4. 全身性ステロイドはなぜ急にやめてはいけないのか?
この「寄稿集」のホームページは、吸入ステロイドの他に全身性ステロイドをもう一度見直して欲しいというのが、もう一つの主張になっております。ステロイドの誤解を解くためには、正しいステロイドの知識が必要です。
ステロイドの副作用は、糖尿病、骨粗鬆症、白内障、肥満などなどきりがありません。そしてそのことは、ステロイドがこれまで“悪”とされてきたゆえんでもあります。
元々基礎疾患にこれら副作用の病気を有している方や急性の胃腸障害などの副作用は別として、全身性ステロイドは2週間程度なら重篤な全身性副作用はほとんどないとされています。
しかし、大量の全身性ステロイドをそれ以上の長期間(1ヶ月以上、半年以上など)継続した場合、上記副作用の他に今度は急に止められなくなるという現象が生じてきます。それは、体内での副腎皮質ホルモンの産生力が弱ってくるからです。従って、体内の副腎皮質機能が回復するのを待ちながら減量しなくてはならないので、投与は長期化してしまいます。
以下に、その機序を漫画にしてご説明します。なお、この点に関しては、「付録集(3):気管支喘息の患者さんへ」の中でも詳しく触れていますので、そちらも是非参考にして下さい。
(1)あるホルモン工場があって、そこには脳下垂体さんという上司がいて、その下に副腎皮質君という従業員がいます。そこでは普段、上司の指令(実際にはACTHというホルモンを放出する)を受けてコーチゾルという副腎皮質ホルモンを産生し出荷してます。
(2)ある忙しい季節になって(喘息が悪くなって)、コーチゾルの生産が追いつかなくなり、上司がガミガミと従業員を怒鳴りつけ「もっと働け。もっと働け」とうるさく言います。しかし、産生は追いつかず副腎皮質君はへばってしまいます。
(3)そこで、ステロイドというロボットを2、3台リースしてコーチゾルの販売を増加させることにしました。
(4)その結果、コーチゾルの生産は順調に伸び需要を満たせるようになりましたが、従業員は暇になり働かなくなります。また、上司も生産が順調なので、指令を出さなくなり、2人とも居眠りをし怠けてしまいます。
(5)そこに、突然忙しい季節が終わり(喘息が良くなって)、コーチゾルの需要はへり、リースされていたロボットは全部引き上げられてしまいました。
(6)そこに残された、上司と従業員は長い間の怠けが祟って、急には働けない状態になって、コーチゾルを必要としている需要者から文句を言われるが、対応できないで困ってしまっていました。
以上です。
2週間程度の全身性ステロイドなら、急に止めても副腎皮質君は怠けませんから、すぐ働いてくれます。ステロイドというロボットをうまく利用して、気道の炎症を完全に取って見ませんか?(但し、使用の際は主治医と良く相談して下さい)