(1)年齢による喘息児への吸入ステロイドの投与法について教えて下さい。

【1009】内科開業の先生から

<質問>

拝啓

先日は気管支喘息の御講演を拝聴して、新しい知識を頂きましたこと心から感謝申し上げております。中でもベクロメタゾンの吸入療法は4歳からでも可能と聞きまして驚嘆致しました

私達開業医は副作用を恐れるあまり、その様な吸入(ベクロメタゾン)は小学校高学年より行っております。それで今までよりも秀れた吸入療法を、より低年令の子供にも使用し、より速く回復させることが出来ればどんなに良いことかと念願しております。

ご多用のところ誠に恐縮に存じますが、サルタノール以外のベコタイト等の使用法を御教示賜われば有難いことと存じます。

先生のますますのご活躍の程、御願い申し上げます。

敬具

<応答>

拝啓 秋気が心地よい今日この頃、先生には益々ご健勝のこととお慶び申し上げます。

先日は、愚輩の講演会にご出席を賜り、誠にありがとうございました。また、丁寧なお手紙まで頂戴し恐縮致しております。

さて、そのお手紙の中での先生のいくつかのご質問に対し、可能な限り回答させていただきたいと思います。

>>先日は気管支喘息の御講演を拝聴して、新しい知識を頂きましたこと心から感謝申し上げております。中でもベクロメタゾンの吸入療法は4歳からでも可能と聞きまして驚嘆致しました。

→ベクロメタゾンによる吸入療法の小児への適応限界は、施設にもよりますが、小学校の3、4年生以降ではないかと思います。乳幼児へビニール袋などを利用して吸わせている施設もあるようですが、果たして効率よい吸入ができているかは疑問が残るところです。

先日の講演で紹介させていただいた4歳児は、私の患者では吸入ステロイドを施行している最年少児でありました。しかし、母親が熱心であったことがうまく行った要因ではないかと考えております。朝夕毎日歯を磨くのを躾るのと同じように、吸入ステロイドとピークフローメーターを行っておりました。ただし、その子の理解力の違いもありますので、一概には言えないところではないかと思われます。

ただし、ベクロメタゾンはうがいさえしっかり行えば、ほとんど全身副作用のない薬剤ですから、とりあえず適応してみて、“効けば儲けもの”ぐらいの軽い気持ちで開始してみるのも一策かもしれません。もし効かなかったとすれば、それは“薬剤が効かなかった”と判断するのではなく、“薬剤がうまく気管支に到達しなかった”と判断し、もう少し大きくなるまで従来の方法でコントロールするのが宜しいかと思います。

>>私達開業医は副作用を恐れるあまり、その様な吸入(ベクロメタゾン)は小学校高学年より行っております。それで今までよりも秀れた吸入療法を、より低年令の子供にも使用し、より速く回復させることが出来ればどんなに良いことかと念願しております。

→小学校の高学年にでもベクロメタゾンを使用されているだけでもすばらしいことであると感心いたしました。多くの小児科の先生は、小学校高学年にさえなかなか使用してくれないのが現状です。吸入ステロイドの普及とそれによる小児喘息児のQOLの向上を願う私にとりまして、先生のようなご理解のある方がいらっしゃいますことは救われる思いです。

>>サルタノール以外のベコタイト等の使用法を御教示賜われば有難いことと存じます。

→ご参考になるかどうかわかりませんが、私が作成いたしました小冊子「寄稿集」、吸入療法Q&A、などをお送りさせていただきます。どうかお納め下さい。

>>できますことならば、年齢別、重症度別など、その使用法をご教示お願い申しあげます。

→今年発行されました「喘息予防・管理ガイドライン・1998(協和企画通信)」の中の「小児喘息の長期管理に関する薬物治療プラン」のコピーを添付いたしました。ご参考になるかわかりませんが、ご利用下さい。

このガイドラインでは、より重症化したステップ4以上で初めてベクロメタゾンが登場し、重症化するに従って増量する方法が示されております。しかし、喘息における予防の重要性に鑑みれば、より早期からの導入の方が理にかなっているのではないかと、私個人的としては常々考えております。が、これは、内科と小児科で意見の大きく別れる点でもありますので、現状では、その児の症状に応じて、よく両親と話し合い、最終的には先生ご自身のご判断に追うところが大きいのではないかと考えております。

投与量に関しましては、年齢もさることながら重症度の方に重きが置かれているようです。従いまして、シロップや散剤のような体重別の細かな投与量の差を設けることは実際にはなされておりません。1日100〜200マイクログラム程度なら、体重の小さな児でも、うがいさえできれば、副作用なく効果のみが得られるものと確信いたしております。

以上、不十分ではあると思いますが、この辺で失礼いたします。さらにご不明な点がございましたら、遠慮なくお手紙を頂ければと思います。

先生のご健康とご活躍をお祈りいたします。

敬具

<追加メール>

すっかり秋になりました。

先生には、益々ご健勝のこととお慶び申し上げます。

本日は気管支喘息に関するたくさんの文献をお送り下さいまして誠にありがとうございます。本当に明日からは自信を持って治療を行うことができることを深謝申し上げております。秋は喘息シーズンで点滴をやっている子どもが今日も5人ほどおります。

これからは、治療でなく予防ができるよう勉強いたしたいと考えております。

ご厚情のほど深謝申し上げます。

益々のご発展をお願い申しあげます。