見極める事と、その状態が病院に行くべき状態かどうか見極める事はとても大事な事のように思えてきたのです。見極めるポイントがあれば是非教えて下さい。

ちなみに先日主治医に、一度精神科か心療内科を受診したいとしつこく申し出たのですが、「取りたてて悩みが無ければ受診する必要はない。受診したところで症状が出なくなったり、軽くなったりする可能性はないと思う。それよりもベコタイドだよ」とおっしゃっていました。精神科等の受診は本当に必要ないでしょうか?

>>確かにおっしゃるとおりです。しかし、470吹けたということは、あなたは最低でもそのくらいは吹ける能力があるということは確かですね。私の経験では、気管支拡張剤で470吹ける方は、気道の炎症がすっかり取れるともっと吹ける方がほとんどです。すなわち550とか600も夢ではないということです。今は不安定ですが、希望を持って下さいね。

→最近、PF値が400近くあっても、痰が絡んで少し息苦しかったり、喘鳴が出たりと言う事があり、ある日どうしても堪えきれずアイロミールを吸入しました。それらの症状あっという間に解消したのですが、1時間近く経ってから思い付いてピークフロー値を測定したところ何と500も吹いていました。これが気管支拡張剤のお陰でなければどんなにうれしい事かと思っておりましたら、その後気管支拡張剤を全く吸入しない日でも460が出、翌日には490が出ました。しかし朝の測定値は相変わらず低いままです(300〜350)。

>>よく頑張りましたね。なかなか言えることではないですよね。でも、やはりあなたは正しかったと思います。担当先生は呼吸器専門医ではないので、仕方ないことだとは思いますが、

→ともかくも吸入ステロイドが効いていましたので、この期に及んで止めるわけには行きませんし、その時点では「手術以外の事をあれこれ考えたくない。喘息の事は退院してから…。」と割り切って考えていたと言うのが本当のところでしょうか。しかし手術においては執刀医に大きな信頼がありましたので、気まずい雰囲気になるような事は全くなく、時には冗談を言い交わすなど、とても良好な状態で入院生活を送る事が出来ました。

それにしても、呼吸器専門医でないと吸入ステロイドの事は良く分らないと言うのが今の日本の医療の現状なのですか? 近所の開業医の先生方も吸入ステロイドを出して下さる方はほとんどないと聞いています。先日新聞紙上で、ある病院の先生が、吸入ステロイドの効果を過去5年間にわたって調査し、高い効果のあった事を発表していました。今度シンポジウムで、吸入ステロイドを広く普及させる為に詳しく発表するそうです。(シンポジウムの名称は忘れました。)

>>とんでもありません。喘息は軽症のうちに如何に治療するかにかかっています。極端な言い方ですが、重症になるとやることはひとつ(病院を受診し入院するか、点滴を受けるか)しかないのです。私の大きな役目は、如何に喘息を重症化させないかにあるのだと思います。

→ありがとうございます。お言葉に甘えてまたしても長々と書き込んでしまいました。ご都合の宜しい時にお返事を頂ければ幸いです。

どうぞ、夜更かしをされませんように様に、先生もご自愛のほど。

<追加応答1>

お母さま、回復されて何よりでしたね。

>>この肥厚性瘢痕は皮膚の表面だけに出来るのでしょうか? もし、内部の傷にも発生するとしたら想像以上の変形があるのでしょうね。しかし、咳はどうも喉から出ているように思えません。お腹の中の筋肉が痙攣して咳となるような感じです。

→瘢痕性収縮は、程度にもよりますが、表面からみて薄い線くらいにしか見えないなら、深部まで周囲の組織を引っ張ることはないでしょう。しかし、瘢痕が結構太くなっていると気管あたりが引っ張られる感じは残るでしょうね。しかし、やはり咳の原因ではないかもしれませんね。

>>緊張の度合いや長さにもよるのでしょうが、緊張が解けた時は、それ以前と変わらない状態になるのでしょうか? それとも悪化している事が多いのでしょうか?

→これも一概に言えませんが、緊張している期間がそんなに長くなければ元と同じに戻ることが多いのではないでしょうか?

