(1)喘息ですが薬に縛られる生活はいやなんです。

【071】34歳男性(サラリーマン)の方から

<質問>

はじめまして。

喘息のことで悩んでおり、ホームページを検索中によいページにヒットしました。早速で申し訳ありませんが、私の疑問に応えていただけると幸いに存じます。

注意にありましたように下記の必要事項を列記いたします。

(1)年齢・性別・職業・身長(体重は不用):
 34歳、男性、サラリーマン、173 cm

(2)小児喘息の有無:無し

(3)初めて喘息と診断された時期:1997年1月

(4)およその治療経過:

それ以前:中2より花粉症がひどく、2、3月は市販の抗ヒスタミン剤で押さえていたが、5年ほど前から、杉花粉の過ぎた時期からかなり粘度の高い痰が肺にたまるようになり、これがひっかかって咳が頻繁に出るようになった。だいたい9月頃には治まっていたが、だんだん期間が長くなってきた。

1996年12月26日:朝あまりに咳が激しいので、病院に行くとレントゲンをとったのちに「好酸球性肺炎」と診断され年末年始を病院ですごした。プレドニンによる治療。入院中、アレルゲンの検査を行い、猫・杉・ひのき・かもがや・はるがやに対しアレルギーがあると判明退院後は徐々にプレドニンを減らしながらも飲んでいたからか絶好調であった。切れてしばらくしてからまた咳が出るようになり、寝ている間も咳がとまらず寝ても疲れがとれない。寝汗がひどい。

1997年3月:明け方肺がつぶれるような感じでイキが出来ず、妻に病院につれて行かれる。「喘息発作」と診断、また2週間ほど入院。プレドニンで治療。その後、定常的にベコタイド50で予防をしつつ、発作時にはサルタノールで沈めるよう指導受け。また気管支拡張剤・去痰剤を服用するようになる。咳は時々出るが、夜は眠れるようになり、その後平衡状態。

1997年12月:前から考えていた花粉症の治療のために、耳鼻科を訪れる。以前CTを取ってもらった医者で、鼻中隔碗曲症と診断される。手術を勧められたが、日常生活にそれほど支障もなかったのでせず。しかし花粉症の季節には気道の細い方がつまる。12月〜翌年1月にかけて8回の予防注射を1度/週うちにいく。また抗ヒスタミン剤を処方され、その注射が効いている間は咳も全く出ず。

1998年6月:杉・カモガヤの季節は難なく乗り切ったが、だんだんまた咳が出るようになった。以前のようにゼリー状の粘度の高い痰ではないが、あいかわらず黄色い。これが気管支の咳のスイッチにしょっちゅへばりついて咳・咳払いをしている。漢方薬(小青竜頭他多数挑戦)で根本的な体質改善を狙うが思ったように効果があがらない。しかしながら、前よりはだいぶいい。病院からもらったベコタイドとサルタノールはだいぶ余っている。(使わなくなった)9、10月は殆ど咳もでず、絶好調。

1998年11月:気候の変わり目だからか、また咳が出始める。寝ているときに肺が少しつぶれる感じあり。忘れかけていた悪夢がよみがえる。残っていたベコタイドを朝・晩吸入。漢方はやめてしまった。根本的治療を決意。     

(5)喫煙の有無あるいは喫煙歴:生まれてこの方吸ったことは一度もないです。

(6)ペットなどの特殊な環境の有無:自宅は社宅で築数十年の老朽アパート。ほこりがひどい。嫁の実家は猫を飼っている。実家に行くと鼻水・咳・くしゃみがひどい。

(7)吸入ステロイド使用の有無:ベコタイド50を朝晩2回(4吸入/回、ボルマチック利用)。会社でもできるときは吸入(チェスペーサ利用)。

(8)使用しているスペーサーの種類:ボルマチック、チェスペーサ。

(9)ピークフローメーター記録の有無及びその機種:利用していません。

さて前置きが長くなりましたが質問です。

結果から申すと、この病気に対しどう対処するのが最善なのかということです。できれば完治させたい。一般にアレルギー性のものは完治は無理だと聞いてますが、漢方で体質改善すれば治るような話も聞きます。(それで漢方を試した)おそらく花粉症も喘息も原因は同じだと考えているので、両方同時に対処が可能なのではないかと考えてますが、いかがでしょうか。もともと水泳の選手をずっとましたし、運動もよくする方だったので喘息などとは無縁だと思っていたので、信じたくなかったのです。でも実際こうやって苦しんでるし、ここは覚悟を決めて根本的な治療を受けようと考えています。

