◆体験談008:21歳男性・医学生(平成11年10月10日)

はじめまして。○○大学医学部1年生です。

諏訪部先生の喘息に関するHPを拝見させていただきました。4月からフルタイドを使い始めて、現在の感想を投稿しようと思い、メールを書いています。

2歳から小児喘息を患い、21歳になったいまでも、コントロールをしています。

基本データは、
 身長156cm
 体重48kg
 年齢21歳
 家族 母親が喘息(現在はひどい発作を起こすことはないが、軽い発作のようなものを起こすこともよくある。治療はいっさい受けていない)

昨年までは、地元の小児科医のもとで、
 テオドール 400mg/day
 ザジテン 2cap/day
 アルデシン(吸入) 0.05mg/day
 発作時にはメプチンエアーを一吸入
のコントロールを受けていました。

1年を通じて発作は起きていて、運動誘発性の発作も多く、メプチンエアーを頻繁に使っていたと思います。

今年、○○大学への進学に伴い、附属病院の先生に診察をお願いし、フルタイドでのコントロールを始めました。

コントロールを初めて、4週間はピークフローを測定していなかったので、それ以後のデータになりますが、
 -6week 400-450
 -8week 400-500
この時点で、200マイクロ/day から、400マイクロ/day(朝・就寝前の2回)に増量
 -20week 500-550
現在では 540-580(ピークフロー値はpersonal bestによるもの)に落ち着いています。発作もなく、ここ3ヶ月は気管支拡張剤も使うことはありませんでした。

フルタイドを使い始めて、効果を実感できたのは、1−2ヶ月後だったような気がします。今まで、頻繁に使っていた気管支拡張剤を使わなくなったことは本当にうれしかったです。今後もこの調子でコントロールできていけばと思います。

吸入ステロイドの治療に対して不安を抱く方も多いと聞いています。私の母親は、薬を使うことにどうも抵抗があるようで、ステロイドに関しても「使っても大丈夫なの? 薬は使わない方がいいよ」と口うるさくいうことがあります。母親は、自分が発作を起こしたときに、薬を使わずに我慢して対処してきたからではないかと思います。このようなことをいわれるたびに、しっかり説明をするのですが、やっぱり不安は拭いきれないようです。

患者本人が、薬に対して正しい理解をしていたとしても、家族のなかにしっかり理解できていない方がいらっしゃると、患者さんにストレスが生まれることがあるかもしれません。私自身が一時期ストレスを感じた時期がありました。難しいことですが患者周辺の方々が正しい知識を持ってもらうのが一番だと思います。

また、小児期に発作をおそれてあまり運動をする事が好きではありませんでした。それに、このころから、体力がほかの子よりも劣るという意識があったというのと、喘息をよくするために運動するという意識がどこかにあり、それらが負担になって、運動することを毛嫌いしていたかもしれません。

小学校高学年になって、ハンドネブライザーを使うようになってからは、発作をおそれることはなくなって(あまりにも気軽に使えるため、過剰に使いすぎ、ひどい発作を起こして入院したこともありましたが)、ふつうに運動もしていました。マラソンも人並みにやっていました。

子供の患者さんに、薬を使って正しくコントロールをすることで、喘息に対しての不安を取り除いて、もっともっと体を動かす機会を与えてあげることの大切さを今になって実感しています。

そんなこともあり未だにスポーツに関しては劣等感もあり、また、体格も小柄(これは遺伝でしょうがないといえばしょうがないですが)で、今一番不安なのは体力です。私は、将来は救急医学の方にいきたいと思っていますのでもっともっと体力を付けなければだめですね。

4月のはじめにフルタイドの使用を初めて、内服薬も同時に切りました。1−2週間は、内服薬を使わなくなったこともあり気管支拡張剤の使用も増えましたが1ヶ月後には使用回数は徐々に減り始めていたと思います。発作(発作といっても小発作にも達しないような状態)に対して使う回数は、3/weekぐらいだったと思います。

