(1)運動による発作だけが治りません。

【076】大学4年生の男性から

<質問>

はじめまして。

○○大学4年の男性です。

今日、初めて先生のホームページを拝見致しました。

私は小学2年生で喘息を発症しました。
幼い頃は小児喘息で、大変苦しみましたが、現在の程度は軽いほうだと思います。煙草を吸っても何ともありませんし、以前は発作を引き起こしたアルコールも、今は平気です。動物の毛も、猫を飼うようになって一週間で、発作を起こさなくなりました。年に2-3回の発作で、自分としては仲良く付き合っているという感じだと思っています。

ところで、どうしても治せないのが、運動による発作です。

長距離を走るジョギングは、10分軽く走っただけで、すぐに軽い喘鳴が出て、苦しくなります。そのままペースを落として、走っても、痰をうまく切ることができず、苦しくなる一方です。こういった運動は一生控えねばならないのでしょうか? 教えて下さい。

よろしくお願い申し上げます。

<応答>

初めまして。

いわゆる運動誘発喘息でありながら、タバコやアルコール、猫などの刺激では発作を起こさないという珍しい例ですね。

こちらからいくつかお聞きしたいことは、

(1)普段はどんな治療をしているのか? 発作の時だけ投薬するのか?
(2)これらのギャップに時間的ずれはないか? つまりタバコを吸っても何ともない日にでも運動で苦しくなるのか、あるいはタバコを吸っても何ともない日と運動で苦しくなる日は別ではないのか、です。

私は、運動誘発喘息も気管支炎症が残っている証拠の一つと考えています。ただ、運動誘発喘息とタバコやアルコール、猫などの非特異的刺激によって誘発される喘息と、どちらがより重症かはわかりません。あなたのメールだと、運動誘発喘息の方がまだ軽いようですね。考えてみれば、タバコやアルコール、猫などの非特異的刺激によって誘発される喘息発作は、身体を動かしていませんから、酸素を必要としないのに対し、運動誘発喘息では気管支炎症の程度は軽くても、身体を動かしますから、酸素不足の影響をもろに受けますね。

>>こういった運動は、一生控えねばならないのでしょうか?

→運動誘発喘息では、運動前に発作止めを1呼吸してから行うことが勧められていますが、これはあくまで一時的な処置ですね。根本的な解決にはなっていません。基本的に、吸入ステロイドで炎症を取れば、運動はできるようになります。また、ピークフロー値があれば、これから行う運動に対して、危険かどうかを判断することができます。

ここはあなたが、現在の状況をどう考えるかだと思います。何の不安なくジョギングなどを楽しみたいと思えば、吸入ステロイドやピークフローメーターなどを導入した方がいいし、薬は嫌だから発作が起きなければこのままで良いと思えばこのままで良いでしょう。ただし、もっと身体を鍛えれば、発作が起きなくなるのではないかと考えるとすれば、それだけは間違いだと思います。決して体力がないから発作が起きるわけではありませんから…。

最後に2つだけつけ加えさせていただけるならば、一つは、運動するときだけ発作が起きるから、自分の喘息は軽い方だと考えている方に、吸入ステロイドを処方しますと、単に運動しただけで発作が起きなくなるばかりでなく、これまで当たり前と考えられてきた日常生活の細かな点が改善されることに気付きます。「寄稿集(05)17歳女子・高校2年生・テオドールは命より大切?」をぜひ読んでみて下さい。もう一つは、今は軽くても、今後社会に出て体調不良の時や風邪で発作が増悪したときに休みたくても休めない状況下になると、確実に喘息の芽は顔を出します。ですから、今のうちからよく自己管理をする姿勢を身につけておいた方がいいかもしれませんね。

ただ、問題は今の状態で吸入ステロイドを処方してくれる医師がいるかどうかですね。

では、こんなところで。


<追加メール1>

質問に対するご丁寧なアドバイスをいただきました。

どうもありがとうございます。

>>いわゆる運動誘発喘息でありながら、タバコやアルコール、猫などの刺激では発作を起こさないという珍しい例ですね。

→珍しいのですね。ただし、最近ジョギングを始め、それに伴い、ステロイド剤を使用しているせいか、煙草を吸うと何となくいつもより動悸が激しくなります。やはり、煙草は早めに止めようと思います。

>>普段はどんな治療をしているのか? 発作の時だけ投薬するのか?

→内科医師のアドバイスでは、「発作時のみ」ということでした。自分でも、薬を使用後に、動悸が激しくなるので、発作時のみ「サルタノール・インヘラー」という気管拡張剤を吸引しています。

>>これらのギャップに時間的ずれはないか? つまり、タバコを吸っても何ともない日にでも運動で苦しくなるのか、あるいはタバコを吸っても何ともない日と運動で苦しくなる日は別ではないのか、です。

→煙草で具合が悪くなることは、まずありません。(最近、動悸が激しくなるのが気になりますが)運動は、長時間にわたると必ずといっていいほど、軽い発作が起きます。短距離走では何ともありませんが、長距離だと調子が悪くなります。つまり、煙草を吸っても苦しくなくても、運動で苦しくなるのです。

>>運動誘発喘息では、運動前に発作止めを1呼吸してから、行うことが勧められていますが、これはあくまで一時的な処置ですね。根本的な解決にはなっていません。基本的に、吸入ステロイドで炎症を取れば、運動はできるようになります。また、ピークフロー値があれば、これから行う運動に対して、危険かどうかを判断することができます。

→おととい、「サルタール・インヘラー」を吸入して、ジョギングしてみました。すると、喘息は起きませんでしたので、積極的に吸入してみることにします。

>>最後に2つだけつけ加えさせていただけるならば、一つは、運動するときだけ発作が起きるから、自分の喘息は軽い方だと考えている方に、吸入ステロイドを処方しますと、単に運動しただけで発作が起きなくなるばかりでなく、これまで当たり前と考えられてきた日常生活の細かな点が改善されることに気付きます。

→朝と夜に一回ずつ吸入するくらいでいいのでしょうか。是非、さらなる改善を目指したいと思います。

>>ただ、問題は今の状態で吸入ステロイドを処方してくれる医師がいるかどうかですね。

幸運にも、母の実家が病院なので、入手には困難ではないのです。もう少し、吸入を積極的にすすめようと思います。

有り難うございました。

<追加応答1>

ご自宅が病院なのですね。それは良かったですね。

>>朝と夜に一回ずつ吸入するくらいでいいのでしょうか。

→アルデシンかベコタイドを朝と夜に1吸入づつと言う意味ですね。まだ軽い方なので、このくらいで良いと思います。

では。