(1)喘息と水泳に関して教えて下さい

【106】44歳男性(医療従事者)の方から

<質問>

ホームページを開覧させていただきました。とても全部を読み切ることは仕事の休み時間内ではできませんので、流し見た程度での感想を少しばかり…。

私の憧れの人だったテレサや、交通事故との対比、患者さん自身の生の声など、なかなかの切り口で何の抵抗なく入って行けました。

たぶん、探せばあったのだろうと思うのですが、小児の中には水泳と喘息に関する事が無かった様な気がします。子供の喘息を治したい為にスイミングスクールに通わす親が沢山いる現実を知っているだけにその真・違に興味あります。(ページで述べている交感神経との関連だとは思うのですが…)

この件に関する説明が載っているのかどうか知りたいです。

宜しくねがいます。

<応答>

ホームページ見て下さってありがとうございます。

また、感想までありがとうございます。

このホームページは、約1年半ほぼ毎週のように更新してきましたので、全部読むのは相当時間がかかります。

>>たぶん、探せばあったのだろうと思うのですが、小児の中には水泳と喘息に関する事が無かった様な気がします。子供の喘息を治したい為にスイミングスクールに通わす親が沢山いる現実を知っているだけにその真・違に興味あります。(ページで述べている交感神経との関連だとは思うのですが…)

喘息と運動療法は、非常に問題のあるところです。このホームページでは、「ガイド」から「小児喘息」あるいは「特集・小児喘息」から探してみて下さい。また、同じ「ガイド」から「喘息の自己管理」の「喘息と運動」でも引くことができます。

運動療法が正しいか正しくないかは解釈の違いだと思います。自律神経を鍛えて良くなる(発作がおきなくなる)と考えているとすれば、それは喘息を発作としてしか捕らえていないということになり、喘息が気管支の慢性炎症に基づくという考えに根ざしてないと言えます。

また、非常に軽い喘息の場合、しかも調子がいいときに身体を鍛えるならいざ知らず、喘息だとひ弱に見えるから身体を鍛えるというのには私は反対です。それは精神論以外の何者でもありません。そんなことをいうなら自分が風邪で咳がひどいときに水泳でもやって治してみなさいと言いたいです。如何に苦しいことか分かるでしょう。それを自分がやるならまだしも子どもに押しつけるなんて児童福祉法に違反するとさえ思います。

また、身体を鍛えて喘息が良くなったとよく言われますが、それは思春期という一断面の判断、しかも発作がないという自覚症状だけの判断でしかありません。そこを乗り切っても大人になって再発しひどい目にあっている方が結構多いですね。また、仮に10人中8人がよくなったとは言っても、残りの2人くらいは喘息が悪化したりひどい目にあっているのです。そういう子達は表に出ず、浮かばれず悲惨な目にあっているのです。そんな思いを綴って医事新報に投稿したのが「付録」にある「ある喘息児の涙」です。どうか読んで下さい。

では、また感想などお聞かせ下さい。


(2)発作の無い状態での喘息の診断はどうするのですか?

【106】44歳男性(医療従事者)の方から

<追加質問>

「初級コース」をトライしましたが、「発作がなくても喘息の診断は可能である」の箇所が分かりませんでした。発作の無い状態での喘息の診断はどうするのですか? また気道炎症が無い場合は?

<追加応答>

>>発作の無い状態での喘息の診断はどうするのですか?

→非常に良い質問ですね。これに対する答えは、かなり長いですが、「知識1. 喘息のことが良く分かるミニ・ツアー」で触れています。時間があるとき読んでみて下さい。

>>気道炎症が無い場合は?

→気管支炎症のない、発作(気管支の痙攣)だけがおきる喘息というのは存在しない、というのが実は私の考えです。子どもの場合、突然発作を起こすように見えますが、実はそれ以前に長い経過で気管支の炎症が進行しているのではないか、というのが私の疑問です。しかし、このことをヒトで証明することはほぼ不可能です。何故なら、喘息発作を起こす前の子どもに片っ端から気管支鏡検査を行い、気管支に炎症があることを組織学的に証明することなど不可能だからです。しかし、突然発作を起こした子どもでも、吸入ステロイドを少量でもうまく使うと、まったく発作は起こらなくなります。ステロイドが効くことはすなわち炎症が存在している状況証拠になるかと私は考えています。ステロイドは発作自体の防止薬ではありえませんので…。

ただし、このような軽症のしかも初期の患者に肺機能検査で診断をつけること(気道可逆性を証明すること)は実際は不可能に近いことです。臨床的には、症状だけが根拠になるでしょう。しかし、実際には、診断が付けられないようなごく軽度の喘息患者は医療機関を受診しないことも事実です。何か症状があれば、気道の狭窄(一秒率の低下)がありますし、程度は軽くても気道の可逆性(アロテック負荷前後)は証明できます。

以上、おわかり頂けましたでしょうか?