(1)私の治療法は適当でしょうか?
【142】70歳男性の方から
<質問>
(平成11年12月19日)
初めて質問をさせていただきます。
諏訪部先生のWebは1年以上前から拝見させていただいています。
私は、70歳、男性、身長165cm、30年も前からパイプたばこを肺の奥まで吸い込む喫煙者でした。60歳を期に禁煙しました。以前から咳、痰が多かったのですが、長年のたばこのせいだと思っていました。自分が喘息だと気が付いたのは、3年前温泉(硫黄泉)旅行した時、夜間にかなり激しい発作が起き、その症状が、ひどい喘息患者だった亡妻とまったく同じだったからです。きっかけは温泉のガスだったと思っています。症状はその後週1-2度早朝に発作があり、自分でも喘鳴があることがはっきり分かりました。
早速近所の大病院の診察を受け、治療を始めました。投薬はテオドール100mg、ムコソルバン、各1錠3回、アルデシン2パフ、4回、テルシガン2パフ、2回/1日、発作時にサルタノールの頓用でした。その後快方に向かい数ヶ月で発作は殆ど起きなくなりました。
1年後喉にピンポン玉が引っかかっているような違和感を感じ、主治医に訴えたところ、内視鏡検査を受けるように勧められ、その結果食道と胃に癌が発見され、平成10年8月に摘出手術を受けました。手術後気管支よりかなりの鮮血の出血があった事があります。手術後1年4ヶ月今のところ転移はありません。ただ食事が困難で体重が手術前58kgから一時38kgまで下がりました。現在喘息の薬にプレドニン5mg1錠/1日を追加し、アルデシンをフルタイド200mg、4回に替え、吸入しています。プレドニンは2週後2.5mg。次の2週後1.25mgに減らしましたが体重が減りはじめ、また5mgに戻っています。現在体重43Kgで増え止まっています。発作はこの2ヶ月位、全くありません。今月からピークフローメーターによる管理を始めました。最低340、最高470です。
長々と書きましたが、
1、私のような手術によって体重が減少した患者の目標ピークフロー値は、どう考えたらよいのでしょうか?
2、テルシガンはどう効いているのか全く自覚できませんが、吸入は続けた方がよいのでしょうか?
3、プレドニンは確かに食慾増進に効果があるのを感じますが、減らす方向に努めた方がよいのでしょうか?
お返事が戴けたら望外の喜びです。
追伸:
書き落としましたが、使用しているスぺーサーは、InspiaEaseです。ペットは20年以上猫がいます。アレルゲンのテストでは、猫の毛に強い反応が出ています。寝室に入れないなどの程度の注意はしていますが、発作との関係は、意識した事はありません。
<応答>
初めまして。
70歳以上の方からのメールは2人目(最高齢72歳)です。
ご年輩の方からメールを頂くのはとても励みになります。
>>諏訪部先生のWebは1年以上前から拝見させていただいています。
→ありがとうございます。
>>私は、70歳、男性、身長165cm、30年も前からパイプたばこを肺の奥まで吸い込む喫煙者でした。60歳を期に禁煙しました。以前から咳、痰が多かったのですが、長年のたばこのせいだと思っていました。
→これだけの情報ですと、慢性気管支炎を疑いますね。ピークフロー値もそこそこの値が吹けておりますので、慢性肺気腫(肺が壊れて息切れがでる病気、ピークフロー値はもっと低い)ではなさそうですね。
>>自分が喘息だと気が付いたのは、3年前温泉(硫黄泉)旅行した時、夜間にかなり激しい発作が起き、その症状が、ひどい喘息患者だった亡妻とまったく同じだったからです。
→奥様も喘息だったのですか? お亡くなりになられたのですね。ご冥福をお祈りいたします。
>>きっかけは温泉のガスだったと思っています。症状はその後週1-2度早朝に発作があり、自分でも喘鳴があることがはっきり分かりました。
→これだと明らかに喘息ですね。慢性気管支炎でも感染を併発すると痰が絡んでゼーゼーすることはありますが、発作の苦しさとは少し違いますね。
>>早速近所の大病院の診察を受け、治療を始めました。投薬はテオドール100mg、ムコソルバン、各1錠3回、アルデシン2パフ、4回、テルシガン2パフ、2回/1日、発作時にサルタノールの頓用でした。その後快方に向かい数ヶ月で発作は殆ど起きなくなりました。
→これは専門医の治療ですね。テルシガンが入っていますので、多少は慢性気管支炎を念頭に置いた治療をしていると考えられます。
>>1年後喉にピンポン玉が引っかかっているような違和感を感じ、主治医に訴えたところ、内視鏡検査を受けるように勧められ、その結果食道と胃に癌が発見され、平成10年8月に摘出手術を受けました。
→それは大変でしたね。でも早く見つかって良かったと思います。手術はおそらく開胸、開腹と大手術であったことでしょう。また手術後に放射線照射とか化学療法(抗癌剤)の投与は行われましたか?
