(1)イネ科の花粉症で悩んでいます。

【134】33歳女性(公務員)の方から

<質問>

(平成11年5月31日)

初めまして先生、インターネットで検索していて、先生のページに行き当たり、土・日をつぶして読了したところです。同じ様な悩みで苦しむ人がたくさんおられること、喘息という病態が明確に示されていること、に衝撃を受けました。私もセキに苦しんでおり、喘息かも知れないと思いました。これまでの謎が解けたと同時に、「大変なことになった…」とショックを受けています。

数年前から、5月ごろから7月ごろまで、季節性のひどいセキに悩んでいます。この時期は、話をするのも苦しく、夕方近くなるとセキのたびに頭を鈍器で殴られているような衝撃を感じて、微熱ぎみとなり、日常生活の質が、がっくり下がってしまいます。最初は患部がのどのあたりに在る感じがするのですが、これがだんだん肺の方へと降りていくのが感じられ、6月の終わりぐらいになってくると、胸のかなり奥の方から乾いたセキが出てくるのです。この頃には、みぞおちがすっかり凝っています。働いていますので、他人もさぞかし不快に思っていることだろうと、大変気にしています。

始めのころは風邪だろうと思っておりましたが、あまりにも毎年同じ事が続くので、今年は早めに3月頃、近所のアレルギー専門の内科のお医者さんへ行き、血液をとってアレルギー・テストを受けました。すると、「アレルギー体質を示す数値IGEはほとんどゼロなのに、イネ科のオオアワガエリとカルカヤにだけは反応がみられる」という結果が出て、「大変変わったケースです」と言われました。「アレルギーが原因のセキなら、アレルゲンも特定できたことだし、減感作療法が可能か」と思いきや、イネ科の花粉症は非常に少ないため、製品化されていないのだそうです。

科学的な薬は極力体内に摂取したくないので、漢方をお願いし、小青竜湯が出てきました。「予防として発症前の2ヶ月ぐらいから飲み続けるとよい」という話でした。処方は1日3回でしたが、1ヶ月ぐらいしてから、妙な動悸や冷や汗が生じたり、足がつったりするので、おかしいと思い、1日2回に減らしました。そうするうちに5月に入り、やはり例年と同じ様なセキの症状が出てきてしまいました。すると今度は、メジコンという小さい錠剤が処方されました。1日4錠と言われましたが、生来の薬への不信感があり、1日朝晩2錠のみ飲んでいます。少しは軽減していますが、相変わらずセキは出続けています。4錠ちゃんと飲めばいいのでしょうか…。毎年この時期はこうやって薬を飲みながら耐えるしかないのかと思うと、気持ちが暗くなります。

長々と愁訴を述べてしまい、申し訳ありません。ふたつ質問があるのです。花粉症として治療を受けるべきか、気管支喘息や喘息性気管支炎などとして治療を受けるべきか、今後病気との長いつきあいになりそうなので、迷っているのですが、どうか良きアドバイスをお願いします。また、経口薬に対して強い不安感があるので、フルタイドは局所的な投与だという先生のコメントを読み、少し安心したのですが、私のような「花粉症と合併したケース」にも、フルタイドのような局所的な薬剤吸入で効果が出ますか? 

カルテ(?)は下記の通りです。何とぞよろしくお願いします。

・年齢・性別・職業・身長    :  33歳、女、公務員、160センチ
・小児喘息の有無        :  無
・初めて喘息と診断された時期  :  まだ喘息を疑っている段階です。
・およその治療経過       :  上記の通りです。
・喫煙の有無あるいは喫煙歴   :  無
・ペットなどの特殊な環境の有無 :  無
・吸入ステロイド使用の有無   :  無
・その他:母がごく最近、セキがひどくて病院に行ったら、喘息と診断されました。遺伝でしょうか…。祖母も中年以降に喘息のようなセキをしてつらそうだったとのことです。

<応答>

初めまして。

>>インターネットで検索していて、先生のページに行き当たり、土・日をつぶして読了したところです。

→「読了」って全部読んだということですか? だとしたらすごい話しですね。

>>3月頃、近所のアレルギー専門の内科のお医者さんへ行き、血液をとってアレルギー・テストを受けました。すると、「アレルギー体質を示す数値IGEはほとんどゼロなのに、イネ科のオオアワガエリとカルカヤにだけは反応がみられる」という結果が出て、「大変変わったケースです」と言われました。「アレルギーが原因のセキなら、アレルゲンも特定できたことだし、減感作療法が可能か」と思いきや、イネ科の花粉症は非常に少ないため、製品化されていないのだそうです。

→喘息もアトピーもそうですが、IgEが高いからそれが原因だとは言えない点だけは強調しておきたいと思います。特に成人発症型では、IgEは正常の場合があります。また、何の症状もない方を対象に同じ検査をすると、IgEが高い方(非特異的反応)がいるのです。そういう方々が将来的に必ず発症するかどうかは分かりませんが、一生何ともない方もいるでしょう。

また、いわゆる減感作療法ですが、仮にイネ科のエキスがあったとしてもそれが効くかどうかも分かりません。減感作療法は学会でもはっきりした効果は認められていません。著効例ばかりを紹介しますが、効いてない症例の方が多いのが現状で、一般的な治療とは言えません。

