(1)「発作止めなどいらない」という主治医の元で治療を続けてもよいのでしょうか?
【070】29歳男性(会社員)の方から
<質問>
はじめまして。
突然のメール失礼いたします。今日はじめて、先生のホームページを拝見しました。たくさんの方々からの質問を読んで、私も思い切って質問してみようと思いました。
私は29歳の男性、職業は会社員(精密機械の修理)です。身長は175センチ、体重は??キロでたいへん太っています。小児喘息はありませんでした。喫煙は昨年6月まで約10年間、ペットはいません。
はじめて喘息の症状が出始めたのは昨年の中頃です。風邪をひいた後、咳がでて、呼吸が苦しく、喘鳴もしていました。それまで、血圧の治療を受けていたかかりつけの総合病院にいって診察を受けたところ、「風邪でしょう」ということで風邪の薬をいただきました。
ところが2週間くらいたっても良くならず、思い切って友人の薦める町の小さな医院にいってみました。ここが私の今の主治医です。そこではじめて「気管支喘息の疑いがある」と言われました。レントゲンと血液検査(アレルギー)をした結果、レントゲンは異常なし、アレルギーは杉花粉、ハウスダストに弱いとのことでした。その日から数日、毎日点滴治療に通いました。
そこの先生は、血圧の薬が咳を誘発するということで、「ニトプレス10 mg」という新しい血圧の薬をいただきました。この薬は1日1回、朝食後に飲んでいます。あと、喘息の薬に「タウナス」という吸入薬、「Unicon 200 mg」という飲み薬をいただきました。「タウナス」は1日2回、朝と夜に1吸入ずつ、「Unicon」は寝る前に2錠ずつ飲んでいます。その医院には2年間、2週間に1回血圧の治療のため通っています。
私は必ずといって良いほど、1年に2回ほど風邪をひき、その後必ず喘息の発作がおきます。その度に点滴治療をしているのですが、これは喘息をコントロールできているといえるのでしょうか?
発作がないときはいたって元気で走り回っても平気です。先日、発作がひどいときに「緊急時の気管支拡張剤をください」と主治医に言ったのですが、「そんなものは必要ない。今の薬だけでいいよ」と言われました。その頃から、私はとても不安になってきました。2年間通院していますが、スペーサーやピークフローメーターの話は1回も出ません。思い切って主治医をかえようとも思ったのですが、2年間診ていただいた先生を裏切るようで、なかなかふみきれません。
今、現在も発作が起きています。夜、寝ていて息苦しくて目が覚めたりするととても不安になります。このままこの治療を続けてもよいのでしょうか? 飲み薬は飲みつづけても平気なのでしょうか?
両親もこの病気に対して理解がなく、誰にも相談できません。お忙しいところ申し訳ありませんが、どうかアドバイスよろしくお願いします。
乱筆、乱文、お許しください。
<応答>
初めまして。
メール拝見しました。
>>身長は175センチ、体重は??キロでたいへん太っています。
→これは謙遜でしょう。そんなに太ってはいないと思いますよ。(自己の正当の意味があったりして…)ですが、高血圧というのは年齢を考えますと若すぎますね。他に腎臓や内分泌疾患など何か合併症があるのでしょうか? コレステロールは高くないですか? 食生活は、塩分や脂肪分を取りすぎていませんか? 基礎疾患がない高血圧であれば、喘息というひとつの病気がコントロールできるようになると、いつかはコントロールできるようになると私は信じております。どうか薬に頼らず自己管理で病気を克服する癖をつけて頂ければと強く思います。
>>ところが2週間くらいたっても良くならず、思い切って友人の薦める町の小さな医院にいってみました。ここが私の今の主治医です。そこではじめて「気管支喘息の疑いがある」と言われました。レントゲンと血液検査(アレルギー)をした結果、レントゲンは異常なし、アレルギーは杉花粉、ハウスダストに弱いとのことでした。その日から数日、毎日点滴治療に通いました。
→肺活量の検査は行われなかったのですね? この検査は、とても簡単で情報が多い検査なのですが、なかなか普及していないのが残念です。
>>そこの先生は、血圧の薬が咳を誘発するということで、「ニトプレス10 mg」という新しい血圧の薬をいただきました。この薬は1日1回、朝食後に飲んでいます。あと、喘息の薬に「タウナス」という吸入薬、「Unicon 200 mg」という飲み薬をいただきました。「タウナス」は1日2回、朝と夜に1吸入ずつ、「Unicon」は寝る前に2錠ずつ飲んでいます。その医院には2年間、2週間に1回血圧の治療のためかよっています。
