(1)咳喘息に薬をくれるだけの病院はやめたほうがいいんでしょうか?
【112】42歳男性(大学講師)の方から
<質問>
こんにちわ、初めてメールを出します。失礼お許し下さい。
先生のホームページを見て、とても嬉しかったので、とりあえず感謝の言葉をお伝えしようと思ってメールを書くことにしました。ところが、この先生のアドレスにたどり着くまでに、だいぶ遠回りをしました。サーチエンジンで「喘息」を探していたら、25歳の女子大学院生の方の「質問と応答」が引っかかって、それを読んで「ぜひ一言お礼を」と思い立ったのはよいのですが、あのページにはホームへ戻るボタンがなくて、いったいどこにあるページなのかわからず、結局URLから見当をつけて、山形大学のホームページから順繰りに探して、ようやく諏訪部先生のページだとわかったわけです。
あ、自己紹介が遅れました。わたしは、「喘息一年生」です。42歳男性で大学講師をしています。わたしの喘息もいわゆる「咳喘息」で、症状や診断までの過程も、あの大学院生の方とよく似ていて、あのページを読んだときは「これこれ、探していたのはこれだったんだ」と、もやもやがすっきり晴れた気がしました。最初にお医者さんの口から「咳喘息」という言葉を聞いたときは、「えっ、なにそれ」という感じで、そのお医者さんがあまり丁寧に説明してくれる方ではなかったこともあって、ずっと釈然としない気分でした。じつは、私の母親も立派な喘息患者なんですが、これが深夜に発作を起こして呼吸困難になるという「正統派」の喘息(笑)なもんですから、四六時中咳の止まらない自分の症状が同じ喘息とはとても思えなくて、心外な気さえしたくらいです。別の先生のアドヴァイスもあって、最近は喘息患者としての自覚も芽生えてきたところだったのですが、あのページのおかげで、一人前の喘息患者になれました。どうもありがとうございました。
と、これでは、なんだかよくわからないので、やはり、大学院生の方と同じように、時間を追ってきちんとお話しした方がよいですね。相手はお医者様だし。
最初は昨年(98年)の5月の連休ごろでした。しつこい咳が2週間以上も止まらないので、『家庭の医学』を見て、これはただの風邪ではなさそうだと思い、4月からぎっくり腰の治療に通っていた小さな総合病院で、ついでに診てもらうことにしました。いきなり余談ですが、私は42歳になったと同時のぎっくり腰に、「厄年ってやっぱりてきめんだなあ」と感心していたんですが、なんのなんの、その後にはもっと厄介な真打ちが控えていたというわけです。内科の担当は若い女の先生で、まずは型どおりレントゲンを撮って、写真を見るとちょっと深刻な顔で、「この辺に結核らしい影が」。あっ、しまった。3歳の時に自然陽転して、肺浸潤になりかけ、ストマイを投与したこと言うの忘れてた、すみません。「痕は一生残るんですよね」と先生納得。で、その後、痰の培養検査や、CTスキャンまで撮るも原因がわからず、結局約一ヶ月後、「腫瘍マーカーの値が若干高い」という手紙付きで(肺ガン関係を疑っていたらしい)、近所の大学病院に送られることに。でも、いまでも不審なのは、その時レントゲンやCTの写真を持たせてもらえなかったこと。ふつう、持たせませんか。
大学病院で呼吸器専門の助教授は、50歳位の穏やかな男の先生。開口一番、「42歳で煙草吸わない人の肺ガンなんて見たことないよ」と、まずは最大の恐怖は一応取り除かれる。再びレントゲンを撮り、尿と血液検査を行う。レントゲンはキレイらしく、ちょっと首を傾げ、ハウスダストとダニに強くはないがアレルギー反応が出ているということで、喘息という診断がくだる。私が納得行かない顔をしていると、「せきぜんそくというのがあるんですよ」とおっしゃる。うーん、そんなの初耳。この時に、もう少し丁寧に説明してくれていたらなあ。まあ、酸素ボンベ引っ張って歩いているような患者さんが、門前市を成していて、私のような見た目どこも悪くなさそうな、若い(比較的)患者に長い時間かけてる余裕はないのかもしれないけど。
で、処方はというと、最初はオノンカプセル(朝・晩2錠ずつ)だけだったけれど、一向に改善されないので、テオドール(朝・晩1錠ずつ)が追加される。今に至るまで、これが月1回4週間分ずつ出されるだけで、最近は診察も2ヶ月に1回になってしまった。薬が効いている間は、いくらかマシだけれど、それでも咳が出だすと止まらないので、こっそり市販のブロン咳止め錠も呑んでいました。こういうことは良くないとわかってはいても、しゃべるのが仕事ですから、講義中に咳き込んでしまうといけないので、講義の前に呑んでいました。家にいる間は、ブロンはなるべく呑まないようにしていましたが、つらいのは寝るとき。ふとんに入って横になると同時に、激しい咳が出だしてしばらく止まらない。夜中にも必ず一度は激しい咳で眼を覚ます。