>>呼吸困難とは何なのかわかっていませんでした。ご指摘のように、呼吸困難とは酸素が不足する事を指すのであって、自覚症状だけの呼吸困難はないと思っていました。単純に自覚症状を指すのですね。

→はい。従って、呼吸困難の程度を数値で表すことは非常に難しいのです。ボルグ・スケールなど患者さんの呼吸困難の感覚を指標に数値化する方法が試みられています。

>>咳だけの過換気症候群もあるのですか?

→これは、たぶんあまりないと思います。ですから、前回のエピソードは、喘息と過換気症候群が合わさって現れたのではないでしょうか?

>>今後自分の状態が喘息なのか、過換気症候群なのか見極める事と、その状態が病院に行くべき状態かどうか見極める事はとても大事な事のように思えてきたのです。見極めるポイントがあれば是非教えて下さい。

→はっきり申し上げて、これは難しい判断ですから、やはり病院を受けて診察や検査を受けるべきですね。本当は過換気症候群なのに、喘息と勘違いして処置(ただしあなたにとってアイロミールは多少問題はありそうですが…)をすることはさほど問題はないでしょう。何故なら、過換気症候群は大変苦しくなる病気ですがそれで命を落とすようなことはないからです。しかし、本当は喘息なのに、過換気症候群と思い込んで紙袋呼吸をすればこれは息が苦しくなってしまいますから、喘息には危険ですし、手遅れになると生命に関わります。ですから、結果的には前者であっても、家族への迷惑など考えることはせず、病院を受診すべきでしょうね。「喘息かどうか迷ったら受診する」の原則を貫くべきでしょう。

>>ちなみに先日主治医に、一度精神科か心療内科を受診したいとしつこく申し出たのですが、「取りたてて悩みが無ければ受診する必要はない。受診したところで症状が出なくなったり、軽くなったりする可能性はないと思う。それよりもベコタイドだよ」とおっしゃっていました。精神科等の受診は本当に必要ないでしょうか?

→精神科を受診し、喘息と並行して過換気症候群の治療をすることは必要ないとは思いませんが、まずしっかり喘息を吸入ステロイドで良くして、それでも過換気症候群でしばしば問題が起きるようなら、その時に考えても遅くないような気もします。2つの病態があると、治療が複雑になります。過換気症候群は治療は難しいですが、喘息は吸入ステロイドをしっかり効かせれば良くすることができますから、主治医の先生はその点を強調したかったのではないでしょうか? また、喘息がすっかり良くなり発作の不安から解消されると、今度は過換気症候群の方に好影響を与えることもありますので、私も、今は吸入ステロイドをしっかり吸ってピークフロー値を高く安定させることが何より大切だと思います。

>>最近、PF値が400近くあっても、痰が絡んで少し息苦しかったり、喘鳴が出たりと言う事があり、ある日どうしても堪えきれずアイロミールを吸入しました。それらの症状あっという間に解消したのですが、1時間近く経ってから思い付いてピークフロー値を測定したところ何と500も吹いていました。これが気管支拡張剤のお陰でなければどんなにうれしい事かと思っておりましたら、その後気管支拡張剤を全く吸入しない日でも460が出、翌日には490が出ました。しかし朝の測定値は相変わらず低いままです(300〜350)。

→500吹けたのですね。しかし、500が安定した状態(真のブルーゾーン)なら、翌日300台へ急に落ち込むことはありません。ということは、もっと吹けることを意味します。550から600近くで安定した値が維持できるようになれば理想的ですね。

>>それにしても呼吸器専門医でないと、吸入ステロイドの事は良く分らないと言うのが今の日本の医療の現状なのですか? 近所の開業医の先生方も吸入ステロイドを出して下さる方はほとんどないと聞いています。

