(1)咳喘息とアトピー咳嗽の違いについて。

【145】34歳男性(公務員)の方から

<質問>

(平成12年2月29日)

昨年5月頃から咳喘息の症状が出始めましたので、かれこれ10ヶ月近く経過します。

まず、経過ですが、以前から診察を受けている病院で継続治療中です。最初に受診して以来、様々な検査を受けました。それらのデータや自覚症状等を基に主治医から「アトピー咳漱」であるとほぼ断定的な回答を得ました。主治医の話を要約しますと「咳喘息」と「アトピー咳漱」は非常に類似した症状であるが、概念的には異なるものであるとのことでした。「アトピー咳漱」である根拠として、まず、(1)血液中及び痰中の好酸球が正常数値であること(定期的に検査を続けた結果です)、(2)咳喘息に比較的効用がある気管支拡張剤が効かないこと、(3)喘息の症状に見られる夜間の咳込み等が見受けられないこと、(4)ピークフロー値が正常であること等です。

以前、私の場合、会話中に咳込んでいました。また、食事後にも弱冠、咳込み、少し痰が絡んだようになっていました。現在、会話中の咳はほとんど出なくなりました。食事後に少しだけ咳が出る程度まで回復しました。ただ、今も定期的に診察を受け、薬は服用し続けています。フルタイド100(朝・夜各1吸入)、オノン等の内服薬、咳止薬(リンコデ)を朝・昼各1袋(休日は除く)及び、うがい薬・トローチです。

とりあえず、端的に現状を申しますと、かなり改善されたということになります。咳はほぼ出なくなったということです。ただ、完全に咽喉の違和感がなくなったわけではありません。なんとなく咽喉や気管辺りに違和感を感じる時があります。

そこで、今回の質問なのですが、

(1)「アトピー咳漱」と「咳喘息」の具体的な相違点を教えてください。

※「アトピー咳漱」という病名ではアレルギー関係の本やホームページで見つかりません。よって、自分自身の知識が希薄なのです。

(2)何故、食事後に咳が出易いのでしょう。食事と気道とは一見関係がないように思うのですが、そうではないのですか。

質問は以上の2点です。

主治医からも勿論説明は受けているのですが、アレルギー関係の本やホームページを探しても見当たらないので正確な知識を身に付けておきたいのです。ご多忙中とは存じますが、諏訪部先生のご見解をお聞かせください。

よろしくお願いいたします。

<応答>

咳の方はまずまずですね。

>>(1)「アトピー咳漱」と「咳喘息」の具体的な相違点を教えてください。

両者の違いについて、ある喘息の本からの抜粋ですがご紹介します。

咳喘息は気管支喘息の亜型あるいは前段階であり、気道過敏性の亢進があり、気管支拡張薬が奏効する。一方、同じ持続性乾性咳嗽を訴える患者にはアトピー咳嗽があり、咳喘息とは異なり気道過敏性の亢進がなく、β2交感刺激薬が無効である。咳喘息では気管支平滑筋の収縮によって咳嗽が出現し、アトピー咳嗽では気道の咳受容体感受性の亢進によって咳嗽が出現する。前者には気管支拡張剤が奏効し、後者にはヒスタミンH1拮抗剤が有効である。しかし、両疾患ともこれらの治療が奏効せず、ステロイド治療を必要とすることもある。両疾患ともアトピー素因の検索が診断に参考になるが、喀痰特に誘導喀痰中の好酸球出現が重要な所見である。持続性咳嗽乾性咳嗽患者に対しては、この2つの疾患あるいは咳嗽出現の2つの機序を念頭に入れて診療することが肝要である。

つまり、咳喘息は喘息としての特徴を備えますが、アトピー咳嗽は、同じ気道過敏性の検査を行っても喘息の特徴を示さない点が大きな特徴でしょう。しかし、両者とも軽度のうちは治療上の違いがはっきりでますが、病気が進んでくると、やはり基本的に好酸球中心の気道炎症が主体となりますから、ステロイドが必要となってくるのでしょう。

この両者の分岐点がどこでどのような機序で別れてくるのかに関しては非常に難しい問題ですね。

(2)何故、食事後に咳が出易いのでしょう。食事と気道とは一見関係がないように思うのですが、そうではないのですか。

色々説はあると思いますが、まず食後は満腹となり横隔膜が挙上するので、呼吸が苦しくなりやすいですね。また、食事によって胃腸系は消化吸収が始まり、自律神経系では副交感神経系優位となり、これは気管支平滑筋に対しては収縮を促す方向に作用しますので、咳は出やすいかも知れません。また、おそらく何人かの方は、食べたものの一部が気管の方へ落ちて行く(一種の誤嚥)ので気管支が刺激されるのかも知れません。

では、お大事に。