こうしたことを訴えて、ようやく10月から、メプチンエアーを処方してもらえるようになった。床にはいる前にふた押しすることで、ようやく眠れるようになった。メプチンに関しては、なるべく1日1回しか使わないように気をつけていたけど、そう言えば担当先生は用法の注意もしなかった。薬局のおじさんが「回数とか先生に指示受けませんでしたか」と訊いたけど、聞いてないぞ。
そんなこんなで、良くも悪くもならない状態が続いていたのですが、12月に入って、祖父が呼吸困難で倒れて入院するという事件が起きました。いわゆる「誤嚥」が原因で低酸素脳症になってしまったのですが、倒れる前日に祖父の元を訪れていた私は、ひょっとして私の咳は喘息ではなくて、何か細菌かウィルスの感染症で、それを移したのではあるまいな、と不安に陥りました。(というか、ふつう潜伏期間とかがあるはずだから、自分が移したとは思えないが、親戚に「あいつが移したんじゃないか」などと疑惑の目を向けられてはかなわないので)
そこで、意を決して、一昨年まで住んでいた町の、ずっと十年以上かかりつけだった診療所に相談に行きました。そこで、今までの経過を説明して、ちょうどあの大学院生の方と同じように、「私はほんとに喘息なのか」という疑問をぶつけてみたわけです。そうしたら幸いなことに、当直の先生は喘息治療にも詳しい先生で、メプチンが効果をあげていると言うことはまず喘息と見て間違いないこと。「咳喘息」は気管支の炎症が治まらない状態であることを説明してくれました。そして、大学病院で処方されている薬を訊いたうえで、「現在はステロイドの吸入による治療が主流で、飲み薬と違って副作用の心配も少ない」といって、ベコタイドを処方してくれました。
それ以来、朝晩ベコタイドの吸入を続けて、まもなく1ヶ月になりますが、症状はだいぶ改善されて、就寝前のメプチンの吸入は必要なくなりました。夜はふつうに眠れるようになりました。昼間も、まだ時々咳き込むことはありますが、以前のように肋骨が痛くなるほどひどいことはなくなりました。そうそう、これも彼女と全く同じで、3回ほど肋骨にヒビが入ったかと思うほどの激しい痛みに見まわれました。夜中に次の日の授業の準備をしながら「ゲエホ、ゲエホ、いてててて、ゲホゲエホ」というのは、結構情けなかったです。授業前も、咳き込みそうな気配のあるときだけ、メプチンを一押しすることにして、年が明けてからはブロンも全く呑んでいません。もっと早くステロイドに出会っていたらなあ、あの悲惨な日々は何だったんだろう、と思い始めていた時に、例の大学院生の方の質問ページに出会って、今までの疑問がすべて氷解したというわけです。いやあ、ほんとに嬉しかった。感謝感謝。
長い手紙になってしまいました。すみません。はじめは、ほんのちょっと、お礼を述べるだけのつもりだったのですが、書いているうちに質問もしたくなってきてしまいました。読んで頂いたとおり、ステロイドによる治療が一応の効果をあげているようですので、当面このままゆくつもりです。ですから、以下に書くことには、緊急性はありません。先生の元には、たくさんの患者から山のような質問が寄せられていることと思いますので、私のは後回しで、手が空いたときに覚えていて下さったら、お答えいただければ結構なのですが、もしよろしかったらお願いします。
(1)噂の「ピークフローメーター」というもの、見たことないんですけど、やっぱり必要でしょうか?
(2)薬をくれるだけの病院はやめたほうがいいんでしょうか? ベコタイドを処方してくれた診療所の先生には、「別の曜日のO先生はアレルギーが専門だから、その先生にも相談してごらん」と、言われました。ベコタイドもそろそろなくなるので、来週その先生のところに行ってみようとは思っているのですが…。
ほんとに長くなってすみませんでした。でも本当にありがとうございました。先生のページ、盛りだくさんで、まだ全部眼を通したわけではありません。(あの「質問と応答」だけでもすごい量があった)これからも、ときどき覗いて、いろいろ勉強しながら、「理想的な喘息患者」になれるよう努力して参ります。
先生のますますのご活躍、お祈りしております。
<応答>
初めまして。
暖かい励ましのメールありがとうございます。
大学の講師をされているとのこと、私と同業ですね。
アドレスを拝見しますと、ニフティーですね。「健やか村・喘息館」はご存じないですか? 無料で加入できますよ。
咳喘息で悩まされたのですね。でも吸入ステロイドで良くなられたとのこと良かったですね。
>>でも、いまでも不審なのは、その時レントゲンやCTの写真を持たせてもらえなかったこと。ふつう、持たせませんか?
