(1)吸入ステロイドは効果がないのでごみ箱行きでした。

【067】28歳男性の方から

<質問>

諏訪部先生はじめまして。

タアノシンと申します。

ホームページ拝見しております。この「寄稿集」とAICHANの「Zensoku Web」のおかげで現在、毎日を大過なく過ごしています。いずれお便りを出そうと考えていましたが、つい出しそびれてました。

柔道部ということでどんなイメージを持たれたでしょうか。私は階級でいうと軽量級で、166 cm、49 kgです。柔道やってたというと誰もが「信じられない」といいます。体を鍛えれば喘息が良くなるかも、と思って始めた柔道ですが、結果的にさらに悪くしてしまったみたいです。ゼーヒュー言いながらも走れたマラソンが、数分でリタイヤするようになりましたから。

私の喘息の歴史は:

8歳:下校途中に発作が起きる。非常に空気の悪いところだった。

9〜10歳:山が見えるところに引っ越す。少し軽くなる。

11歳:○○に引っ越す。喘息悪化。

13歳:初めて喘息で入院する。

19歳:夜中に意識を失って救急車で入院(2週間くらい)。

22歳:プータローのとき入院(10日くらい)。

25歳:仕事が終わって帰宅後、入院(2週間くらい)。

28歳:夜中に救急車で入院(27日)。半分はICUで眠りつづける(麻酔で)。死ぬかと思った。

9〜10歳のときに、インタールを吸っていた記憶があります。11〜17歳まで減感作療法をおこなってました。引っ越し(17歳)と同時に中断。気管支拡張剤を処方され始めたのは、13歳からです。これが無いと日常生活は出来ません。引っ越し前(17歳)はアルデシン、その後はベコタイド50を処方されていた。1日1パフを3回〜4回の指示でしたが、何の効果も無いのでそれすらもやらず殆どごみ箱行き。運動すると発作が起きます。

薬を飲んで、発作が起きたら気管支拡張剤、それでだめなら病院で吸入、それもだめなら点滴。喘息とはこういうものだ、ほかに何かやりようがあるか…と思っていました。今回退院した時は正直、将来に何の展望も無く放心状態で、何もやる気が起きませんでした。ようやくWebでも見ようかと思い、喘息関係のホームページを見ていたとき、Zensoku Webを見ました。ずいぶん前に見た時にはあまりに気の毒でかける言葉も浮かびませんでした。私はあきらめてる人間でしたし。少し前に見た時は、「ベコタイド? あの役に立たないやつか。まあ、効く人もいるんだな」、今回見た時は、「もしかしたら、効くかな」、何かの偶然か、私のガラス玉が取れました。丁度ベコタイド100とプレドニンとメドロキシンを処方されてました。

結果は予想を上回るものでした。ステロイドの投与が終わった後も、発作が起きません。朝までぐっすり眠れます。風邪をひいても苦しくなりません。喘息で苦しんでいた私にとっては今は天国にでも住んでるようです。ところで、現在ピークフローが下がってきています。やっぱり一筋縄ではいきません。でもこれからは喘息とうまく付き合っていけそうです。

今回の経験で一番怖かったのは、喘息ではなく自分が希望を失いかけていたことでしょうか。私はすんでのところで救われました。

まとまりのない文章ですみません。なんせ書き物が大の苦手なものですから。これも3日くらいかかってます。私もホームページを作ってますので、暇な時(ってあるかな?)にお越しください。それでは失礼します。

<応答>

タアノシンさん。

詳しいメールありがとうございました。大変参考になりました。

不思議だと思うかもしれませんが、私は喘息の方が病状や体験記を書いたのを読むのがとても好きです。とても参考になるのです。医学の教科書に載っていないことがたくさん書かれているからです。また、多くの喘息専門家でさえ知らないことがたくさん書かれています。そして、何とかこうした医者や世間に喘息のことをちゃんとわかってもらわなければと、あせりにも似た気持ちにさせられます。

>>28歳:夜中に救急車で入院(27日)。半分はICUで眠りつづける(麻酔で)。死ぬかと思った。

→危なかったんですね。でも助かって本当に良かった。

>>今回退院した時は正直、将来に何の展望も無く放心状態で、何もやる気が起きませんでした。ようやくWebでも見ようかと思い、喘息関係のホームページを見ていたとき、Zensoku Webを見ました。ずいぶん前に見た時にはあまりに気の毒でかける言葉も浮かびませんでした。私はあきらめてる人間でしたし。少し前に見た時は、「ベコタイド? あの役に立たないやつか。まあ、効く人もいるんだな」今回見た時は、「もしかしたら、効くかな」何かの偶然か、私のガラス玉が取れました。

→Zensoku Webにはかなり以前からアクセスしていたんですね。実は、私も最初に訪問した頃は、今時喘息でこんなにコントロールの悪い方がいるのか、はっきり言ってびっくりしました。私の患者さんにはあんなにコントロールの悪い患者さんはほとんど一人もいなかったからです(今となっては懐かしい思い出ですが…)。具合の悪い方といえば、私の指示を守らない方か、極端に理解力の乏しい方のみで、AICHANのような方がなぜ良くならないんだろうと不思議で仕方ありませんでした。でも、まだまだこのような患者さん(しかもインターネットを見れない方はもっと)はたくさんいるし、医者の方にもその頃の私と同じ認識の方がたくさんいます。まだまだ頑張らなければなりません。