→喘息に関しては、吸入ステロイド(タウナス)を処方してくれていますので、理解はあるようですね。ただし、「発作止めなどいらない」と言う発言は喘息のなんたるかを知らないと取られても仕方ないですね。ちなみに、吸入指導は受けましたか? スペーサーの話しがないとすれば、恐らく指導はないでしょうね。
>>私は必ずといって良いほど、1年に2回ほど風邪をひき、その後必ず喘息の発作がおきます。その度に点滴治療をしているのですが、これは喘息をコントロールできているといえるのでしょうか? 発作がないときはいたって元気で走り回っても平気です。
→まだ発症して1年半と間もないようですから、発作間欠期はさほど症状がないのでしょうね。しかし、今の状態を続けると、調子の良い期間がだんだんと短くなり、悪化することが予想されますね。
>>その頃から、私はとても不安になってきました。2年間通院していますが、スペーサーやピークフローメーターの話は1回もでません。思い切って主治医をかえようとも思ったのですが、2年間診ていただいた先生を裏切るようで、なかなかふみきれません。
→他に吸入療法に明るい専門の先生がいれば、義理立てせず変わった方がいいですね。病気はあくまで良くなってなんぼですから、先生に義理立てする必要はないと思います。他の病気でも、今後もその先生にお世話になる可能性があるとすれば事情は別ですが…。
>>今、現在も発作が起きています。夜、寝ていて息苦しくて目が覚めたりするととても不安になります。このまま、この治療を続けてもよいのでしょうか? 飲み薬は飲みつづけても平気なのでしょうか?
→その不安を正直に主治医にぶつけてみて下さい。発作止めをくれないというなら、その先生が、夜間でも、休日でも、いつでも診てくれると考えているからではないですか? 発作止めは出さない、時間外は診ないというなら、それはあまりに無責任ですから、早めに他にかかった方がいいですね。
ただし、タウナスを処方してくれているようなので、スペーサーを使ってうまく吸うことができれば、後は自分の力で良くすることは可能です。このホームページの「特集・吸入療法」をぜひ熟読して下さい。ピークフローメーターも自分で入手して、このホームページを見ながら、自己管理していけるのではないでしょうか? 吸入指導や自己管理に精通した医師はそう多くいるものではありません。まず可能な限り、自分で努力してみるのも一策ですね。
では。
【070】29歳男性(会社員)の方から
<追加メール1>
こんばんは。
さっそくのお返事ありがとうございます。大変参考になりました。心の不安が少し取れました。
高血圧についてですが、私の家族全員(祖母、両親)血圧が高く、私も子供の頃から高かったため、何度か入院して検査も受けましたが、特に疾患はないようです。血圧は薬を飲んで140-85ぐらい、薬を飲まないときは160-100ぐらいでした。コレステロールについては会社の健康診断では特に異常はありません。
昨日、メールを書いた後にじっくりと「質問と応答」のページを読みました。最初は気づかなかったのですが、先生にメールを書いたことによって心に余裕ができたせいか、私と同じ悩みを持った方の質問を見つけました。29歳男性の方の「主治医をかえるべきかなやんでいる」という質問です。
私の診ていただいている先生も内科・呼吸器科を専門としている開業医の先生で、今までなかなか自分が本で読んだことについて質問できませんでした。それは、診ていただいている先生のプライドを傷つけてしまうのではないか、ということを考えてのことです。私は、血圧のほうも今の先生に診ていただいているので、できれば今後もこの先生のもとで治療に励みたいと考えていました。
今日も仕事にいったのですが、少し動いただけで呼吸が苦しくなったため、会社を早退して治療にいきました。そこで、思い切って心の不安を先生に話しました。特に、夜間の発作についてとても不安であるということを話しました。すると先生は今まで以上に時間をかけて喘息発作について説明してくださり、夜間の発作が起きたときに飲みなさいと「プレドニゾロン」という飲み薬をくださいました。また、発作がひどいときには我慢しないで救急車で救急救命センターへ行きなさいと言われました。今日は点滴をしたせいか、発作は治まっています。苦しいときは我慢しないで、明日も、あさっても点滴に来なさいと言われました。
先生のお返事によると、今後症状が悪化することが考えられるとのことですがどういうことでしょうか? やっぱり主治医をかえたほうがいいのでしょうか? 私は、今の先生に出会う前、いろんな血圧の薬を飲んで目が回ったり、体調を崩したりしたため、なるべくなら主治医をかえたくはないのですが…。
