(1)吸入ステロイドで胸が苦しくなるのですが…。

【048】35歳男性(事務職)の方より

<質問>

はじめまして。

私は35才男性で、事務職の会社員です。

いつも先生のホームページを拝見させていただき、いろいろと参考にさせていただいています。ほんとうにありがとうございます。

実は私も昨年の夏に風邪をひいたのをきっかけに、アレルギー性気管支喘息と診断されました。既往歴はありません。しばらく咳が続き、秋に再び風邪をひくと発作を起こして1週間ほど入院しました。それ以降は特に発作はありませんが、時々風邪をひくと少し息苦しくなり調子が悪くなります。

入院以降の治療は吸入ステロイド(ベコタイド100)を中心に調子が悪い時は、メプチン、ユニフィル等の経口薬を使っています。吸入ベコタイドは通常1日に4〜6パフ、調子の悪い時は9〜12パフにしています。

今年の2月からはピークフローメーターを購入し記録をつけています。

普段は約530ぐらいで、風邪をひいたりすると350ぐらいまで落ちます。(私の身長は155cmです)

ここで先生にいくつか質問があります。

・吸入ステロイドは副作用はほとんどないとかかりつけの先生から言われていますが、私は吸入を始めた頃から時々胸が重苦しくなることがあります。かかりつけの先生はそれは副作用ではなく神経質になっているからとの説明でした。確かに安定剤を服用すると楽になるのですが、先生はどうお考えですか? ちなみに先日1週間ほど吸入を中断した時はその症状はありませんでした。でも咳が出るようになったので、今はまた吸入を続けています。

・昨年入院した頃から原因不明の微熱(37℃)が時々出るようになりました。いろいろな検査をしてもらいましたが、血液の好酸球が高い他には特に異常はありませんでした。(レントゲンもCTでも異常はなく、甲状腺の検査もしましたが同じでした)喘息と何か関係があるのでしょうか?

・喘息になるまでは時々軽いジョギング(距離にして3kmぐらい)をしていましたが、喘息になってからはジョギングすると翌日には少し息苦しさを感じることがあり、最近はほとんど運動していません。かかりつけの先生からも運動性のものかも知れないと言われました。喘息がきちんとコントロール出来るまでは控えた方が良いでしょうか?

いろいろ書いてしまい申し訳ありません。お忙しいところたいへん恐縮ですが、ご回答をよろしくお願いします。

<応答>

初めまして。

>>吸入ステロイドは副作用はほとんどないとかかりつけの先生から言われていますが、私は吸入を始めた頃から時々胸が重苦しくなることがあります。かかりつけの先生はそれは副作用ではなく神経質になっているからとの説明でした。確かに安定剤を服用すると楽になるのですが、先生はどうお考えですか? ちなみに先日1週間ほど吸入を中断した時はその症状はありませんでした。でも咳が出るようになったので今はまた吸入を続けています。

→私も、安定剤が効くので精神的なものであるとは思いますが、吸入中止によって症状が消失するとすると、吸入の影響も否定できないような気もします。ただし、吸入のためかもしれませんが、吸入ステロイド(薬剤)自体のせいではなく、吸入操作自体の可能性であるかもしれません。

そこで、私からの質問は、以下の3つです。

(1)胸の苦しみは、吸入直後に起きるのですか? それともしばらくしてからですか?
(2)ピークフロー値が500近く吹けても起こりますか?
(3)吸入はスペーサーを用いていますか? 速度は速くないですか?

不適切な早い吸入の場合、ピークフロー値が低く発作が頻発しているような場合は、吸入操作自体が刺激になることはよくあることですので、その点をまずチェックしてみて下さい。発作止めの吸入では何も起こらないとすれば、それは吸入操作による気道刺激が気管支拡張効果で相殺されるからです。吸入ステロイドは、発作の頻発しているときに無理に吸うと吸入操作自体が刺激になることがよくあります。しかし、発作止めと違って気管支拡張作用がないので、刺激だけが前面に出てしまうことはよくあります。

このようなときは、まず発作止めを吸ってよく気管支を広げてから、吸入ステロイドをゆっくり吸うと問題が解決されることがあります。ピークフロー値が上昇してくれば、吸入ステロイドだけでも大丈夫になるでしょう。

>>昨年入院した頃から原因不明の微熱(37℃)が時々出るようになりました。いろいろな検査をしてもらいましたが、血液の好酸球が高い他には特に異常はありませんでした。(レントゲンもCTでも異常はなく、甲状腺の検査もしましたが同じでした)喘息と何か関係があるのでしょうか?

