(1)レントゲンで肺が汚いと言われました。

【045】16歳の喘息児をお持ちの男性から

<質問>

初めてメールをさし上げます。

私は今年16歳になる息子を持つ父親です。

息子は6歳頃小児喘息と診断され薬療法をとってきています。幸いな事にまだ入院だけはした事はありません。しかしながら高校1年になった今年学校での健康診断のX線検査で若いのに肺が汚れていると言われています。保健所(学校の委託先)からは特に何もしなくて良いような事を言われていますが、喘息治療の過程でこのような現象が起こるのでしょうか。起こるのなら治療に関し何かアドバイスが有りましたらお教え願います。

尚現在は咳はひどくなく98/4以降薬関係は使用していません。何時発作が起こるかわからないのでベコタイドをいつも所持しています。

ちなみに今までの治療経過を下記します。 

*ザジテンを8〜9年間毎日朝夕服用。
*発作の時気管支拡張剤を今までに3〜4本使用。
*ベコタイドを97/12月、98/1、2月で3〜4本使用。

・年齢:16歳、性別:男、職業:高校1年、身長:161 cm。
・小児喘息の有無:有り。
・初めて喘息と診断された時期:小学校1年。
・およその治療経過:上記。
・喫煙の有無あるいは喫煙歴:家族含めて無し。
・ペットなどの特殊な環境の有無:無し。
・吸入ステロイド使用の有無:有り。
・使用しているスペーサーの種類:不使用。
・ピークフローメーター記録の有無及びその機種:不使用。

多忙な中大変とは存知ますが、宜しくお願いします。

<応答>

メールいただきました。

>>初めてメールをさし上げます。私は今年16歳になる息子を持つ父親です。

→思春期の喘息は、いろいろと問題があります。病気がなくても、心身面での問題が多い昨今、健康教育が徹底していない日本では、若さから病気をコントロールする習慣に疎いこの世代では、喘息死が大変問題になっております。私も、高校生を何人か診ておりますが、発作止めだけで症状を抑え、定期受診をしない高校生がおります。「私の診療日記・012:思春期の喘息治療は難しい(平成9年8月29日)」で触れております。

しかし、逆に周囲の冷たい誤解に苛まれながら、病気に対して非常にまじめに取り組んでいる高校生もおります。「寄稿集(05)・(06)」で触れております。

あなたのお子さんはどのようなタイプなのでしょうか? 非常に興味があるところです。

>>しかしながら高校1年になった今年学校での健康診断のX線検査で若いのに肺が汚れていると言われています。保健所(学校の委託先)からは特に何もしなくて良いような事を言われていますが喘息治療の過程でこのような現象が起こるのでしょうか。起こるのなら治療に関し何かアドバイスが有りましたらお教え願います。

→これまでに肺炎を繰り返したりしたことがありますか? 明らかに肺炎と言われなくても、高熱を繰り返すような場合、軽い肺炎であったりすることはよくあります。またそうでなくても、風邪や気管支炎を繰り返すと、その名残りで、胸のレントゲンで肺が白く汚く見えることがあります。肺は、一度深い傷害(きず)を受けますとその傷は完全には修復されないという性質があります。従って、ある程度はきれいになっても、一生陰は残ると考えていた方がいいですね。それは、体の表面と同じ古傷ですから心配することはありません。

しかし、そのような古傷が残っていますと、今後も、風邪を引きやすいとか、いったん引くと治りにくいなどのエピソードは起こってくるかも知れません。喘息であるならなおさらですね。若さ故に無茶をしてしまうこともあるかと思いますが、それが大事に至らないように、健康に対して普段から目を反らさない習慣を付けることが大切であると思います。

>>尚現在は咳はひどくなく98/4以降薬関係は使用していません。何時発作が起こるかわからないのでベコタイドをいつも所持しています。

→ベコタイドを所持していることは大切ですが、普段は発作止め(ベロテック、サルタノール、メプチンなど)を肌身離さず所持することですね。ベコタイドは発作予防にはなりますが、発作止めにはなりません。

>>吸入ステロイド使用の有無:有り、使用しているスペーサーの種類:不使用

→せっかく吸入ステロイドをされていらっしゃるなら、スペーサーは是非使った方がいいですね。

では。


<追加メール1>

早速のご返事ありがとうございました。

先日のメールの内容で一部間違いがありましたので訂正します。

*発作止めに所持しているのはメプチンエアーです。

*スペーサーは使用しています、種類は日本グラクソ・ボルマチックソフトです。

私が約2年前より単身赴任で○○にいる為、家族との連絡でミスがありました申し訳けありませんでした。ご返事の内容について妻に連絡いたしました。

再度質問になりますが、肺が汚く見えるのはベコタイドとメプチンエアーの使い過ぎではないかと心配しています。使い過ぎで汚くなるのでしょうか? 肺炎の件ですが今までに肺炎を患った事はありませんし(軽い肺炎も)高熱を出した事もありません。風邪にかかる事もそんなにありません(年1回あるかないか)。(妻は息子の喘息に対しかなり神経質になっています。注意していると言った方が良いかも知れませんが)

質問に有りました息子の性格ですが、小学校の時は少林寺拳法を行っていました。中学校はテニス部で体は鍛えていました。以上の様に運動は行っており、喘息は治らないものの性格はまじめで正義感が強い方です。ただ自分で喘息の薬を飲み続けているので体には良くないと感じている様です。高校に入ってからもテニス部に入部し頑張っています。小学校の時から喘息である事は必要以外言わない様に妻が教えています。親ばかとは思いますが息子は素直な性格です。(妻に対しては時々逆らう様ですが…)

以上。

<追加応答1>

>>肺が汚く見えるのはベコタイドとメプチンエアーの使い過ぎではないかと心配しています。使い過ぎで汚くなるのでしょうか?

→これはまずないと思います。むしろ、不十分な使用法で気管支炎症が十分取れないと、気管支の壁が厚くなり、全体的に肺が汚く見えることがあります。ただし、私は実際にレントゲン写真を見ておりませんので、これ以上は推論になってしまいますので、コメントは控えさせていただきますが、単に肺が汚いだけでは心配する必要はないと思います。

お子さまは大変素直なようで何よりです。喘息に対してもまじめに取り組んで行けると思いますが、まじめさや我慢強さが故に喘息を拗らせないように願いたいですね。

では。