平成15年6月より、岩手医科大学でも診断群別包括支払制度(Diagnosis Procedure Combination:
DPC)が導入されました。平成16年3月までの10ヶ月間の医療収入は、従来の出来高方式で算出した点数の5.5%増となり、平成14年度と比較した病院全体の収入も約1.29%の増収となりました。このDPC導入を受けて、検査部の検査実績(検査件数ベースの収入)の増減を調べたところ、導入前(平成14年6月〜平成15年3月)では11.51億円であったのが、導入後(平成15年6月〜平成16年3月)では11.45億円とわずか0.5%の減少にとどまり、検査件数自体には大きな変動はみられませんでした。
以上より、DPC導入初年度においては、病院収支や検査部運営には大きな影響はなかったと言えます。しかし、厚労省は、DPC導入初年度は各医療機関に混乱がないように医療機関別係数を高く設定したとの情報もあり、この係数は年々引き下げられることが予想され、検査部としても対抗策を考えておかなければなりません。その大きな柱として、(1)在院日数短縮への貢献、(2)保健診療外検査による増収を考えています。
医療機関別係数は、在院日数が短くなるほど高くなる仕組みなので、検査部としては、「1日の検査結果報告の遅れが、2〜3日の診断確定や治療効果判定の遅れにつながること」を意識して、検査結果を少しでも迅速に臨床側に返すことに努めたいと考えています。そのためには、緊急検査や診療前検査の充実をはかり、POCT(ベッドサイド検査)へ対応し、クリニカルパスへ参画することも求められます。中央臨床検査部では、現在生化学および免疫血清検査の分析機器の更新時期にあり、この点を十分考慮したシステム造りを検討しています。一方、在院日数を伸ばさない方策として、術後患者などの回復状況を鋭敏に察知し、余分な合併症を引き起こさない努力が必要です。このためには、栄養サポートチーム(NST)や院内感染対策チーム(ICT)へ積極的に参画し、検査部でなければできない有用な検査情報の提供を行いたいと考えています。
包括医療下では、今後診療に必要な検査以外はその需要が伸びることはあまり期待できません。さいわい岩手医大では、人間ドックを行っており、保険外の検査収入が期待できる状況にあります。しかし、ドック受診者の中には「要経過観察」とされながら、次に採血を行う機会が1年先までないという問題点がありました。これに対し、いつでも予約なしに採血検査が受けられる「ミニドック」の立ち上げを検討しています。このシステムがうまく稼働すれば、院内の外来患者や入院付き添い者、ひいては一般住民を対象として検診検査を拡大し、矢巾移転を見据えた病院収益の向上に貢献したいと考えています。
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