→発作止めを頻回に使用していると代謝が亢進し微熱となることもあります。吸入ステロイドの影響は聞いたことはありません。しかし、よく検査したわけですから、頭痛や倦怠感など症状がなければ、気にすることはないでしょう。また皮下脂肪の薄い痩せている方の場合、放散熱が多く体温が高めに出る場合があります。

>>喘息になるまでは時々軽いジョギング(距離にして3 kmぐらい)をしていましたが、喘息になってからはジョギングすると翌日には少し息苦しさを感じることがあり、最近はほとんど運動していません。かかりつけの先生からも運動性のものかも知れないと言われました。喘息がきちんとコントロール出来るまでは控えた方が良いでしょうか?

→ピークフロー値が500近く吹けても、ジョギングで息苦しさを感じるのであれば、その値ではまだまだ不十分、すなわち気管支の炎症がまだ残っているのだと思います。従って、その間はジョギングは控えた方がいいですね。ピークフロー値がもっと高く安定するようになれば、息切れはなくなると思います。

この点は、先程の胸の苦しみとも関係するような気もしますね。ピークフロー値が基準値をクリアしていても、息切れや胸の苦しみが残るようなら、まだまだ上の値が出るはずです。これまでは、ピークフロー値が下がったときに吸入ステロイドを増やしているのですよね。ひとつの策は、ピークフロー値が元に戻ったからと吸入ステロイドの回数を元に戻さないで、そのままでしばらくピークフロー値がどう変動するか推移を見て見るのもいいでしょう。しかし、この点はよく主治医と相談して下さいね。

では。


<追加メール1>

さっそく丁寧なご返事をいただきありがとうございました。

まず先生からのご質問にお答えします。

>>私も、安定剤が効くので精神的なものであるとは思いますが、吸入中止によって症状が消失するとすると、吸入の影響も否定できないような気もします。ただし、吸入のためかもしれませんが、吸入ステロイド(薬剤)のせいではなく、吸入操作自体の可能性であるかもしれません。

そこで、私からの質問は、以下の3つです。

@胸の苦しみは、吸入直後に起きるのですか? それともしばらくしてからですか?
Aピークフロー値が500近く吹けても起こりますか?
B吸入はスペーサーを用いていますか? 速度は速くないですか?

→「胸の苦しみ」と言う表現が不適切だったかも知れませんが、どちらかと言うと不快感やムカムカに近い感じです。その症状は吸入直後とかある時突然と言うわけでなく、喘息になってから何となく胸のあたりがすっきりしない感じが続いていたのですが、それがだんだんひどくなって来ていると言った感じです。まだ我慢できない程の状態ではないのですが、最近は安定剤を飲むことが多いです。ピークフロー値が500ぐらいで安定していてもやはりその症状はあります。それからスペーサーは今年の2月からボルマチックを使っています。吸入速度は諏訪部先生のホームページを参考に自分では10秒くらいかけてゆっくりやっているつもりですが、もしかしたら少し速いのかも知れません。

もし吸入ステロイドが十分効いていないとすれば、特に発作が無くても発作止めの吸入(滅多に使いません)を使ってからの方がよいのでしょうか?(先生からのご返事にはそう書かれているような気がしますが)

>>発作止めを頻回に使用していると代謝が亢進し微熱となることもあります。吸入ステロイドの影響は聞いたことはありません。しかし、よく検査したわけですから、頭痛や倦怠感など症状がなければ、気にすることはないでしょう。また皮下脂肪の薄い痩せている方の場合、放散熱が多く体温が高めに出る場合があります。

→発作止めの吸入・経口薬は風邪をひいて本当に息苦しい時だけ使うようにしています。(この使い方がそもそも間違いなのでしょうか?)体もそんなに痩せている方ではないので、体温が高めと言うこともないと思います。喘息になる前はもともと35度台で低い方でした。