ホームページによれば、吸入ステロイドを継続使用することで症状を和らげるという対処療法的方法を勧めておられるようですが、これを継続することでいずれは使わなくても良いようになるのでしょうか? あるいは他の療法と併用すればそれは可能でしょうか。とにかく薬に縛られる生活はいやなのです。そういう生活に戻れるでしょうか。そこが一番ポイントです。どうかよいアドバイスを御願いいたします。

もし可能であれば、○○近郊にて専門治療が受けられるような病院・先生などご存じでしたらお教えいただけると幸いです。

では。

<応答>

返事遅くなりました。いつもはこんなに遅れることはないのですが、いろいろな所用が重なってしまい、返事を書けませんでした。

海がお好きなのですね。

>>1996年12月26日:朝あまりに咳が激しいので、病院に行くとレントゲンをとったのちに「好酸球性肺炎」と診断され年末年始を病院ですごした。

→「好酸球性肺炎」の診断はレントゲンだけ行われたのでしたか? 気管支鏡検査などは行いましたか? この病気は実は診断がかなり難しいのです。レントゲン写真(恐らく肺炎様の陰影があったのだと思います)だけで診断を付けたとすれば、恐らく「PIE症候群」ではないかと思います。これは、「質問と応答・【060】:49歳男性、通信関係の方から」である方からの質問で扱っています。

>>1997年3月:明け方肺がつぶれるような感じでイキが出来ず、妻に病院につれて行かれる。「喘息発作」と診断、また2週間ほど入院。

→今度はレントゲンは異常なかったのですね。

>>結果から申すと、この病気に対しどう対処するのが最善なのかということです。できれば完治させたい。一般にアレルギー性のものは完治は無理だと聞いてますが、漢方で体質改善すれば治るような話も聞きます。(それで漢方を試した)おそらく花粉症も喘息も原因は同じだと考えているので、両方同時に対処が可能なのではないかと考えてますが、いかがでしょうか。

→ホームページでも述べておりますが、喘息を根治させることは今の医学ではできません。喘息は、ダニなどのアレルギー反応によって引き起こされ、その後の引き続いて起こる気管支炎症が病気の本体とされています。アレルギーを遮断し続けたり、炎症を吸入ステロイドで鎮め続けたりすることは可能ですが、アレルギーの記憶を消すことはできないのです。これが不可能な限り、喘息ひいてはアレルギー性疾患の根治は恐らくあり得ないでしょう。

漢方で良くなった」−という一部の情報もありますが、多数の患者に試しての確立されたデータはありませんし、本当に根治なのかと聞かれれば、やはり“?”でしょう。

>>ホームページによれば、吸入ステロイドを継続使用することで症状を和らげるという対処療法的方法を勧めておられるようですが、これを継続することでいずれは使わなくても良いようになるのでしょうか?

→吸入ステロイドも喘息を根治させるものではないという意味では“対症(処)療法”と言えるでしょうね。もし、引き起こされた気管支の炎症を完全に取って、その後完全に原因抗原から遮断された環境(例えば宇宙船のようなクリーンルームの中で生活する、あるいは抗原遮断のできるマスクを24時間使用する、など)で生活することができれば、恐らく何の薬を使わずともすむということは可能だと思います。しかし、人間は生きて行く上でそのようなことは不可能です。従って、多少は抗原に暴露されながらでも炎症がひどくならない道を選択することしかできないのではないでしょうか?

>>あるいは他の療法と併用すればそれは可能でしょうか。とにかく薬に縛られる生活はいやなのです。そういう生活に戻れるでしょうか。そこが一番ポイントです。

→他の療法と併用して良くなる確立された方法があるならば、何百万もの喘息患者はとっくの昔からこの世にいないでしょうね。

誰しも薬に縛られるのは嫌なことです。しかし、ピークフロー値をモニターすることで、長期的に薬のない生活を送ることは可能です。しかし、それは相当な自己管理という努力が必要です。

>>もし可能であれば、○○近郊にて専門治療が受けられるような病院・先生などご存じでしたらお教えいただけると幸いです。

→あなたも○○なのですね。不思議なことに、この広い日本、○○からのお便りは4人目なのです。同じ地方の他の県からは1件もありませんから、○○には喘息の何か特殊な事情があるのでしょうか? 何となく因縁を感じてしまいます。

で、申し訳ありませんが、まったく○○に関しては情報がありません。ただ、お手元に吸入ステロイドがあるようですね。もう一度、吸入ステロイドを見直して、じっくりつきあってみては如何ですか? 専門医が近くにいなくても、吸入ステロイドさえあれば喘息を良くできている方がたくさんおります。

このホームページの「特集・吸入療法」でしっかり操作を身につけ、できればもう少し回数を増やしてみては如何でしょうか? ベコタイド1日200マイクロはあまりにも少なすぎます。その10倍くらいまで使っている方もたくさんおります。それが無理なら、とりあえず800マイクロ(16吸入)くらいはどうですか?

