(1)喘鳴が聞こえなくても病院を受診すべきでしょうか?

【109】22歳女性(大学生)の方から

<質問>

はじめまして。HPを読ませていただいています。

簡単に自己紹介をします。

年齢 、職業:22才、大学生。
性別、身長:女、163 cm。

喘息の経過:7才の時に近所の開業医で気管支喘息といわれる、その後走ったり風邪をひいたりするとぜいぜいいう事があったが、薬は漢方薬を処方されただけだった(ツムラの番号不明です)発作が起きると数日は漢方薬が出るだけだった。その後、喘息は起こらなくなっていたが21才の時に今の所に引っ越したあとから喘息が出るようになる。住んでいるところは公害指定地域で喘息患者が多い。

発作が起こるたびに近所の診療所で吸入をうける、止まらない時は点滴(サクシゾン)をうける。その後、重積発作で総合病院に3週間あまり入院する。ボスミン投与、酸素投与、24時間持続点滴などで回復する。その後はテオドール400 mg、メプチンミニ2錠、べコタイド8吸入(インスパイヤーイースにて吸う)/1日量をつづけているも、ここ1ヶ月あまり深く息をはいたり、階段をあがったりするとヒューヒューと喘鳴が続く。今年に入ってからはすでに2回、診療所にてネブライザーをかけても治まらなく点滴を使用している。ピークフロメーターの値は最高450くらい、最近は200をきる事もある。

質問です。

(1)メプチンエアーはどの程度の発作で使用していいか。
(2)身長からしてピークフロメーターの値が少なすぎるが問題はないか。
(3)ただ息苦しく、ピークフロメータの値も200をきっているのに喘鳴が聞こえない時があるが、その場合すぐ病院にかかる必要性はあるか?

といった事です。よろしくお願いいたします。


<応答>

初めまして。

メール拝見しました。

小児喘息が最近になって再燃したのですね。おそらく、その間は発作はなかったのでしょうが、風邪などを引いたときにヒューヒューしたりしませんでしたか? 発作は顔を出さず、喘息はなりを潜めていたのでしょうが、今頃になってまた顔を出したようですね。実はあなたのようなパターンで喘息を再発する方は結構多いのです。「喘息は大人になると治るから」とその場をしのぐ一部の小児科の先生にはぜひ教えて上げたいものです。

しかし、それにしてもずいぶんと大きな発作として再発してしまったものですね。大学生と言うことですが、年齢からしてもうすぐ就職ではないですか? 実社会にでますと、喘息だからと治療に専念できない状況が、日本ではまだまだ残っています。また、もちろん喘息が悪化する要因(ストレス、残業、喫煙など)もたくさんあります。従って、今のうちから喘息をどうやったらコントロールできるか身につけておいてほしいものです。

>>(1)メプチンエアーはどの程度の発作で使用していいか。

→普通は発作止めですので、苦しくなってから使いますが、あなたのように重積な発作を起こした既往のある方は、息苦しさに対して鈍感になっていますから、息苦しいと感じたらなるべく早めに使うべきですね。その方が少ない量で済み、効果も上がります。

しかし、大切なことは、メプチンを頻回に必要とすることは、気管支にひどい炎症が残っていることを示しますから、悪化する要因(不規則な生活など)を除去し、吸入ステロイドを増量するなどで、その状態から一刻も早く脱出することです。

>>(2)身長からしてピークフロメーターの値が少なすぎるが問題はないか。

→これは最近の値がと言うことですね? 基準値はピークフローメーターの機種によって異なりますが、できれば機種と基準値をお教え下さい。過去最高が450と言うことですが、仮にこの値が基準値を上回っていれば、もう基準値はあてになりません。あなたの現在の基準値はまず450です。(ただし私は、これでもまだまだでもっと吹けるはずだと思います)

おっしゃるとおり、200を切るようでは450を基準としても半分以下ですからかなり低いですね。発作が頻発する状態では、このような低い値を示すことはあり得ます。メプチンはどの程度(1日何回、週に何回など)吸っていますか? これらを頻回に必要とする状態、また発作の度に病院で吸入や点滴を受ける状態では、かなりひどい気管支炎症が残っていますから、吸入ステロイドをしっかり効かせなくてはいけません。ベコタイド1日8吸入とのことですが、吸入操作を「特集・吸入療法」で確認して下さい。吸入に問題がなければ、量が不足していますから、主治医と相談して量を増やしてもらうべきです。これでも良くならない場合は、相当重症ですから点滴や内服ステロイドを一定期間使用するべきです。

>>�Bただ息苦しく、ピークフロメータの値も200をきっているのに喘鳴が聞こえない時があるが、その場合すぐ病院にかかる必要性はあるか?