>>科学的な薬は極力体内に摂取したくないので、漢方をお願いし、小青竜湯が出てきました。「予防として発症前の2ヶ月ぐらいから飲み続けるとよい」という話でした。処方は1日3回でしたが、1ヶ月ぐらいしてから、妙な動悸や冷や汗が生じたり、足がつったりするので、おかしいと思い、1日2回に減らしました。そうするうちに5月に入り、やはり例年と同じ様なセキの症状が出てきてしまいました。すると今度は、メジコンという小さい錠剤が処方されました。1日4錠と言われましたが、生来の薬への不信感があり、1日朝晩2錠のみ飲んでいます。少しは軽減していますが、相変わらずセキは出続けています。4錠ちゃんと飲めばいいのでしょうか…。毎年この時期はこうやって薬を飲みながら耐えるしかないのかと思うと、気持ちが暗くなります。

→西洋医学のお薬がお嫌いなのですね。あなたの主義でしょうからそれは仕方ありません。メジコンは咳を止めるだけですから、それだけでは基本にある病態が改善されませんので、自然治癒力に期待するしか、炎症を鎮める薬剤を使うかしかありませんね。ただ、いくらお薬がお嫌いでも限度というものがありますから、あまり我慢しないことをお勧めします。

>>花粉症として治療を受けるべきか、気管支喘息や喘息性気管支炎などとして治療を受けるべきか、今後病気との長いつきあいになりそうなので、迷っているのですが、どうか良きアドバイスをお願いします。

→花粉症は多くの場合季節的なものですから、花粉の飛び始める前に予防の抗アレルギー剤を飲んで花粉を極力避ければ対処できますが、喘息は最初は季節的でも、炎症の悪化に伴い慢性化してきます。やはり炎症を取らなければなりませんね。ですから、どちらも治療は必要だと思います。

>>経口薬に対して強い不安感があるので、フルタイドは局所的な投与だという先生のコメントを読み、少し安心したのですが、私のような「花粉症と合併したケース」にも、フルタイドのような局所的な薬剤吸入で効果が出ますか? 

→はい、効果はあります。花粉症にも、ベコナーゼやフルナーゼなど局所へ噴霧する薬剤があります。一緒に使っても構いません。

>>まだ喘息を疑っている段階です。

→今くらいの時期にしっかりと検査をし、適切な治療を行えば、あとは薬がなくても抗原回避や疲労回避などの自己管理だけでコントロールできるようになるかも知れませんね。

よく担当医と相談して下さい。

では。


(2)母もフルタイドで咳が劇的に良くなりました。

【134】33歳女性(公務員)の方から

<追加メール1>

(平成11年6月4日)

こんなに早くにお返事を賜り、感激です。ありがとうございました。あれから喘息関連の本をいくつか読み、巻末に県内の良い病院が紹介されていましたので、行ってみようと思います。

同じくセキで苦しんでいた母も、ほんの1週間ぐらい前に、喘息専門の医院を訪れており、そこでフルタイドを処方してもらって劇的にセキがなくなった、と言っております。それまでは、内科や耳鼻咽喉科など、行く先々で違う診断で違う薬が処方され、そのたびに帯状疱疹が出たり、膿を出すためにあやうく喉を切開されそうになったりでしたが、今は「なーんだ、私、喘息だったのねー」と言っています。

先生のホーム・ページから得た情報は、印字して母にも送りました。とくに、カンジダを防御するために、舌にラップを貼る工夫のところなど、母も感心して、早速実行しているようです。

母娘二代でお世話になりまして、どうもありがとうございました。


(3)平均よりもずっと低いPF値に愕然

【134】33歳女性(公務員)の方から

<追加メール2>

(平成11年6月14日)

先生のHPで確信を得、喘息を疑っていることや、「経口薬ではなく、気管支の炎症に直接吹きかけるタイプの局所的な薬があるようなので試してみたいんですが…」ということを、かかっている医院で尋ねました。「咳喘息かもしれませんね」ということで、はじめて胸部レントゲンをとり、肺活量、呼吸量などの検査がありました。

ピークフローメーターも貸し出してもらい、朝昼晩と測定しています。平均よりもずっと低く、日中でも350程度しかないのには愕然としました。

インタール(エアロゾル)が処方され、それを朝3パフ、夕2パフ、晩3パフ吸入しています。使用しはじめて2日目から、セキの症状が劇的に少なくなりました。小青竜湯やメジコンでは駄目で、抗アレルギー薬が効いているということは、やはり「アレルギー性の喘息」だったんですね??

自分の弱点は、どうやら「のどと気管支」らしいですから、これから毎年、イネの花粉が飛ぶ季節には、こうやって凌ぐほかありませんね…。しかし、そうやって凌げば普通の生活を取り戻すことができるとわかっただけでも、気持ちがぐんと明るくなりました。それに、あの連続するセキによって被るダメージから解放されたことは、本当に嬉しいことです。また、私のような薬嫌いにとっては、「吸入」は、全身を巡るのではなく、局部的な効果にとどめられるという点が、とても安心感があります。

発作などの重度の状況にない場合は、なかなか自分が喘息かもしれないという疑いを持つことなどないでしょうし、医院に行っても喘息としての診断や処方が行ってもらえない傾向にあるのではないかと思われます。私もたまたま「セキ」で検索していて先生のHPに辿り着いたのでしたが、ここで様々な情報を得ることができて、本当に幸運でした。もしあのとき先生のHPに行き当たっていなければ、季節性だし2、3ヶ月耐えればいいのだからと咳止めなど飲んで放置したまま数年間経ち、やがて慢性の気管支炎になっていったことでしょう。それを考えると、ぞっとします。

どうもありがとうございました。