(1)気管支拡張剤はどの時点より減量あるいは中止へすればよいですか?

【1007】内科開業の先生から

<質問>

以前、先生の喘息に関する講演をお聞きして以来、私の医院ではベコタイドの吸入指導をしてからおよそ2週間以内に、以前よりずっと改善したという方々が殆どとなりました。

ところで、現在使用していた気管支拡張剤などはどの時点より減量あるいは中止へすればよいか考えております。ピークフロー値が目安でしょうか。ご指導頂ければ幸甚です。お願いいたします。

皮肉なもので、喘息患者だけはどうか来ないでと、心では願っていたのに喘息患者が患者を誘っているようです。

<応答>

>>ベコタイドの吸入指導をしてからおよそ2週間以内に、以前よりずっと改善したという方々が殆どとなりました。

→私としてもお役に立てて誠に嬉しい限りです。しかし、やはり先生の熱意があればこそ、それが患者さんに伝わっているのだと確信します。

>>現在使用していた気管支拡張剤などはどの時点より減量あるいは中止へすればよいか考えております。ピークフロー値が目安でしょうか。

→吸入ステロイドが効いてくるとまず直面するのがこの薬剤減量ですね。大変難しい問題ですが、逆に指導がうまくいっている証しであると思います。

私は、妊娠などの特殊な場合を除いては、こちらからそれまで飲んでいた薬の中止を持ちかけることはあまり致しません。しかし、発作が治まり咳や痰の絡みがなくなったら、患者さんの希望があれば、気管支拡張剤はすぐ中止します。

ほとんどの場合、患者さんは吸入ステロイドで調子が良くなって参りますと、飲み薬を勝手に止めるようになります(この際、吸入ステロイドを自己判断で止めて飲み薬のみを続ける方がおりますが、これだけはやらないようにと私は日頃より患者さんにきつく話しておきます)。その理由はこうです。発作の頻発していた頃に、テオドールなどをつい飲み忘れると必ず発作が起きますから、これは大切な薬だとわかります。しかし、吸入ステロイドで良くなってきますと、ついテオドールなどを飲み忘れましても、発作が起きないわけですから、自分からその違いに気付くわけです。そして、何回か中止しても発作は起きないと自信がついた時点で、外来で「先生、この薬いつまで飲むんですか?」とか、「この薬はもう飲まなくても大丈夫です」とか、話しをしてくれるようになります。前もって実験済みというわけですね。

従って、発作が頻発していなければ、吸入ステロイドを続けている限り基本的に気管支拡張剤はいつでも中止可能だと思います。もし発作が起きたら頓用のベロテックやサルタノールなどの気管支拡張剤があれば十分です。ピークフローメーターがあればそれに越したことはありませんが、この場合は必ずしも必要ではないと思います。経口気管支拡張薬を中止して、その頓用回数があまりに多いようなら、また経口薬を再開すれば宜しいと思います(もちろん吸入指導や生活指導を再度行うことは前提です)。

しかし、吸入ステロイドの減量・中止は慎重に行くべきだと思います。長期的に観察しなければ、本当に薬剤が不要かどうかわからないとされています。3ヶ月単位で観察しなくてはならないと言われています。この場合はピークフローメーターは必需品です。この点に関しては、ホームページの「寄稿集」の中でいくつかの典型例を紹介しておりますので、ぜひご参照下さい。

>>皮肉なもので、喘息患者だけはどうか来ないでと、心では願っていたのに喘息患者が患者を誘っているようです。

→喘息は一人の患者さんを丁寧に治して上げますと、何カ月後か、何年後かに必ず仲間を連れてきます。風邪や高血圧などと違ってすごく感謝されますし、また胃カメラなどの機器を使わずとも、内科医としての“腕”が発揮できるとてもやりがいのある疾患かもしれませんね。先生もすでに喘息の名医として評判になっているはずです。

先生の益々のご活躍をお祈りいたします。

<追加メール>

早速のご教授メール有り難うございます。拝見しながらほっと致しました。経口薬を早く無しにして…とばかり考えていましたので、しばらくこのまま安心して患者さんへの激励と指導に重点をおいて観察いたします。

お風邪をひかれませんように。とりいそぎ、お礼まで。