岩手医科大学臨床検査医学講座

第6号 〜



新しい検査システムの導入
〜 検査結果報告のスピードアップと診療前検査への対応 〜

中央臨床検査部 諏訪部 章

 平成16年11月より免疫検査分析器としてモジュラー・アナリティクス(ロシュ)が導入され、平成17年2月より生化学自動分析器としてバイオマジェスティー2250(BM2250、日本電子社)が新しい検体搬送システム・検査システム(A&T)と共に導入されました(写真1,2)。今回は、これらの導入に伴う新しい臨床サービスの展開、検査室の統合・再編について紹介したいと思います。
 これまで免疫検査室では、約10種類の分析器で、感染症、ホルモン、腫瘍マーカー検査を行っておりました。岩手医大の構造上、これほどたくさんの分析器を機能的に配置することは困難で、おのずと検査技師の作業導線が複雑になり、検体の分注作業も繁雑でした。その結果、免疫検査は午前10時と午後1時の2回しか測定ができず、それ以後の検体は至急でなければ翌日回しという状態でした。これでは、例えば甲状腺疾患で検査結果をみて薬剤投与量を決めることなどは不可能で、3ヶ月に1度しか受診しない患者さまには3ヶ月前の検査結果にもとづいて投薬が行われるという実に不合理な体制でした。そこで、モジュラーシステムを中心に免疫検査項目を大きく3機種に集約化し、検体分注装置も強化させました。その結果、免疫検査室に検体が到着し、遠心分離が終われば連続的に分析ができるようになり、早い項目では15分程度で結果が出せるようになりました。診察室でのオーダー発生からでも1時間以内での結果報告が可能です。ぜひ診療前検査を取り入れて患者サービスの向上を展開して頂ければ幸いです。
 肝機能や脂質検査などの生化学自動分析装置も、BM2250を3台連結し、オープンLA21という検体搬送システムに繋ぎました。この分析器は、分析速度の迅速性もさることながら、試薬量も従来の半分以下と低コストで行えることがメリットです。これまでは試験管が5本セットまたは10本セットで搬送ベルトをゆっくり動いていましたが、この装置では検体が1本1本独立で分析器まで運ばれることからこの点でもスピードアップが期待できます。さらにこのシステムの最大の利点は省スペースです。これまでは80FRNEO (東芝)という分析器を4台連ねてギュウギュウ詰め状態でしたが、BM2250は3台に減ったためスペースの有効活用ができるようになりました。そこに、血沈1時間値が5分で測定できる自動測定機器、血糖値とヘモグロビンA1c測定装置を連結したミニ搬送システム、数分で結果が出る蛋白分画分析装置を導入予定です。さらにはより迅速に大量処理できる凝固検査システムも導入予定です。特に、血沈測定は病棟や外来の看護師の業務として大きな負担でしたので、その軽減効果は計り知れないものがあると確信します。
 新しい検査システム・分析装置の導入は単に検査結果の迅速報告を可能にしたばかりではなく、検体検査部門を統合し、臨床側から要望の高い生理機能検査の充実へと配置転換をすることが可能になるでしょう。昨年11月からNSTも立ち上がりました。検査部も新しい患者サービスに積極的に取り組んでゆきたいと考えています。
 
   写真1 モジュラー・アナリティクス(免疫化学検査室)       写真2 バイオマジェスティー2250(自動分析室)


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