あと、スペーサーとピークフローメーターについてですが、個人でも入手可能なのでしょうか。とりあえず、主治医の先生に相談してみようと考えています。
あと、最後にもう1つ質問があります。
喘息をコントロールできている状態というのは、風邪をひいた際も発作が起きなくなる状態をいうのでしょうか? それとも慢性的な症状はないが風邪をひいた際には多少発作が起きるが、それは仕方がないという状態をいうのでしょうか? 主治医の先生は、風邪をひかないことがもちろん大切だが、もしひいてしまって発作が出たときにも軽くすませるために「タウナス」の毎日の吸入が大切だとおっしゃいます。つまらない質問ですが、(もしかすると質問のページに書いてあるかもしれませんが…)どうか喘息のコントロールについて教えてください。
以上、長々と書いてしまいました。おいそがしいところ申し訳ありませんが、ご返答よろしくお願いします。
それでは。
<追加応答1>
メール拝見しました。
>>私は、血圧のほうも今の先生に診ていただいているので、できれば今後もこの先生のもとで治療に励みたいと考えていました。
→今の先生は、やはり呼吸器専門の先生のようですね。とても話の分かる先生のような印象を受けました。基本的には、今後ナウナスを定期的に吸入して、喘息予防に重点を置いて行けばそれで良いと思います。
>>今日は点滴をしたせいか、発作は治まっています。苦しいときは我慢しないで、明日も、あさっても点滴にきなさいと言われました。
→普通は、症状が良くなったからと点滴をやめてしまいますが、本当はそれでもまだまだなんだと言うことが、ピークフロー値を付けていると良くわかるようになります。できれば早めにピークフローメーターを導入した方が良いですね。それから、どうでしょう、先生の言葉に甘えて、少し楽になったぐらいで中止せずに、もう少し点滴に通ってみてはどうでしょうか?
>>先生のお返事によると、今後症状が悪化することが考えられるとのことですが、どういうことでしょうか?
→これは一般論です。また、私の経験論でもあります。つまり、最初は、発作が年に2回という方でも、ひどい風邪を拗らせたり、仕事が忙しいなどの要因が続くと、それを機会に悪化することが多いということです。もちろんそうでない方もおります。
>>やっぱり主治医をかえたほうがいいのでしょうか?
→今の先生の治療だと悪化するという意味ではありませんので、誤解なく。このままの状態を放置しておくと、悪化することが多いですよという意味です。
>>あと、スペーサーとピークフローメーターについてですが、個人でも入手可能なのでしょうか。とりあえず、主治医の先生に相談してみようと考えています。
→そうですね。それでも入手不可能なら、またメール下さい。入手ルートをお教えします。私のホームページでのアドバイスは、症状に基づくのアドバイアスはなるべく避けるようにしています。症状は客観的でないからです。ピークフロー値がわかればある程度は客観的なアドバイスがメール上でも可能になります。
>>喘息をコントロールできている状態というのは、風邪をひいた際も発作が起きなくなる状態をいうのでしょうか? それとも、慢性的な症状はないが風邪をひいた際には多少発作が起きるが、それは仕方がないという状態をいうのでしょうか?
→これは、それぞれにレベルがあります。発作が頻発している方ならまず発作がなくなること、次に発作が起きなくなること(つまり予防)、次に健康人並みの生活が送れるようになること(こうなると風邪を引いても発作は起きなくなります)、そして薬剤が不要になること、です。喘息は、ここまで良くすることができる病気です。しかし、人それぞれに生活環境の違いや社会的状況が違うので、皆同じように良くなることはできないのが現状なのです。このホームページでは、色々な方が紹介されていますので、じっくり読んでみて下さい。
>>主治医の先生は、風邪をひかないことがもちろん大切だが、もしひいてしまって発作が出たときにも軽くすませるために「タウナス」の毎日の吸入が大切だとおっしゃいます。
→その通りですね。タウナスの効果を信じて、頑張って見て下さい。
では。
<追加メール1-1>
こんばんは。
さっそくのお返事、ありがとうございます。
とても参考になりました。今後もがんばって吸入療法を続けていきたいと思います。
また、なにかありましたらメールを書きます。
今後も、よろしくお願いします。
本当にありがとうございました。