(1)甲状腺機能低下症と喘息について。

【143】36歳女性(システムエンジニア)の方から

<質問>

(平成12年1月18日)

はじめまして。

お正月明けから、喘息様の症状で夜中や朝方に苦しいことがあり今週受診しました。診ていただいた結果、予想どうり喘息の所見があるとのことで、薬を処方してもらいました。医師の指導では、夜中に薬を服用しても悪化して異常を感じるようであれば、救急車でもいいから病院にきなさい。ということでした。そんな大げさな。2時間ぐらいすればおさまるしと、医師に言い返したところ喘息症状で死んでしまう場合もあるのだから、正しい対処を心がけようという説明をうけました。初診で、死んでしまうという言葉を耳にして大変おどろきました。これまで、性質の悪い風邪にかかったぐらいに思っていましたので。

喘息についてどんな病気であるのかよく知ろうと思い、WEB上の情報を収集中に先生のページを知りました。

これから、正しく診察してもらって、適切な治療を行っていくために教えて下さい。早期治療が肝要ということなんですよね。特におさえておきたいことは、子供のころからの持病との関連性です。慢性甲状腺炎(甲状腺の機能が低下している病気)で、小学生の頃から薬でバランスをとる治療をつづけています。(甲状腺機能低下症についてもよく理解してないかもしれません)

<私に関する情報>
・年齢:36歳
・性別:女
・職業:システムエンジニア
・身長:154cm(体重:○○kg。最近急に太りました)
・小児喘息:
 小学項3〜4年生頃喘息になった。特別な治療は記憶にない。5年生には治っており、長く煩ってはいません。夜中激しい咳き込みで眠れず苦しかった記憶だけ残っています。当時、遠足後発症し松の花粉が原因かもしれないと診断されました。中学の頃は、マラソンではすぐにゼロゼロになり苦労してました。

・近年の症状:
 息苦しい、ゼロゼロ感があり何か変だと感じた最初は6年ぐらい前です。次に変だなあと思ったのは、3年半程前です。このときは、風邪が引きがねで咳き込みとゼロゼロが夜中にひどくなり眠れない状態になりました。(妊娠中)風邪が治るとともに治まりました。去年の秋から、風邪をひいていない通常時にゼロゼロし咳き込むようなことが起こるようになりました。会社から帰宅する帰途でよくなります。また、夜中にゼロゼロとせきで眠れない、朝方目が醒めてしまうことも時々あります。咳き込んで、眠れない感じが子供の頃の記憶に似ていましたので、これは喘息かもしれないと思い受診しました。過去を振りかえってもゼロゼロ感は、いつも左側だけのような感じです。(左か右か区別して感じられるものですか?)

・治療状況:
 今週近所の総合病院を受診したばかりで、血液検査とレントゲンの結果はまだ出ていません。(受診時の胸の音は通常)が、自覚症状から喘息の所見があるということで、喘息用のお薬を処方してもらいました。甲状腺で通院していることは説明しました。子供のころから通っている甲状腺専門医の先生には、今年はまだ診てもらっていません。去年、胸が息苦しいことがあると症状を伝えたところレントゲンを撮ってくれ心臓がやや大きくなっているとのことでした。まだ、大丈夫ということでしたが無理をすると心臓に水がたまるそうです。甲状腺の薬をさぼると、体がむくむそうです。最近、忙しいさにかまけてさぼり気味でした。

・甲状腺の薬:
  チラージンS錠 1日2錠

・近所の総合病院で処方してもらった薬:
  PL顆粒(総合かぜ薬)
  テオロング錠+オノンカプセル(2錠づつ朝食後、夕食後)
  ベコタイド50(4回/日)
  メプチンエアー(発作時用)

・喫煙しません。

・家には、ハムスターが1匹います。実家でも自宅でもなるので場所には関係ないように思います。

・その他、アレルギーはないです。

・去年は会社でダニの被害に遭いました。

持病との関連性や今後の受診の仕方について教えて下さい。よろしくお願いします。

<応答>

小児喘息の既往があって、治っていたと考えていたのがいつのまにか、再発してきたという経過ですね。

>>医師の指導では、夜中に薬を服用しても悪化して異常を感じるようであれば、救急車でもいいから病院にきなさい。ということでした。そんな大げさな。2時間ぐらいすればおさまるしと、医師に言い返したところ喘息症状で死んでしまう場合もあるのだから、正しい対処を心がけようという説明をうけました。

→この先生なら信頼してお任せして良いですね。

>>過去を振りかえってもゼロゼロ感は、いつも左側だけのような感じです。(左か右か区別して感じられるものですか?)