>>ピークフロー値が500近く吹けても、ジョギングで息苦しさを感じるのであれば、その値ではまだまだ不十分、すなわち気管支の炎症がまだ残っているのだと思います。従って、その間はジョギングは控えた方がいいですね。ピークフロー値がもっと高く安定するようになれば、息切れはなくなると思います。

→わかりました。本当に安定するまでは控えたいと思います。

>>この点は、先程の胸の苦しみとも関係するような気もしますね。ピークフロー値が基準値をクリアしていても、息切れや胸の苦しみが残るようなら、まだまだ上の値が出るはずです。これまでは、ピークフロー値が下がったときに吸入ステロイドを増やしているのですよね。ひとつの策は、ピークフロー値が元に戻ったからと吸入ステロイドの回数を元に戻さないで、そのままでしばらくピークフロー値がどう変動するか推移を見て見るのもいいでしょう。しかし、この点はよく主治医と相談して下さいね。

→ピークフローが500ぐらいで安定している時の吸入の回数は、主治医と相談して1日6パフにしています。ちなみに昨年入院していた病院では1日12パフぐらいまでは大丈夫ですよと言われていました。会社ではなかなか吸入することができないので、朝と帰宅時と寝る前に少し吸入数を増やして様子を見ようと思います。

以上、またいろいろと質問してしまったようで申し訳ありませんが、お手隙の時で結構ですので、ご返事をお願いします。

なお、またいろいろ質問させていただくことがあると思いますがよろしくお願いします。

<追加応答1>

今回のメールで状況がだいたいわかりました。

>>もし吸入ステロイドが十分効いていないとすれば、特に発作が無くても発作止めの吸入(滅多に使いません)を使ってからの方がよいのでしょうか?(先生からのご返事にはそう書かれているような気がしますが…)

→これは、「胸の苦しみ」が「不快感・ムカムカ」ということですので、発作止めは無理になさらなくて結構だと思います。また、吸入ステロイドの導入以前から存在しているので、やはり吸入ステロイドの直接影響とも考えにくいですね。

ただし、500近く吹けても吸入ステロイドを減らさないで、もう少しピークフロー値が上がるまで多めに吸入するのはトライしてみる価値はあると思います。そうすれば、ジョギングをしても息苦しさを感じることはなくなるかもしれません。

そして、ピークフロー値が上昇することで、もし「不快感・ムカムカ」が取れてくれば、やはりそれは気道炎症が残っていたための症状と考えられますね。逆に吸入ステロイドを増量することでその症状が悪化するようなら、やはり吸入ステロイドと関係あるかも知れませんので、また原因を探って行かなければならないかも知れません。

ちなみに、心電図や胃の方は調べましたか? もしこれらに異常がなければ、精神的なものの可能性が強いと思いますので、あまり心配することはないでしょうね。安定剤で治まるならしばらくは継続しても仕方ないでしょう。

では。


(2)心臓や胃腸は異常がありませんでした。

【048】35歳男性(事務職)の方より

<追加メール2>

お礼のご返事が遅くなってしまい申しわけありませんでしたが、先生のご意見を参考にさせていただきます。ありがとうございました。また、わからないことがあれば今後も時々質問させていただきたいと思っていますので、ご迷惑だと思いますがよろしくお願いします。

それから、現在の状況などを簡単にお知らせします。

喘息の方は比較的安定しています。(ピークフローは500前後)吸入ステロイドは1日9〜12パフで経口薬は使っていません。ただ、前回申し上げた胸の不快感は依然として続いています。会社を休む程ではありませんが、最近安定剤を服用することが多いです。

先生が気にされていた心電図は会社の健康診断でも特に異常はありませんでしたし、胃の方も昨年末内視鏡検査をしてもらいましたが同じく異常はありませんでした。やはり精神的なものでしょうか? 仕事などで悩みはありませんし、自分では特に思いあたる節はないのですが。とするとどうしても吸入ステロイドの影響ではないかと考えてしまうのですが…。もうしばらく様子をみようと思っています。

それでは、失礼します。

<追加応答2>

心臓や胃腸に異常がないなら、とりあえずは心配いりませんね。吸入ステロイドも今はベネフィットの方が大きいので、生活に支障がなければ減量すべきではないと思いますが、もしひどいようなら喘息の様子を見て減らすか中止するか、主治医とよく相談して下さいね。