→これは様々ですね。大概の呼吸器専門医ならら吸入ステロイドに詳しいはずですが、吸入指導その他に精通していなかったり、積極的でない場合があります(「寄稿集(10)・48歳男性」の項参照)。また、専門外の開業の先生でも、吸入ステロイドを積極的に取り入れている先生もおりますので、そのような先生が近くにいれば最高ですね。私も、山形近辺ではありますが、開業の先生を対象とした勉強会などで、吸入ステロイド普及の講演に全力を注いでおりますので、そのうちその効果が出てくるのではないかと期待しております。

では、こんなところで。

<追加メール2>

いろいろとコメントを頂き有り難うございます。

肥厚性瘢痕については、一部(喉の前3 cmにわたる)がミミズ状に腫れている程度です。表面から内部に向かって組織を引っぱている様には見えませんので、きっと心配ないのでしょう。

>>これも一概に言えませんが、緊張している期間がそんなに長くなければ元と同じに戻ることが多いのではないでしょうか?

→短期間の緊張なら、喘息が悪くなるのではないかと恐れる事はないようですね。

>>これは難しい判断ですから、やはり病院を受けて診察や検査を受けるべきですね。(以下省略させて下さい)

→良く分りました。「喘息かどうか迷ったら病院に行く」という原則に従います。

>>精神科を受診し、喘息と並行して過換気症候群の治療をすることは必要ないとは思いませんが、まずしっかり喘息を吸入ステロイドで良くして、…(省略させて下さい)…私も、今は吸入ステロイドをしっかり吸ってピークフロー値を高く安定させることが何より大切だと思います。

→そうですね。おっしゃる通りだと納得できました。

>>これは様々ですね。大概の呼吸器専門医ならら吸入ステロイドに詳しいはずですが、吸入指導その他に精通していなかったり、積極的でない場合があります(「寄稿集(10)・48歳男性」の項参照)。また、専門外の開業の先生でも、吸入ステロイドを積極的に取り入れている先生もおりますので、そのような先生が近くにいれば最高ですね。私も、山形近辺ではありますが、開業の先生を対象とした勉強会などで、吸入ステロイド普及の講演に全力を注いでおりますので、そのうちその効果が出てくるのではないかと期待しております。

→そうでした。「寄稿集」で読ませて頂きました。私の主治医の場合、吸入ステロイドを積極的に進めて下さっていたので、「寄稿集(10)・48歳男性」はすっと読み流していました。ほかの病気になってはじめて吸入ステロイドを理解されていないお医者様の存在を「実感」したわけです。諏訪部先生の吸入ステロイド普及活動も早く効果が出ると良いですね。

また「私の喘息診療日記・067:医療情報にはもっとマスコミを利用せよ」はすばらしい案だと思います。プロ野球やワールドカップサッカーの合間のコマーシャルに、「喘息で苦しまないために吸入ステロイドを使いましょう(日本呼吸器学会より)」とか「ベロテックの吸いすぎには注意しましょう(厚生省より)」−この2件などは、すぐにオン・エアーされるべきではないか、と思ってしまったほどでした。

近所の開業医の先生方は、内科の看板は掲げられているものの、もともとのご専門が呼吸器という先生は皆無で、そのためか私の知る限りでは吸入ステロイドを処方して下さる所はない様です。テオドールを中心とした内服薬で治療される所がほとんどだそうです。もっと勉強されてから開業していただきたかったな…と残念に思ってしまいます。

しかし、たまたま私の家の近所に限って吸入ステロイドに詳しい開業医の先生がいらっしゃらないだけの事かもしれません。また近所には大きな病院もあり、そこでは吸入ステロイドの治療を受ける事が出来ますから選択肢はあります

でも普段から家族みんなでお世話になっているホームドクターが、吸入ステロイドを含めて喘息治療に詳しい先生だったら…と考えるのは欲張りな事ではありませんよね。

本当にいつも納得のいくご説明をいただいて感謝しております。特に過換気症候群の事については、どういう風に対処したら良いものか気に病んでおりましが、先生のご回答ですっきりと考えられるようになりました。ありがとうございます。

お忙しい事と知りながら、またしてもだらだら書き込んでしまいました事、またお礼のメールが遅くなりました事、お許し下さい。

本当にいろいろとありがとうございました。それでは失礼いたします。