→気管は枝分かれして左右に分かれますが、左側は心臓があるため、ほぼ直角に曲がっているんです。ですから、痰がたまると右側よりも外に出て行きにくく、どうしてもゼーゼーすることが多いですね。でも、大概は左側で音が聞けても、多少の左右差こそあれ、両側に炎症や痰が存在しているものです。極端に左右差があるときは、レントゲンを撮れば何か異常な陰が出てくるはずです。

>>ベコタイド50(4回/日)。

→回数としては少ないですね。スペーサーを使っていますか?吸入操作に関しては、私のホームページの「特集・吸入療法」を参考にして下さい。吸入操作が適切なのに効果が得られない場合は、回数を増やしてもらうべきですね。

>>家には、ハムスターが1匹います。実家でも自宅でもなるので場所には関係ないように思います。

→これはハムスターがいないときでも発作が起きるからハムスターが原因ではないとは言い切れません。ハムスターによって引き起こされる慢性炎症が存在すると、ご実家に帰られて、寒さとか環境の変化に曝されたりすると、それらが非特異的刺激となって気管支を刺激し発作を起こすことがあるからです。

ハムスターを考える場合、アレルギーとして喘息の根本的原因として遮断する場合は勿論です。しかし、仮にハムスターにアレルギー反応がでなくても、臭いやフケなどが、非特異的刺激となって、気管支炎症の治癒過程を阻害してしまうことはよくあります。ですから、日常においてはハムスターからの回避を心がけると良いですね。これは、何も里親に出すことだけではなく、ハムスター(オリごと)をある一室から出さない、長く接するときにマスクをする、などの注意で済む場合もあります。

>>持病との関連性や今後の受診の仕方について教えて下さい。

→持病の甲状腺機能低下症やチラージンSに関しては、喘息との関連で取りざたされている点は特にはないと思います。しいていえば、チラージンSを飲み忘れれば、主治医が言うように、心臓に負担がかかり、ひいては呼吸の方にも影響しますから、好ましくないですね。同時に、むくみによって気道炎症が悪化することもありますから、とにかく持病の方はこれまで異常にしっかり管理して行くことだと思います。

<追加メール1>

返信どうもありがとうございました。

その後の経過:

今日の早朝も目が醒めてしまいました。しっかり眠れないと生活のリズムが乱れ何かとトラブルの原因になります。薬、計画どうりに正しく続けなければいけないということですね。(反省)少し快方にむかったので油断しました。

土曜日に、甲状腺の先生に診てもらいました。喘息の薬の服用について、報告してきました。先生から、喘息様の症状と甲状腺機能低下症との関連性について特に説明はありませんでした。薬の効目の様子をみるということと、いつもの薬を忘れずに飲もうということで、あっさりでした。

たまたま偶然なのですが、その日アンケート(紙)がありまして、アンケートの1問めの設問内容は、これまでに喘息と診断されたことはありますか?でした(あると答えた)まさに、今現在喘息との関連性について知りたいと思っている状況にピタリとあてはあまる質問であったので、何を調べようとしているのか探求したいと思いました。何か調査研究課題があるようです。

残念ながらお正月空けで、大変混み合っておりまして先生とゆっくりと話はできませんでした。次回に、もう少し詳しくアンケートの主旨について聞いてみようと思います。喘息の先生からも興味があるアンケートだと思いますがどうでしょうか?

今週は、先週の検査結果が出ます。(レントゲン+血液)ちゃんと受診して来ます。

ハムスターについては、気をつけて付き合います。庭の松の木も少し、心配です。

ところで、朝方ゼロゼロになっって目が醒めるのはどういったメカニズムによるものなのでしょうか? 仕組みを知ることで、あったかくするといいとか、何か防御策は検討できないものでしょうか?

<追加応答1>

>>アンケートの1問めの設問内容は、これまでに喘息と診断されたことはありますか?(…略…)次回に、もう少し詳しくアンケートの主旨について聞いてみようと思います。喘息の先生からも興味があるアンケートだと思いますがどうでしょうか?

→私自身甲状腺機能低下症の患者さんを診察することはあまりありませんが、ひとり甲状腺手術後にチラージンSを服用している喘息の患者さんがおります。しかし、これまで普通に喘息の治療をしてきましたが特に何も問題はありません。また、何かうっかり忘れていると困るので本で調べてみましたが、特に関連はありませんでした。また、学会レベルでも特にトピックになってもいないように思います。

ただ、その先生が何か興味を持って調べているのかも知れません。もし、何かわかりましたらぜひお教え下さい。

>>ところで、朝方ゼロゼロになっって目が醒めるのはどういったメカニズムによるものなのでしょう? 仕組みを知ることで、あったかくするといいとか、何か防御策は検討できないものでしょうか?

→根本的には吸入ステロイドをしっかり効かせて気管支の炎症を取ることです。対症的には、夜のテオロングをできるだけ就寝前ギリギリに服用するとか、メプチン寝る前に1、2吸入するなどです。

では、お大事に。