返事が遅れた割に、あまり期待に応えられなくて申し訳ありません。

では、お大事に。

<追加メール>

ご返事を頂きありがとうございました。

最近は先生のページをほぼ毎日見るようになっています。

このようなホームページがあるというのはホントに助かります。

さて。

>>いつもはこんなに遅れることはないのですが、いろいろな所用が重なってしまい、返事を書けませんでした。

→全く問題ありません。ボランティアで行っておられることは十分承知しておりますので、気長にお待ちしておりました。実際病院での説明よりも理路整然として明快です。直接診察が無いことを除けば、病院に通院するよりよっぽど良いような気もします。

>>海がお好きなのですね。

→そうです。水関係のスポーツは大得意です。そのかわりというか、球技が非常に苦手です。

>>「好酸球性肺炎」の診断はレントゲンだけ行われたのでしたか?

→最初の入院の際、レントゲンで影があり、肺炎は間違いないのですが、もう少し詳しく調べてみないと、ということで入院後、肺カメラ(これが気管支鏡というやつですよね)を飲みました。肺の中の問題の部分の組織を採取して調べたと言うことです。あと血液検査もしました。

>>今度はレントゲンは異常なかったのですね。

→いえ、やはり肺炎を併発していたと思います。2度の入院で、いずれもプレドニンを処方されて、影が消えてから、少しづつ減らしていくという治療を受けました。プレドニンを服用中、およびやめてからしばらくは非常に快適でした。丁度花粉症の季節でもあったのですが、そのおかげか、その年は花粉症でつらいことは一度もありませんでした。

>>ホームページでも述べておりますが、喘息を根治させることは今の医学ではできません。喘息は、ダニなどのアレルギー反応によって引き起こされ、その後の引き続い…

→やはりそうですか。

>>吸入ステロイドも喘息を根治させるものではないという意味では“対症(処)療法”と言えるでしょうね。もし、引き起こされた気管支の炎症を完全に取って、その後完全に原因抗原から遮断された環境(例えば宇宙船のようなクリーンルームの中で生活する、あるいは抗原遮断のできるマスクを24時間使用する、など)で生活する(…略…)。

→これはちょっと無理なので、やはり吸入ステロイドで自己管理というのが現実的ですね。

>>他の療法と併用して良くなる確立された方法があるならば、何百万もの喘息患者はとっくの昔からこの世にいないでしょうね。

→確かに…。

>>あなたも○○なのですね。不思議なことに、この広い日本、○○からのお便りは4人目なのです。同じ地方の他の県からは1件もありませんから、○○には喘息の何か特殊な事情があるのでしょうか? 何となく因縁を感じてしまいます。

→不思議ですね。○○は喘息の患者が多いのか、あるいは治療に対する意識が高いのか、私にはよく分かりませんが、ホントの偶然ではないでしょうか。

>>で、申し訳ありませんが、まったく○○に関しては情報がありません。ただ、お手元に吸入ステロイドがあるようですね。もう一度、吸入ステロイドを見直して、じっくりつきあってみては如何ですか? 専門医が近くにいなくても、吸入ステロイドさえ…

→そうですね。最近はもらっても使っていなかったベコタイドを、毎日吸入するようにしています。朝晩は自宅でボルマチックを使い、4吸入ずつ。(4プッシュして1回吸入という意味です)会社では昼にチェスペーサで、やはり4吸入をするようにしています。

>>このホームページの「特集・吸入療法」でしっかり操作を身につけ、できればもう少し回数を増やしてみては如何でしょうか? ベコタイド1日200マイクロはあまりにも少なすぎます。その10倍くらいまで使っている方もたくさんおります。それが無理なら、とりあえず800マイクロ(16吸入)くらいはどうですか?

→なるほど。つまり朝晩計2回なら、それぞれ8プッシュずつということですね。少し増やしてみます。

>>返事が遅れた割に、あまり期待に応えられなくて申し訳ありません。

→いえとんでもありません。量を増やしてもう少し続けてみます。ありがとうございました。

では。