>>結果は、予想を上回るものでした。ステロイドの投与が終わった後も、発作が起きません。朝までぐっすり眠れます。風邪をひいても苦しくなりません。喘息で苦しんでいた私にとっては今は天国にでも住んでるようです。ところで、現在ピークフローが下がってきています。やっぱり一筋縄ではいきません。でもこれからは喘息とうまく付き合っていけそうです。今回の経験で一番怖かったのは、喘息ではなく自分が希望を失いかけていたことでしょうか。私はすんでのところで救われました。

→本当に良かったですね。今度ぜひ、ピークフロー値を教えて下さい。できればホームページでときどき公開して下さると私もためになります。

では。


(2)無発作1周年記念の報告。

【067】28歳男性の方から

<追加メール1>

諏訪部先生こんにちは、タアノシンです。ご無沙汰しております。

4月24日で退院後1年が経過しました。おかげさまで、その間は発作を起こさずに過ごすことが出来ました。

+++

昨年、人工呼吸器をつけて眠りつづけていた時に見た夢の一つに、喘息が治った夢がありました。夢の中で何故か喘息の手術(?)をし、1回目では良くならず、2回目に成功しました。

+++

そして、すっかり調子の良くなった私が夢の中で先生に「先生、私の喘息は完治したと言っても良いんですよね?」と言ったすこし後に、麻酔が切れて目を覚まします。先生の返事は聞けませんでした…。

最後に見た夢が正夢になるとは。治ったかどうかはともかく、これは確かに私が望んでいた生活です。

…色々書きたいことがあるんですが、さっぱりまとまりません。これで失礼します。

<追加応答1>

タアノシンさん。

お久しぶりです。

無発作1周年、おめでとうございます。

喘息管理にとって、節目節目の成果はとても重要です。入院しなかった、発作がなかった、ベロテックを使わなかった、内服を止めた、…。人それぞれに段階はありますが、それぞれに喜びはあります。無発作が一年続いたわけですから、ぜひ次の目標を設定して頑張って下さい。

>>最後に見た夢が正夢になるとは。治ったかどうかはともかく、これは確かに私が望んでいた生活です。…色々書きたいことがあるんですが、さっぱりまとまりません。これで失礼します。

→気持ちは大変良く伝わってきます。タアノシンのホームページ(→「リンク」参照)はときどき覗いていますよ。日記やコメントは短いですが、とても感情が伝わってきます。私のように長々と書くと感動が薄まることだってあります。

では、今後も頑張って下さい。

また。


(3)無発作2周年記念の報告。(平成12年4月27日)

【067】28歳男性の方から

<追加メール2>

諏訪部先生。

こんにちは、タアノシンです。お久しぶりです。

約1年前にお便りを出しました。そして、今回のメールも無発作のお知らせです。4月24日で無発作2周年です。

無発作ではありますが、ピークフロー値はグリーンとイエローの間を行ったり来たりです。それとちょっと運動不足でしょうか。どうもパソコンの前に座ってしまいます:-)

今の状態に感謝しつつも、正直、その前の20年は何だったのだろう?…とふと思ったり、せめて10年前ぐらいに知っていればと思ったりもしました。

でも、今は逆のことを考えています。いったい今の自分は何なんだろう、と。理不尽に襲ってくる発作に対しての振舞い・思考は自分というもののかなりの部分を占めていることに気がつきました。なにか自分の一部が無くなったのか、それともこれがごく普通の状態なのか…。

…なんてことを「たまに」考えたりしてます。普段は無発作生活に満足して日々暮らしています。ICUで呆然としながら、長生きできないな、と思っていたのは幻のように思います。

最後になりましたけど、「寄稿集」の管理お疲れ様です。もともと激務でしょうから、あまりご無理なさらずに…。

それでは失礼します。

<追加応答2>

タアノシンさん。

お久しぶりです。

最近は新規でメールを頂く方が増えている中で、タアノシンさんのような“古い読者”の方からメールを頂くことはとても嬉しいことです。

無発作2周年とのこと、本当に良かったですね。

タアノシンさんのホームページ(→「リンク」参照)で書かれている喘息体験にまつわるショート・メッセージはいつも読みながら考えさせられております。それだけ深い傷だったということなのでしょうね。でも、このままの状態が続けばきっと傷は消えてくれるでしょう。そして、今の自分こそ“当たり前の自分”なのだと意識できる日が来ると思います。

次は3周年の無発作報告を期待しております。でも、これは決して発作が起きないことがいいことではないと思います。仮に発作が起きそうになっても、それを最小限に食い止めること、いち早く立ち直れること、そしてそれを繰り返さないこと、そちらの方がより重要であると信じています。

ぜひ、頑張って良いコントロールを続けて下さいね。

では。