(1)吸入ステロイド剤の長期使用経験がありませんが副作用は大丈夫ですか?

【1010】開業の先生から

<質問>

吸入ステロイド剤の長期使用経験がありません。副作用が心配です。β2刺激剤の代わりに使用しても問題ありませんか?

吸入ステロイド剤とβ2吸入剤の使い分けを教えてもらえませんか?

<応答>

初めまして。

山形大学医学部の諏訪部章と申します。
メールありがとうございます。

>>吸入ステロイド剤の長期使用経験がありません。副作用が心配です。

→吸入ステロイドは短期的には使用された経験があるのですね? どのくらい使用されたのでしょうか? 長期使用は適切な吸入操作(→このホームページの「特集・吸入療法」をご参照下さい)で効果が上がっていればまったく問題はありません。私も長期使用で10年以上使用している症例がたくさんありますが、経口ステロイドのような副作用(糖尿病、白内障、骨粗相症など)はまったくありません。経口ステロイドと異なって、粘膜吸収が低く、肝臓ですぐ分解されますので、長期使用でも副作用がない夢のような薬剤です。欧米でも発売後20年以上経過しますが、重篤な副作用報告はほとんどありません。

これまでベコタイドやアルデシンなどのフロンのスプレーをお使いですか? こちらは吸入指導が面倒ですので、今後長期使用をお考えであれば、新しいフルタイドの方が吸入も簡単で効果も優れているようです。

>>β2刺激剤の代わりに使用しても問題ありませんか?

→近年、気管支喘息は気管支の炎症が主体であって、発作はこの炎症が刺激される結果起こると考えられるようになっています。βは発作を一時的に止めるだけですから、炎症が鎮められない限り、また発作が起きてしまい、そのうち次第に悪化し、重症化してしまうのです。従って、吸入ステロイドを長期的に使って根底にある気管支炎症を抑えることが喘息の予防と考えられるようになっているのです。

この辺の詳しい解説は「知識・喘息のことが良く分かるミニ・ツアー」をご参照下さい。

>>吸入ステロイド剤とβ2吸入剤の使い分けを教えてもらえませんか?

→発作が起きるときは躊躇なくβ2を使わせるべきです。しかし、あわせて気管支炎症を取る吸入ステロイドを発作のあるなしに関わらず吸い続ければ、炎症は次第に治まり、β2は自ずと必要なくなります。これが理想の状態と考えられています。

しかし、吸入ステロイドをいくら使っていても、良くならない方がおります。それは、吸入方法が正しくない場合、また方法は正しいが良くなるまで忙しくて安静を保持できない、などが原因と考えられます。ここで、喘息の吸入指導、生活指導が大切になってくるのです。薬だけでは治せないのは、糖尿病や高血圧などとまさに同じですね。

おわかり頂けましたでしょうか?

もし不足する内容がありましたら、遠慮なくご質問下さい。出来る限りお力になりたいと存じます。

では、先生のご健康とご活躍をお祈りいたします。