(1)乳幼児に全身性ステロイドをネブライザー吸入するのはどうですか?
【1008】喘息専門の小児科医より
<質問>
初めてメールさせていただきます。
私、喘息を専門にしている小児科医です。
現在は吸入ステロイドを使用できる小児では、喘息のコントロールもしやすくなりましたが、乳幼児など吸入が難しい年代では苦労しています。そこで、ご意見を聞かせていただければと思うのですが、静注薬の水溶性プレドニン、デカドロンなどを生食で希釈してネブライザーデで吸入するとして、気管支の炎症を押さえる効果は期待できるでしょうか?(副作用はどうでしょうか?)もし効果があり、副作用の面で心配が少なければ、吸入の困難な乳幼児の喘息管理に応用できないかと考えているのですが…。
<応答>
初めまして。
ご専門の先生からの質問はさすがに難しいですね。
>>静注薬の水溶性プレドニン、デカドロンなどを生食で希釈してネブライザーデで吸入するとして、気管支の炎症を押さえる効果は期待できるでしょうか?(副作用はどうでしょうか?)もし効果があり、副作用の面で心配が少なければ、吸入の困難な乳幼児の喘息管理に応用できないかと考えているのですが…。
→乳幼児への吸入ステロイドの適応はよく質問を受けます。ビニール袋のスペーサーなどを作ったり色々工夫して積極的に適応している施設もあるようです。しかし、どれだけ効率の良い吸入ができているかは疑問ですね。
水溶性ステロイドをネブライザーで吸入させる方法は確かに魅力的です。同じ考えですと、全身副作用の強いネオフィリンなんかもネブライザーで吸入しても良さそうなものですね。記憶は定かではないんですが、確か昔、水溶性ステロイドを吸入するという試みがなされたと聞いたことがあります。でも、臭いとか刺激性とかの何か問題があって、うまく行かなかったのではなかったかと記憶しています。私も興味があるので、今度年輩の先生に会ったら聞いてみたいと思います。こうした歴史的なことは先輩に聞いてみるのが一番早いですね。
これと似た話しですが、肺炎に抗生物質をネブライザー投与するという試みがなされたことがあったらしいのですが、どうも耐性菌を作りやすいという問題があり、誰もやらなくなったという話を聞いたことはあります。
ストメリンDに入っているデキサメタゾンを吸入することがすでに行われていますから、水溶性ステロイドを吸入することも特別な問題はないと思います。しかし、水溶性かどうかの如何に関わらず、ステロイドの吸入に関しては、やはり乳幼児ではうがいがうまくできないという問題が副作用上の大きなネックでしょうか。
もう一つは、ベクロメタゾンと違うのは、やはり代謝経路と作用の強さの問題ですかね。水溶性ステロイドは、吸入しても吸収されて全身に行き渡りますから、点滴と同じ事になります。発作止めネブライザーに入れるなら点滴するのと同じ事だと思いますし、ましてや定期的な予防吸入にこの水溶性ステロイドを入れれば、それこそステロイド連用の副作用が出てしまうかもしれません。また、ベクロメタゾンの抗炎症作用は、デキサメタゾンの60倍、ハイドロコーチゾンの1,800倍と非常に強力です。強力にして全身性副作用がない、これがベクロメタゾンの最大の魅力ですね。
ですから、私の願いとしては、今後は乳幼児でも効率の良い吸入ができるデバイスが開発されて欲しいということです。しかし、それ以前にもっと高年齢にも吸入ステロイドが普及することが先決で、需要の増大こそが新しい薬剤や便利なスペーサーの開発の源になると思うのです。
以上、あまり参考になりませんが、こんなところで。
この点に関して、明らかな情報が入りましたら、またメールしたいと思います。
では。