正しい吸入操作の手順

◆吸入方法については、その重要性が指摘されながら、残念なことに学会などが作成した共通マニュアルは存在していません。また、吸入ステロイドを販売しているメーカーが作成したビデオやパンフレットも必ずしも的を射ていないという憂慮すべき状況にあります。

◆吸入指導に関しては、施設によってさまざまな指導がなされているのが現状ですが、なかには吸入ステロイドの効果をあげるために基本的な内容が正しく伝わらず、関係のないことや明らかに間違った内容のみが誇張されて伝わっているという状況がしばしば認められます。

◆ここに紹介します操作手順は、一般的ないくつかのプロトコールを土台に、私が実際の診療で得た経験を加味して作成しました。まず、基本的な操作の流れをしっかり学んでいただき、その他の誤解や不明な点はこのコーナーの「チェックリスト」や「Q&A」で解決し肉付けして下さるようお願いします。


A.スペーサーを用いる方法

◆吸入療法は、基本的にはすべてスペーサーと呼ばれる吸入補助器を用いて行うことをお勧めします。スペーサーは、オープンマウス法に比べ、手技が簡単で、吸入効率を高めてくれます。スペーサーには色々な種類がありますが、容量が大きくしっかりしたものをお勧めします。

(1)吸入前に発作がおきていないか、痰が絡んでいないかなどをチェックして下さい。

◆発作が起きているときは発作止めを用い、水分補給などでよく痰を切ってから行って下さい。

(2)ボンベをよく振って薬液が残っていることを確かめて下さい。

(3)スペーサー内に1噴霧して下さい。

◆この時白い煙のようなもの出てすぐ消えてしまいますが、これは薬剤ではありません。薬剤を運ぶフロンガスです。薬剤はフロンガスが消失しても30秒から1分の間スペーサー内に漂っているとされていますので、慌てなくて結構です。必ず1噴霧1吸入の原則を守って下さい。

(4)ゆっくり息を吐いて下さい。

(5)顔は正面を向き、スペーサーの口を上下の歯でかんで、喉を大きく広げるようにゆっくりと一定の早さで吸い始めて下さい。

◆顎を引いて吸入すると喉が狭くなり薬剤は気管支に到達しません。また、唇をすぼめて吸うと流速が早くなり薬剤が喉にあたって気管支に到達しにくくなりますので、唇の力を抜いて吸入して下さい。さらに上下の歯を閉じて吸うと薬剤が歯にあたってしまいます。スペーサーの吸入口を上下の歯でしっかり噛むようにしてくわえて吸って下さい。

(6)胸一杯になるまで5〜10秒くらいかけてゆっくり吸って下さい。

◆特に吸い始めが早くならないように注意して下さい。

(7)吸い終わったらスペーサーを口からはずし、息を吐き戻さないで10秒数えます。

◆せっかく吸入してもすぐに息を吐いたのでは薬剤が逃げてしまい、気管支粘膜には作用しなくなります。

(8)ゆっくり鼻から息を吐き出します。

◆鼻から息を抜くとゆっくり空気が出てきます。その間も薬剤は気管支粘膜に滲み込みさらに効果が上がります。

(9)すぐうがいをします。

◆吸入ステロイド唯一の副作用である口腔内カンジダ症を防止してくれます。

(10)同じ操作を指示された回数を繰り返します。


B.オープンマウス法(スペーサーを用いない方法)

◆この方法は、外出時に発作止めのβ刺激吸入薬を屯用する場合あるいはスペーサーを忘れたときに吸入ステロイド剤を吸入する場合にのみ行って下さい。

(1)吸入前に発作がおきていないか、痰が絡んでいないかなどをチェックして下さい。

(2)ボンベをよく振って薬液が残っていることを確かめて下さい。

(3)大きく口を空けたまま、顔は正面を向き、ゆっくり息を吐いて下さい。

(4)ボンベの口を握り拳一つくらい離し、息の吸い始めに口の中へ1噴霧して下さい。

◆この操作を、吸気と噴霧の同調操作と呼びオープンマウス法の最も難しい部分とされています。

(5)そのまま一定のリズムで息を吸い続けて下さい。

◆噴霧しても息を止めないでそのまま吸入し続けることが肝要です。

(6)胸一杯になるまで5〜10秒くらいかけてゆっくり吸って下さい。

(7)吸い終わったら口を閉じ、息を吐き戻さないで10秒数えます。

(8)ゆっくり鼻から息を吐き出します。

◆鼻から息を抜くとゆっくり空気が出てきます。その間も薬剤は気管支粘膜に滲み込みさらに効果が上がります。

(9)すぐうがいをします。

◆吸入ステロイド唯一の副作用である口腔内カンジダ症を防止してくれます。

(10)同じ操作を指示された回数を繰り返します。