→喘鳴のない発作については、私のホームページではいくつかふれています。「寄稿集(08)・50歳女性の方」を参考にして下さい。「質問と応答」でも何度か触れています。受診に関しては、発作止めを2、3回使用しても息苦しさがとれない場合は、やはり病院を受診すべきです。苦しいのですから病院を受診するのは当然です。

ここで問題となるのは、病院を受診したときの医師側に対応の違いがある現状です。これは、今後我々専門家が専門外の医師に啓蒙活動をしてゆかなければならない点です。中には「何で発作でないのに受診したの?」とつれないことを言う医者がいるかもしれません。それは、医師の認識不足ですから、あなたの責任ではありません。

この点に関しては、主治医と普段からこういう場合の対応を相談しておくことですね。そしてカルテに救急時の処置内容を記載してもらえば、時間外の他の医師に当たっても適切な処置をしてくれますので、安心です。

こんなところで宜しいでしょうか?

では、お大事に。


(2)知り合いの看護婦が喘息死してショックでした。

【109】22歳女性(大学生)の方から

<追加メール1>

早々にお返事ありがとうございました。こんな早くお返事いただけるなんて感激です。丁寧に書いていただいてとても参考になりました。

>>小児喘息が最近になって再燃したのですね。おそらく、その間は発作はなかったのでしょうが、風邪などを引いたときにヒューヒューしたりしませんでしたか? 発作は顔を出さず、喘息はなりを潜めていたのでしょうが、今頃になってまた顔を出したようですね。実はあなたのようなパターンで喘息を再発する方は結構多いのです。「喘息は大人になると治るから」とその場をしのぐ一部の小児科の先生にはぜひ教えて上げたいものです。

→これについては風邪ひくたびにヒュー音が聞こえていましたが、近所の小児科では特に喘息の薬の服用や吸入すらした事がなかったです。(多分小さな開業医で超音波ネブライザーなどなさそうなところだったんで)あとは中・高と陸上で中距離をしていたんですが、走るたびに喘鳴は聞こえていましたが、しばらく(1~2時間)すると治まっていました。喘息は精神的なものが関係しているから、喘鳴くらいは平気だから、出来るだけ我慢したほうがいいから、とか言われていたので、特にそのまま治療らしいことはしていませんでした。風邪をひいたときはそこにかかっていましたが、ただの風邪薬なぜかツムラの漢方薬ばかり処方されていました。(番号はちょっと覚えていないんでもしかしたら、喘息にも効く品だったのかもしれませんが…)

>>しかし、それにしてもずいぶんと大きな発作として再発してしまったものですね。大学生と言うことですが、年齢からしてもうすぐ就職ではないですか? 実社会にでますと、喘息だからと治療に専念できない状況が、日本ではまだまだ残っています。また、もちろん喘息が悪化する要因(ストレス、残業、喫煙など)もたくさんあります。従って、今のうちから喘息をどうやったらコントロールできるか身につけておいてほしいものです。

→ひさしぶりに引っ越して発作がでたときも(公害指定地域で空気が悪い)たいした事がないと思っていたのですが、その時に引っ越した先の診療所にいったときは、すでに酸素濃度が下がっていました。その時は「なんでもっと早くこないんだ」といわれましたが、その程度を喘息と思っていなかったので…。ちょっとにぶいですが、陸上の時の息苦しさに比べたらという感じでした。就職は進学の予定をしているのでまだですが、このままでは就職なんて厳しいなと思っています(階段を上がるだけで息が切れるので…)。

>>基準値はピークフローメーターの機種によって異なりますが、できれば機種と基準値をお教え下さい。過去最高が450と言うことですが、仮にこの値が基準値を上回っていれば、もう基準値はあてになりません。あなたの現在の基準値はまず450です。(ただし私は、これでもまだまだでもっとふけるはずだと思います)

使っている機種はアセスです。基準値は470ほどになっています(22才、女、163 cm)。470を超える事はほとんどありません。いつも350くらいです。友達にも何人か試してもらったんですがやはりみんな600ほどはいきます。すごい子は女の子で800ちかくいっていたので、私のあまりの悪さに唖然としました。

>>おっしゃるとおり、200を切るようでは450を基準としても半分以下ですから、かなり低いですね。発作が頻発する状態では、このような低い値を示すことはあり得ます。メプチンはどの程度(1日何回、週に何回など)吸っていますか? これらを頻回に必要とする状態、また発作の度に病院で吸入や点滴を受ける状態では、かなりひどい気管支炎症が残っていますから、吸入ステロイドをしっかり効かせなくてはいけません。ベコタイド1日8吸入とのことですが、吸入操作を「特集・吸入療法」で確認して下さい。吸入に問題がなければ、量が不足していますから、主治医と相談して量を増やしてもらうべきです。これでも良くならない場合は、相当重症ですから点滴や内服ステロイドを一定期間使用するべきですね。

