(1)母が喘息で植物人間状態になりました。医療事故ではないですか?
【080】?歳?性の方から
※この方の質問ですが、非常にショッキングな内容です。その後、この方からはメールを頂いておりません。私は、この内容をこのホームページで紹介すべきかどうか相当悩みました。しかし、あえて公開することにしました。
その理由は、この方との応答を紹介することによって、喘息を甘く見ると、たとえ病院へ運ばれたとしても、喘息死、あるいは一命は取り留めても植物状態や重篤な後遺症を残す場合があることを皆さんにぜひわかっていただきたかったからです。喘息は、きちんと自己管理すれば恐い病気ではないけれど、甘く見るととんでもないしっぺ返しが来る恐ろしい病気であることをあらためて肝に銘じて欲しいと思います。
しかし、くれぐれも過剰に神経質にならないことを願っております。もし、最近自己管理が緩んできたかなとお感じの方は、もう一度兜の緒を引き締めて頂ければと願います。
ご意見などがあれば、この方の質問に続けて紹介して行きたいと思います。
<質問>
母が喘息で、何度か発作のために病院に夜でも伺うことがありました。
その日も夜、10時ごろだったと思いますが姉が車で病院に連れて行きました。病院に着いてから少しおさまってきたようで、先生の顔を見たら直ってきたと自分で言って笑ってたようです。姉もほっとして「じゃあ点滴の間トイレに行ってくる」と言って、トイレから帰ってきたら「苦しい。助けて!」の声を最後に母はそれからもう2年半植物人間の状態です。もちろん夜で先生は当直の若い先生と看護婦さんだけでした。私たち家族は医療事故ではないかと思いましたし、今も思っています。が、担当の先生は「こういうことがあるのが喘息です。だから前から入院するように言ってたんですが」とのことでした。事故ではないのでしょうか? こういうことはあるのですか?
<応答>
初めまして。
お母さんが大変なことになられたのですね。
非常に悔しい思いをされ、また医療側への不信感が強いことは十分お察し致します。しかし、残念ながら、今回のメールの情報だけでは、「このようなケースがよくある」かどうかをコメントするのは、非常に危険なことです。また、不用意にコメントをしてしまいますと、メールのやり取りは記録に残りますから、それを訴訟の際の証拠などに使われたりしたら、私としても困ってしまいます。
以下は、あくまで一般的なことで、前後の状況によってまったく正反対のことになることもあるという前提で読んで下さい。
>>母が喘息で何度か発作のために病院に夜でも伺うことがありました。
→お母さんの年齢、喘息の既往歴・治療歴をぜひお教え下さい。この文章からしますと、普段の自己管理が悪かったと想像できます。「だから前から入院するように言ってたんですが」との主治医のコメントがありますが、これは主治医の指示を普段から守らなかったのでしょうか? もちろん守りたくても守れないことはよくありますが…。
>>その日も夜、10時ごろだったと思いますが姉が車で病院に連れて行きました。病院に着いてから少しおさまってきたようで、先生の顔を見たら直ってきたと自分で言って笑ってたようです。姉もほっとして「じゃあ点滴の間トイレに行ってくる」と言って、トイレから帰ってきたら「苦しい。助けて」の声を最後に母はそれからもう2年半植物人間の状態です。
→突然致死的な発作を起こすことはあります。お母さまの場合、コントロールが不十分だとしたら、突然こうなっても不思議ではありません。
また、点滴の中味が不適切であったのではないかという可能性もあるかと思いますが、喘息であれば普通中味を間違えることはあり得ないでしょう。また、人によっては、適切な点滴をしても、それが原因で発作がひどくなることもあることはあります。種類によってはステロイドに対してアレルギーのある方もおります。
普段の喘息のコントロール状態がどのような状況であったかによっては、たとえ病院で起こったにも関わらず、また処置が適切であったにも関わらず、蘇生できないという可能性も勿論あります。蘇生できても植物状態になってしまうこともあります。喘息の治療は、ひどくなるとそんなに簡単ではないということです。
処置が適切でなかったとしたら、それは確かに問題です。しかし、その状況においてどれが適切な処置であったかの判断は実際にカルテなどを見ないとわかりませんし、またカルテを見ても判断が非常に難しい面もあります。
>>もちろん夜で先生は当直の若い先生と看護婦さんだけでした。
→その病院の規模や周辺の医療施設との関係、あるいは担当医師の経験によっても異なりますが、仮にその医師が若くて喘息は専門外であったとしても、経験のある医師をすぐ呼べる状況にあったかどうか、また周囲に高度な医療を行える救急施設があったかどうかによっても状況は大きく変わります。私は内科医ですが、高度の外傷患者が僻地の病院で当直している時に運ばれたら、私はその方を救ってあげることはできません。
>>私たち家族は医療事故ではないかと思いましたし、今も思っています。が、担当の先生は「こういうことがあるのが喘息です。だから前から入院するように言ってたんですが」とのことでした。事故ではないのでしょうか? こういうことはあるのですか?
→詳しい状況がわかれば、「訴訟を起こさない方が良い」くらいのコメントはできるかもしれません。「訴訟を起こすべきだ」と私が判断できるとすれば、例えば、お母さんが病院内で倒れた時、当直医師がいるのにも関わらず、看護婦からの連絡を受けてから、正当な理由(別の患者の蘇生を行っていたとか、手術であったとか…)がないのに、10分経っても、20分経っても医師が来てくれなかったという極端な状況の時くらいでしょう。
先ほども申し上げましたが、お母さんが突然倒れて、適切な処置を行ったのに植物状態になってしまうということは十分あり得ることです。その処置が適切であったかどうかは、その内容を具体的に見てみなければわかりません。
以上です。