>>手術後気管支よりかなりの鮮血の出血があった事があります。
→これがよくわかりませんが、気管支への手術侵襲があったのでしょうか? 一時的なものであれば、ピークフロー値とは関連しないと思います。
>>手術後1年4ヶ月今のところ転移はありません。
→これは良かったですね。
>>現在喘息の薬にプレドニン5mg1錠/1日を追加し、アルデシンをフルタイド200mg、4回に替え、吸入しています。プレドニンは2週後2.5mg。次の2週後1.25mgに減らしましたが体重が減りはじめ、また5mgに戻っています。現在体重43Kgで増え止まっています。発作はこの2ヶ月位、全くありません。
→プレドニン5mg位だとほとんど全身副作用はありませんね。
>>今月からピークフローメーターによる管理を始めました。最低340、最高470です。
→普段はどのくらいなのでしょうか? それにしてもこの値はまあまあの値だと思いますよ。
>>1、私のような手術によって体重が減少した患者の目標ピークフロー値は、どう考えたらよいのでしょうか?
→ピークフロー値は、気道の太さ、肺活量、呼吸筋力によって規定されます。同じ人間であれば、肺活量と呼吸筋力は急には変化しませんから、便宜的に気道の太さ(炎症、痰、痙攣)の指標として用いられています。
通常、ピークフロー値の基準値には体重は勘案されていませんが、あなたのように、体重減少が著しい場合は、主に呼吸筋力の低下として、ピークフロー値が下がることは考えられるでしょう。また、恐らく開胸・開腹手術ともなりますと、手術創の影響があって十分な呼吸ができませんから、肺活量が以前より少なくなっていると考えられます。
従いまして、通常の基準値より少な目に設定しても構わないと思います。それよりも症状がないことが何よりですね。ピークフロー値はまあまあでも症状(発作など)がある場合は、もう少し高い可能性を考えた方がいいと思います。
それから、最高値470とのことですが、これに近い値が吹けているときにサルタノールを吸ったとき値がさらに上がるかどうかも参考になるでしょう。
>>2、テルシガンはどう効いているのか全く自覚できませんが、吸入は続けた方がよいのでしょうか?
→テルシガンは主にタバコによる慢性閉塞性肺疾患(=慢性気管支炎や慢性肺気腫)に痰の減少や息切れの緩和を目的に使用されます。喘息で使用されることもなくはないですが、吸入ステロイドが普及したいまでは、それを上回るメリットは感じられないかも知れませんね。主治医と相談して、中止しても構わないと思います。
>>3、プレドニンは確かに食慾増進に効果があるのを感じますが、減らす方向に努めた方がよいのでしょうか?
→プレドニンを2.5mgにして体重が減ったという経緯があるのであれば、無理に減らさなくて良いと思います。5mg位では重篤な副作用はそうおきません。
>>ペットは20年以上猫がいます。アレルゲンのテストでは、猫の毛に強い反応が出ています。寝室に入れないなどの程度の注意はしていますが、発作との関係は、意識した事はありません。
→ネコの影響は2つ考えられると思います。ひとつはアレルゲンとして喘息の原因となっている場合、もう一つは毛やフケなどが非特異的刺激として気管支炎症の治療の阻害になっている場合です。アレルゲンがマイナスだとしますと、後者の場合を考えて行くべきと思います。従って、極力影響を避けることは良いコントロールを続けて行く上で今後も不可欠だと思います。
では、お大事に。