→メプチンは上にあげたように喋るのも辛いときでないと使っていませんでした。べコタイドは8吸入でインスパイア・イースを使って吸っています。量については今かかっている診療所で相談してみます。今かかっている診療所は24時間吸入や点滴をしてくれるので、発作が起きたときはすぐに吸入や点滴(サクシゾン)をしてもらっています。が、今年になってすでに5回は吸入では治まらなく点滴をしています。何でもないときも息を深く吐くとヒュー音が聞こえる状態であまり良くないです。いちおう飲み薬も再度はじめましたが、テオドール200 mgを2回とメプチン錠を寝る前一錠飲んでいますが、量が少ないような気がしますが、いかがでしょうか? 自分が重積発作を起こした事と、実は知り合いの同い年の女の子がついこの間喘息で亡くなりました(彼女は看護婦で生活がハードだった事も関係していると思いますが…)。発作を起こして入院してすぐに酸素濃度がさがって人工呼吸器をつけ、3週間あまりで亡くなりました。さすがその時は今まで喘息を甘く見過ぎていたかとあせりネットや本で喘息治療について知って今までなんだったの? という感じで後悔しています。やはり正しい知識のもとでコントロールしていきたいと思っています。HPをこれからも、拝見させていていだきたいと思っています。先生もお体に気をつけて患者さんのために頑張っていただきたいです。どうも、ありがとうございました。

<追加応答1>

詳しいメールありがとうございます。

>>中・高と陸上で中距離をしていたんですが走るたびに喘鳴は聞こえていましたがしばらく(1~2時間)すると治まっていました。

→陸上をなさっていたのですね。だとすると肺活力は相当なものであるはずです。すっかり良くなれば友人より吹けるはずです。それが、今は友人より低い値というのでは、状態としては決して良いとは言えませんね。私が、いつもこう言う場合は、“もっともっと良くなるはずだ”と言うことを意味します。決してがっかりしないで下さい。

>>引っ越した先の診療所にいったときはすでに酸素濃度が下がっていました。その時はなんでもっと早くこないんだといわれましたが…。

→これは重要なことです。つまり長年の経過で呼吸困難に対して鈍感になっているからです。これは決して良い状態ではないのです。予備能力が下がっていますので、ぎりぎりまで我慢する(本人がぎりぎりという認識がないところが恐ろしい)と、無理をしたり大きな風邪をひいたりすると、すとーんと一気に生命に関わる事態に陥りがちです。対策は、なるべく早くPF値を(とりあえず)人並みにまでレベルを上げることです。そして、少しくらいで息苦しいと感じるようになることです。それが正常なことなのです。痛みや苦しさは、生物が身を守るための必要な感覚なのです。

>>このままでは就職なんて厳しいなと思っています(階段を上がるだけで息が切れるので…)。

→この状態は必ず脱却できます。決して固定した状態ではないのです。どうか、私のホームページをよく読んでそのヒントをつかんでみて下さい。同じ様な方が何人か紹介されています。

>>使っている機種はアセスです。基準値は470ほどになっています。470を超える事はほとんどありません。いつも350くらいです。

→ズバリあなたも700は吹けるようになります。470なんて言わないでもっと上を目指して下さい。ベコタイドを行っているようですので、とりあえず「特集・吸入療法」を熟読して下さい。ベコタイドはただ吸えばいいと言うものではありません。効果がないときはチェックしなければならないことがたくさんあるのです。また、可能なら最近出たフルタイドが使えればいいですが、果たして主治医が十分な量を処方してくれるかが疑問です。

>>メプチンは上にあげたように喋るのも辛いときでないと使っていませんでした。

→メプチン吸入は早めに使うのがコツです。ひどくなるまで我慢することは賢明ではありません。

>>べコタイドは8吸入でインスパイアーイースを使って吸っています。量については今かかっている診療所で相談してみます。

→量も増量できればいいのですが、まずは吸い方です。もう一度チェックしてみて下さい。

>>テオドール200 mgを2回とメプチン錠を寝る前一錠飲んでいますが、量が少ないような気がしますがいかがでしょうか?

→量的には少ないとは思いません。先生によってはコントロールが良くないとテオドールなどを増量することがありますが、そうではなくこれでも不十分なときは、とりあえず発作止めのメプチンエアーで対処しながら、吸入ステロイドを十分効かせて気管支の炎症が持続する状態(PF値が低い状態)から脱却することです。

>>自分が重責発作を起こした事と実は知り合いの同い年の女の子がついこの間喘息で亡くなりました(彼女は看護婦で生活がハードだった事も関係していると思いますが)発作を起こして入院してすぐに酸素濃度がさがって人工呼吸器をつけ、3週間あまりで亡くなりました。

→何ともお気の毒な話しです。なぜ看護婦さんがとびっくりするかもしれませんが、看護婦さんでさえ喘息に対して誤解されている方がいるのです。こういう誤解をもった看護婦さんが、喘息患者さんに(電話などで最初に)対応するとひどいことになってしまうのです。発作で苦しいのに、「もう少し我慢して朝まで様子を見て下さい」なんてとんでもない応答をしたりするのです。これは看護婦さんばかりでなく医者でもそういったことがあります。悲しい現実です。

>>さすがその時は今まで喘息を甘く見過ぎていたかとあせりネットや本で喘息治療について知って今までなんだったの? という感じで後悔しています。やはり正しい知識のもとでコントロールしていきたいと思っています。HPをこれからも、拝見させていていだきたいと思っています。

→はい。もっともっと勉強して下さい。正しい知識とそれに基づいた正しい行動があれば喘息は必ず良くなります。今は希望がもてない状態かもしれませんが、少しづつ問題を解決し喘息を克服して下さい。

では。