ただし、発作は起きないまでも、しばらく、内服薬を切ったことへ不安から、予防目的で、アイロミールを就寝前に一回吸入することが、5月ぐらいまではほぼ毎日、週2−3回PF値が悪く不安なときに使うということが6月中頃まで続きました。また、運動誘発性の発作も多かったので、体育実習の前にアイロミール(途中でサルタノールに変更。これは薬剤部の関係のためです)を1吸入することもありましたが、これも6月中頃からは使わなくなりました。全く使わなくなったのは7月に入ってからです。

フルタイドの増量についてですが、増やしてからは、不安定だったPF値も安定するようになってきましたし、同時にサルタノールの使用機会も減ってきたとは思います。(ただし1−2週間で劇的に減ったという印象はありませんが)

薬を正しく使ってふつうの生活を送ってもらうのが第一だと思います。

先生のHPのなかにある小児喘息に関する患者のみなさんからの寄稿の中で、喘息の療養所(正しい名称が分かりませんが)の話がありました。

私の実家にも、似たような臨海学校(正式名称は忘れましたが、中学までの学校と病院が併設されている全寮制の施設です)という所があり、親戚が教員として勤務していたこともあり、私の親は施設に入れることを真剣に考えていたようです。

私自身は、そのころは単純に、苦手な運動を無理矢理やらされるのがいやで入りたくないと思っていたのですが、今になって考えてみても入らなくて正解だったと思います。

そこで行っていた治療はどういうものなのかは分からないので、それに関してはコメントしませんが、あのような閉鎖された空間に喘息患者を入れることがいいことだとは思えません。

ふつうの生徒並の体力を付けて、ふつうの生活を送れるようにするために、ふつうではない空間に詰め込まれるのは矛盾していると思います。

自由がいろいろな面で奪われるという話も聞いています。

私は、小学校高学年の入院経験から、医療に関心を持ち、救急医療のドキュメンタリーなどをみて、中学校にはいる前から医師になりたいと思っていました。進学校に行かなければならないという意識はあったので、中学時代は塾にも通い勉強もしました。もちろん、あのころはカラオケのブームでよく遊びに行ったりもしました。たぶん、療養所に入っていたら塾に行くことも、友達と外に遊びに行けなかったと思います。そして、高校も学区では1番(といっても田舎の高校なのでたかがしれていますが)の高校に入ることも、できていなかったかもしれないし、その高校に行ってなければ、こうして医学部にいなかったかもしれません。

本当に、外界から閉鎖された空間に入り込まなくてよかったと思っています。

療養所は、子供の自由を奪い、子供の才能や希望を育てる機会を奪ってしまうことも多々あると思います。それに、いろいろな友人と出合う機会も失ってしまうような気がします。しっかりコントロールさえしていれば、普通の学校に十分通えるはずです。ですから、喘息患者に対してのこのような療養所の必要はないと思います。薬でしっかりコントロールし、普通に学校の体育の授業を受けて、ふつうに外で遊んでいれば、人並みの体力は付くはずですから。

私も本当に危険な目に遭いました。1週間、発作が頻繁に起こる状態が続き、食事もとることができず、入院した時点では、ケトアシドーシス(註:飢餓状態で身体の脂肪が分解され、血液が酸性になり危険な状態)を起こしていました。このときは、ステロイドの点滴を開始して、1−2日後には発作は落ち着き、3週間の入院で退院しました。これは11歳の時の話です。

(小児喘息は)できるだけ小さい頃から、母親に正しい知識を身につけてもらって、発作が起きないようにコントロールしながら、自由に遊ばせてあげるのが一番だと思います。

今は、卓球部(唯一、人並みよりもうまいスポーツ)に入っています。週2回の練習で、それほどハードなものではないですが。医学生の大会にも参加して、しっかり1回戦だけは勝ってきました。1年生の間は、一般教養のために本学キャンパスに週4日いかなければならないため、医学部キャンパスから少し離れたところに住んでいます。そのため、医学部までいって、複数の部活をこなすというのはなかなか大変です。来年になれば医学部キャンパスの方に引っ越すので、時間もできるでしょうから、ほかの部活にも入って、体を鍛えていきたいと思います。

以上、小児喘息に関する体験談の中の医学生の方の投稿を読んで、それにつられて私もいろいろ書いてしました。

個人的な意見や、行き過ぎた発言もあるかもしれませんが(特に、療養所について)、ご了承ください。