→そうですね。紹介先で再びCTを取ることを考えれば、浴びる放射線量を考えて資料を添付するはずです。考えられるとすれば、貸し出した資料が病院によっては返却されない可能性があるからかもしれません。コピーを持たせることもありますが、施設によってはコピーが撮れないこともあります。しかし、今後はネットワークの充実と医療費削減目的で、「一患者一資料化」が普及するはずです。レントゲンだけでなく、採血結果もネットワーク化されれば、どこの病院へかかっても過去の資料が参照できるようになるでしょう。
>>そこで、意を決して、一昨年まで住んでいた町の、ずっと十年以上かかりつけだった診療所に相談に行きました。そこで、今までの経過を説明して、ちょうどあの大学院生の方と同じように、「私はほんとに喘息なのか」という疑問をぶつけてみたわけです。そうしたら幸いなことに、当直の先生は喘息治療にも詳しい先生で、メプチンが効果をあげていると言うことは、まず喘息と見て間違いないこと。「咳喘息」は気管支の炎症が治まらない状態であることを説明してくれました。そして、大学病院で処方されている薬を訊いたうえで、「現在はステロイドの吸入による治療が主流で、飲み薬と違って副作用の心配も少ない」といって、ベコタイドを処方してくれました。
→随分と勉強されている先生ですね。後で質問でも述べますが、大学病院とはどちらが近いのでしょうか? 私は、吸入ステロイドさえ処方してくれるなら、診療所の先生の方がいいとさえ思います。
>>(1)噂の「ピークフローメーター」というもの、見たことないんですけど、やっぱり必要でしょうか?
→私はピークフローメーターはぜひ導入してみるべきだと思います。毎日記録することで今まで分からなかったことが分かることがあります。しかし、仕事が忙しかったり生活が不規則の場合は継続が難しいかもしれませんね。今は、吸入ステロイドで症状がおさまっているようですので、もう少し様子を見ても構わないとは思います。今後、もしピークフローメーターを導入した方がいいと考えられるのは、調子が良いと思っていたのが突然咳が出るようになった、いつ発作が起きるか不安で仕方がない(旅行や出張の予定が立てられない)、もっと病状を安定させたい、などの時でしょうか?
>>(2)薬をくれるだけの大学病院はやめたほうがいいんでしょうか? ベコタイドを処方してくれた診療所の先生には、「別の曜日のO先生はアレルギーが専門だから、その先生にも相談してごらん」と、言われました。ベコタイドもそろそろなくなるので、来週その先生のところに行ってみようとは思っているのですが…。
→先ほども触れましたが、吸入ステロイドを処方してくれる診療所の先生は都合が悪いのですか? 症状が良くならない、何か重大な病気が潜んでいるかもしれない、というなら大きい病院の方がいいとは思いますが、診療所の先生の話ぶりは喘息専門家でもなかなか聞かれない口ぶりです。
では、こんなところで。
<追加メール>
早速ご返事をありがとうございます。
>>アドレスを拝見しますと、ニフティーですね。「健やか村・喘息館」はご存じないですか? 無料で加入できますよ。
→なにせ、喘息一年生、知らないことが多くて。さっそく覗いてみます。
>>随分と勉強されている先生ですね。後で質問でも述べますが、大学病院とはどちらが近いのでしょうか? 私は、吸入ステロイドさえ処方してくれるなら、診療所の先生の方がいいとさえ思います。
→大学病院は歩いて10分ほどの距離です。以前住んでいたところの診療所は地下鉄で15分ほどかかりますが、毎日ならともかく、月に1、2回通うのに苦になるほどの距離ではありません。それよりも、行くはずだった日に都合が悪くなった時や、薬が切れて急いで欲しい時など、融通が利くことを考えれば、むしろ診療所の方が良いくらいだと思います。
>>先ほども触れましたが、吸入ステロイドを処方してくれる診療所の先生は都合が悪いのですか? 症状が良くならない、何か重大な病気が潜んでいるかもしれない、というなら大きい病院の方がいいとは思いますが、診療所の先生の話ぶりは喘息専門家でもなかなか聞かれない口ぶりです。
→都合が悪いことは何もありません。浪人してこちらへ出てきた時から、足かけ20年以上かかっている診療所なので、カルテも残っているし病歴もわかっていて、まあ安心です。私の話から、先生が喘息の治療を任せても信頼できそうだとおっしゃるのでしたら、医者を切り替えることや、ピークフローメーターの使用を含めて、来週にでも、その診療所の先生に相談してみようと思います。
本当に参考になりました。どうもいろいろありがとうございました。
相談の結果等、はっきりしましたら、またご報告いたします。
今日は、これで失礼いたします。