若年〜中年男性が夜間にうめき声とともに突然死する病態(``sudden unexpected
death syndrome``)の原因疾患の一つとしてBrugada症候群が注目されている。特徴として以下のものが挙げられる。@中高年男性に好発する。A心電図上V1〜V3でのcoved型ST上昇と右脚ブロック様波形を呈する(図1)。B心室細動(VF)は夜間から早朝に出現する。C抗不整脈薬Ic群で誘発される。D一部の症例では、右室の形態学的異常が認められる、などである。
Brugada症候群のST上昇の機序として、右室流出路での心内膜と心外膜の電位勾配により、coved型ST上昇が形成されるというAntzelevitchらの学説が支持されている。再分極のばらつきが著明になると、phase
2リエントリーから心室機外収縮が出て、心室細動が発生するといった仮説が立てられている。この分子レベルでの機構として、Brugada症候群の15%程度にNaチャンネル(SCN5A)の遺伝子変異による機能異常が見つかっている(図2)。
Brugada症候群の予後に関する大規模調査の結果によると、日本人での有病率は、0.15%、発症率は0.014%/年と報告されている。Brugadaらも心蘇生や心室細動の既往のある有症候群では予後不良であると報告している。SCN5Aの遺伝子変異と予後との関連は未だ明らかではない。coved型ST上昇、心蘇生や心室細動の既往例では、植込み型除細動器が適応とされている。今後、無症候性Brugada症候群の生命予後の調査や非侵襲的な予後判別指標が求められている。われわれも、ホルター心電図、加算心電図や遺伝子変異の有無を駆使して予後を判定する非侵襲的な指標を構築したいと考えている。
文献 1) Pedro BRUGADA,and Josep BRUGADA. J Am Coll Cardiol 1992;20:1391-6 |