岩手医科大学臨床検査医学講座

第6号 〜



臨床検査の過去・現在・未来 ◇

中央臨床検査部・下平 一憲

 

 来し方を振返り「臨床検査」について私見を述べさせていただきます。
昭和40年代の臨床検査は草創期の模索時代を過ぎ「躍進」の途につき始めた頃で、私は昭和44年に医大に就職させていただきました。大量採用の1年目であり、10名が採用されました。その後も10年程多くの技師が採用され、人的にはこの頃に現在の陣容が整いました。昭和40年代は全てが手作業であり、分析はまず試薬作りからはじまり、ガラスのピペット等もガスバーナーを使用し、手作りで行ないました。反応触媒として酵素を使用する技術が一般的でなかったため強アルカリや強酸が多く使用され、分析員の白衣は穴だらけのぼろぼろになり、それが仕事の勲章でもありました。検査の保険点数は今では想像できない程高額であり、前述のような理由により消耗品は安く、1日働けば1ヶ月の給料分は稼げる臨床検査にとっては黄金時代であり、病院収入に対する貢献度も高かった。しかし、正確度や緊急対応には大いに問題がありました。
 昭和50年代に入り自動分析装置が広く使用されるようになりました。自動分析装置の登場により検査精度の向上と測定時間の短縮が計られ、至急対応としての「臨床検査」の適応がやっと可能となりました。昭和55年には救命救急センター発足があり、検査の24時間体制もスタートし現在に至っています。
 現在は日本の経済的な国力の低下に加え少子高齢化の進行が急激に進む事により、国家のあらゆる面で「改革」が叫ばれる時代になり、医療、特に臨床検査は、保険点数改定の度に大幅な引下げを受けています。また、医療費の包括化により検査室の経済的存続基盤が危うくなって来ています。これらは検査室陣営の拙さから起こっている事でなく医療行政を司る人達の作為に拠るものであり、自助努力のみでは避け切る事は困難な事態であります。
 今後、国が率先して予防医学を重点的に充実させる事が決っています。臨床検査は予防医学には欠かせない手段であり今後の検査室の展開法として重要です。検査室は新技術の早期導入により努め、臨床に役立つ検査室を目指す事が肝要で、院内検査と外部委託のすみわけ区分を整理し、大学病院検査室の役割を再確認すると共に効率化と経費削減に努めなければなりません。患者様中心の医療推進のため検査室員も全ての医療関係者と科学的・技術的および社会的な友好関係を作り、確固たる立場を構築する必要があります。



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